AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と大規模レイド直後 その06
人間びっくり箱というか、まあとにかく驚かされた後……『万蝕』は当然『還魂』に詰め寄り何度も問答を繰り返す。
彼らは同じ『超越種』ではあるが、直接の結びつきがあるわけでない。
だが、永い時の中で知り合う仲でもあるので……まあ、気になるのだろう。
ちなみに古来より試練は何度か行われてきたらしいが、真の達成者はごく僅か。
さらに言うと、アイの試練だけに限れば誰も達成したことが無かったようで。
……そりゃあ、死なないと最後にクリアできないのに挑みたくは無いだろう。
得られるモノは、『超越譚』と挑んだ相手からの好感度だけ──俺はそれが一番だが。
『話はよく分かった。つまり、貴様は使命を全うしたのだな?』
「はい、そうですね。人々の魂を掬い、救う使命だけではありません。生者にとっての幸せとは、死者にとっての幸せとはを知りました……もう迷うことはありません」
『そうか……ならばもう知らん。貴様の好きなように生きるが良い』
「そうさせてもらいますね。それを教えてくれた人と共に」
なんだか満足そうな表情を浮かべるアイにほっこりしていると、器用に俺だけへ殺気のようなものを放つ『万蝕』。
『……くれぐれも、こいつを不幸にするようなことをするなよ。さもなくば──』
「さ、さもなくば?」
『人ならざる者と判断し、私直々に制裁を加えてやろう。生まれてきたことを後悔させ、こいつの担当する輪廻に送ることなく永劫の終わりを味わわせてやる』
「……分かりました」
俺としても、アイに辛い思いなんて経験してほしくない。
どれだけ【傲慢】でも【強欲】でも、そうあろうと決めている。
それが俺の……眷属を欲した者としての最大限の行いだろう。
『決して、他の女にうつつを抜かすなよ』
「……あははは」
『なんだ、その乾いた笑いは。おい、顔を合わせろ』
「ふふっ、それはもう無理な話ですよ。だってメルス君は──」
この後、アイが俺の周りに関する話をした結果──長いお説教が始まるのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
なんというか、アイもそうだが『万蝕』もまた人間味に溢れている。
俺が知っているもう一柱の『超越種』──『宙艦』はそうでもなかったのだがな。
姿が動物なんだから、ライオン的なハーレムも認めてくれると思ったら……まさかの一夫一妻制を主張してきた。
とはいえ、ゴリゴリに押してくるのではなくアイのというか同種である『超越種』の幸せを単に願っているぽかったので、なんとも言いづらい罪悪感が湧いてきたものだ。
幸い、そこはアイ自身の主張もあって最終的には折れた。
……なお、その際のアイの惚気暴露のせいもあって、現在俺は地に伏しています。
「──決して悪い方では無いのですよ?」
『それは理解している。おそらく、天秤もそう指し示すだろう』
「私もメルス君と共に過ごし、改めて思いました。とっても可愛いんですよ」
『……それは、どうだろうか』
うん、容姿的にも性格的にも可愛い部分などまったく無いと思うんだが。
しかし、この主張はアイのもの、俺が手を出していい領分ではない。
なので聞き役に徹する……というか、触れたくないので口出しはしないでおく。
まあ、彼女にとっての俺がどんなものなのか、知りたいと思ったのは同じなのだ。
だがここで、アイは俺の方をチラリと見た後、結界を張ってしまった。
さすがは『超越種』の張った代物、あらゆる感覚がその内部を認識できずにいる。
「えー、ここでお預けー……まあいいか」
非常に気になることではあるが、本当に俺が知りたいと言えば教えてくれるだろう。
恥ずかしいので尋ねることは無いだろうけども、この予想はおそらく外れない。
「とりあえず、戦闘中に集めた情報の整理でもしておこうか。みんな、頼む」
戦闘終了後、眷属たちは一時解散したものの監視体制はそのままだった。
なので念話で連絡せずとも、こちらの状態は把握しているだろう。
俺は『万智の魔本』を取りだすと、解析された『万蝕』の情報を調べていく。
あくまで身体スペックや可能なことなど、戦闘に関わる要素のみを抽出してある。
それによると、どうやらあの大型の獣の姿もまた、本体とは異なるらしい。
そして、いくつか予測される本体の情報も載っていたりと、スラスラ読める内容だ。
「俺用に読みやすくしてくれてあるみたいだな……いつもすまないな」
そう言いながらも読み進めていく。
俺が飽きないように、分かりやすく気になりそうなワードを入れてあるんだよな。
そのためサクサク読んでしまい、気づけば集まっている情報は全部読み終えてしまう。 他に何かすることは無いかと考え……何も浮かばず、適当にやり始める。
「にしてもアイ、長いな…………そうだな、アレでもやりますか」
そうして取りだすのはいくつかの素材。
今の俺は縛りを解除しているので、そちらの方面でも優れた成果を出せる。
せっかくだし、ノリのままにアイテムを製作してみようではないか。
特に意味なんてない、ただなんとなくその方がいいと思ったからだ!
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