AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と大規模レイド中篇 その14
スキルを得たことで、余計に被害が悪化した気がした。
人族殺しは全人族への威力が向上するし、辻斬はすれ違いざまの攻撃の威力が上がる。
後者は斬撃限定のはずだが、鎌鼬になるレベルで風を生み出してしまっているからか、スキル獲得後も効果は発動していた。
「仕方ない、ディー! 上に行って!」
『ピー♪』
僅かながらに存在する、上空を舞うキメラ種を攻撃対象と認定。
祈念者たちを巻き込んでいた移動で、一気にダメージを与えていく。
このとき、情けを掛ける必要も無いので、錬金毒をディーが散布。
身動きが取れなくなった個体から、順次地上へ落下していった。
「またレベルが上がってる……けど、そこまででもないかな? 便利なスキルを交換するなら、もう少し上げておかないと」
レベルは一気に20上がっている。
なんともゲームのインフレみたいな現象だが、上がった分だけ経験値はポイントに還元していく。
鑑定以外にも、熟練度がほんの少しだけあるが習得には至っていないスキルがある。
それらを一気に習得まで引き上げるためにも、経験値はどんどん捧げておきたい。
「おっと……そろそろレンタルした魔道具の使用期限が来ちゃうな」
『ピー?』
「さっきまでは上手く翅と仮面を使って耐えていたけど、ディーにずっと乗っていられなくなっちゃうんだ。だから一度、僕を降ろしてくれないかな?」
『ピー♪』
超光速で動くディーに乗るため、俺は騎乗と騎獣のスキルを使っていた。
体が張り付くような感覚で、乗りやすさに補正を掛けていたが……限度もある。
なので移動に耐えるべく、浮かべる表情が補正を決める仮面と空を飛べる翅を使用。
器用さに補正を加える困り顔にして、しがみついて粘っていたのだ。
だがまあ、それもレンタル期間が終わればもうできなくなる。
一度借りた物はしばらく使えないと書かれていたので、同じことはできない。
ディーに地面へ降ろしてもらった後、再び何をしようかスキル欄とシステムを確認。
武術スキルは戻ってきているが、レベルが低い状態で接近戦をするのは難しい。
というより、魔法が使えるのにわざわざ近づく必要性もな……。
魔力抵抗が高いキメラ種だが、当然物理耐性系も豊富に備わっているし。
「うーん、ここはノリだよね。武術は剣術系以外すべて、魔法は念のために無属性以外。身体系は自然回復関係以外を全部、技能系は並列行動を残して……あとは捧げようっと」
一気にスキルを封印して、それなりの量のポイントを獲得。
貸与システムなので求めるのはスキルではなく、それなりに便利な武器。
画面から得たポイントで足りる物を探し、目を付けた物を選択。
眼前の空間がポッカリと開き、そこから二振りの剣が現れる。
「『姉舞双剣』と『刺妹双剣』、二人の力を借りてみよう」
眷属関連だからか、少しだけお安めになっていた……というか、その辺りだけ前に見た時と必要なポイントが変動していた。
そういうことだろうなぁと思いながらも、直接呼ぶよりはマシと判断。
蝶の翅と蜂の針、それらを基にデザインされた夫婦刀ならぬ姉妹剣を使うことに。
「それじゃあ、行くとしますか!」
これらの剣は、とある【英雄】が持つべき格を秘めている。
無尽蔵に宙へ足場を作り、二度突き刺すだけで敵を仕留める……チートの類いだ。
本来なら性能に制限も課せられているが、二つを同時に使うときそれらは失われる。
故に姉妹双剣、二つであるからこそ効果を発揮する二人だけの武装……だった。
「僕が使っている時点で、それもなんだかおかしくなっちゃっているしね。でも、本来のルートじゃ引き継ぐ……みたいな感じで二刀流なんだし、そんな話は嫌かな」
キメラ種を翻弄し、剣を突きつけながら暇潰しのように呟く。
本来の持ち主──フーラとフーリの姉妹こそ、【英雄】の可能性を秘めた者たち。
だが、どちらかの死で進む物語を俺は否定し、その運命ごと奪い取った。
まあその結果、封印の守護者……現在のレミルと出会ったのでプラスではあるが。
そんな由来のある双剣なので、武器自体のポテンシャルが異様に高い。
二撃必殺だって、この状態ならそれぞれで一撃ずつ与えるだけで発動するからな。
武器がもたらす身体能力への補正も高く、下げたレベル分は自由に動けている。
封印したスキル以上に力をもたらしてくれるので、十二分に戦えていた。
「武技なんかを使わなくても、戦えるのは結構楽しいかも。うん、お陰で双剣術スキルも手に入ったし」
これまでは片方ずつに剣術系スキルの補正が乗っていたが、双剣術スキルの補正は二振りの剣を運用することを前提にした補正だ。
連撃を続けていると、いつの間にか習得条件を満たしていたようで……スキル欄に双剣術が登録されていた。
当然、恩恵にあやかればこれまで以上に戦いやすくなる。
宙の足場を蹴って、次々とキメラ種たちに二撃ずつ与えていく。
疲れもそれなりに出てくるが、回復系のスキルを全力で使って強引に治している。
疲れたという意識そのものは、魔術で消しているが……肉体的疲労は消せないからな。
「ふぅ……結構数が減ったよね? 防衛も飽きてきちゃったし、また別の場所に行ってみるのありかもしれないね」
移動手段にはディーを使えば問題ないし、最悪空間魔法をレンタルすれば一瞬だ。
ここでやるのはレベル上げになっているのだが、錬金毒も間もなく完成するはず。
そうなると、それなりの数の祈念者が前に出てくるだろう。
目につきたくないし、お暇した方がよさそうだな……。
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