AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と大規模レイド直前 その01



 アレから数日、神託の影響は……特に何も無かった。
 大神云々はリオンにも語ったが、やはり彼女にも真意は理解できていない。

 いちおう、アレからはしっかりと就寝しているのだが、普通に寝て起きての繰り返し。
 条件を満たしていないのか、それともただの助言だったのか……今は不明だ。


「眷属曰く、刑期って言っていた部分が気になっていたらしいな。そもそも、大神に刑を与えられるのって同格ぐらいらしいし」


 俺に{感情}を与えたことが、そもそもの原因になっているかも、とのこと。
 そう言われると、俺にも罪悪感があるからな……うん、貢物をする予定だ。


「神託云々は意味を成していないけど、代わりに祈念者がやらかしたな。神が人を超えるとか、そういう話があったな……いつだって時代を動かすのは、人だって言うやつ」


 まったく役に立っていない神託ではなく、祈念者が引き起こした大事件。
 それによって現在、祈念者たちは激動を促されていた。


「渡航イベントが終わった次は、運営非公式の大イベント。街の存亡にも関わるんだし、大半の祈念者は協力的だよな」


 何があるか、一言で纏めるのであれば──異形の魔物たちによる大侵攻。
 その規模は大陸全土に及び、間違いなくどこかの村が亡ぶんだとか。


「──ワールドクエスト『混乱の獣、荒れ狂う大牙』か。どこの誰がミスったかは知らないけど、その責任を全員で拭うってのは何ともバカバカしい話だ」


 祈念者関係の情報担当、ナックルによると切っ掛けは簡単。
 一度きりのクエストに失敗して、その結果起きたイベントなんだとか。

 それはとある術師が理論だけで生み出した化け物の、復活を阻止するというもの。
 ……なんと、個で無尽蔵に増殖する仕様らしく、倒し切れないで失敗したそうだ。


「さてさて、どうしたものやら……ちょうど眷属にも、体を動かしたいと言われてはいたから、いいタイミングと言えばいいタイミングではあるんだけどな」

《メルス様、よろしいのですか? わたしたちは、メルス様にご迷惑をお掛けしたいわけではございません》

「あー。まあ、今回は運営神も監視の目を特にいろんな場所に光らせないといけないみたいだし、代わりさえ用意しておけばどうにかなるんじゃないか?」


 運営神が『選ばれし者』を用意するのは、彼らの威光を全世界に広めるため。
 彼らを自然な形で死線へ誘うべく、今回はそちらに注力するはずだ。

 また、それをしなくても注目されるのは高い功績を出した者たちだ。
 リオン仕込みの偽装もあるので、直接視られないなら代理を立てれば大丈夫なはず。


《では、その代わり・・・はどうされるので?》

「それっぽいのが居る場所なら、任せておけばいいんだけどな……まあ、自由民でも戦えないわけじゃないんだ。これまでと違って、直接自由民も動くんだろう? なら、あちこちで同時に、かつ一気にやればいい」

《……具体的なお考えは?》

「もちろん──お前たちに任せるさ」


 俺がいろいろと頭を使うよりも、眷属が考えてくれた方がいいアイデアが浮かぶ。
 ならばそれに任せて動いた方が、俺も俺以外も楽になるはずだ。


《……分かりました。ですが、相応の対価を頂きます》

「まあ、俺に払えるものなら大抵OKだが」

《ご安心を。メルス様に支払える……いえ、むしろメルス様にしか支払うことのできないものをご所望します》

「それならいい……のか? 言っておくが、無理なものは無理って言うからな」


 チッという舌打ちに似た音を鳴らすアン。
 何も言っていなかったら、間違いなく(ある意味で)ロクでもない要望をされていたことだろう。

 まあ、アンや眷属たちをこき使おうとしているのだ、その対価ならば充分以上だ。
 これまで通り、彼女たちが望む願いを叶えていこう。


「とりあえず、祈念者が未到達の場所が無いか確認してくれ。まあ、前に聞いた話だと、だいぶ攻略が進んでいるらしいから、ほぼ無いとは思うけど……決してないわけじゃないみたいだし、探してはおいてくれ」

《そちらに眷属を派遣するということでしょうか? 分かりました、そう伝えましょう》

「準備期間はどれくらいだっけ? 関係者が居る場所には、ちゃんと言っておきたいことだしな」

《彼らは亜空間に潜んでいるため、観測はされておりません。クエストやその他の情報から推測できる開始時間は……およそ一週間でしょうか》


 アンの予測はほぼ間違いないだろうから、本当に一週間はあるのだろう。
 しかし、亜空間か……強引に潜り込んだりはできないのだろうか?


《止めた方がいいかと。亜空間には、確実に運営神の目が向いています。クエスト開始前での干渉は、リオン様の偽装があろうと暴かれる可能性が高いです》

「そっか……なら、止めておこうか。よし、そろそろ行動開始だ。アン、せっかくだから場所ごとに派遣する眷属といっしょに説明をしに行きたい。暇……というか、それぞれの場所の担当を決めておいてくれ」

《畏まりました。では、すぐに始めます》

「あっ、待機してたのね」


 言われてすぐにできるからには、そういうことなのだろう。
 毎度毎度、俺はずいぶんと待たせてしまうな……申し訳ないよ、本当に。



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