AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と霧の都市 その15
調整も兼ねて、月末の大量更新です(01/06)
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「──決めたよ。助手君、君の知識を僕に貸してもらいたい」
「……その前に、ですよ」
「う、うむ……すまないね」
「「──ごちそうさまでした」」
すでに夜は明け、朝食を食べ終えた頃。
これまで熟考し続け、無意識で起きたり食事をしていた彼女だが……ついに、その解を導き出した。
しかし、食べたからにはしっかりと言ってもらうのがジャパニーズの掟。
少々不服そうだが、手を合わせて日々の糧に感謝してもらった。
「はい、お粗末様でした。では、皿洗いをしてきますので、先生は新聞でも読んでゆっくりとしていてください」
「あ、ああ、ありがとう……ではなく。もしかして君、わざとじゃないかい?」
「えー、そんなことありませんよー。それよりも、お皿洗いをしたいので……」
「……君が初めから先生というときは、真剣な時かからかっている時だけなんだよ」
はははっ、何のことやら。
ジト目な彼女の視線を避けるように、黙々と皿洗いを行う。
ここでの生活のお陰で、家事スキルも習得できた。
他にも掃除や洗濯なども……そこまでこだわりが無い人なんだろう。
ともあれ、そんな朝の日常を終えたのち、改めて話を聞くことにした。
どうやら俺の知識を使うようだが、いったい何をするのだろうか。
「えっと、僕の知識ですよね? それをどうされるおつもりですか?」
「ボクのように属性魔法を持たない者は、この世界において不遇な扱いを受けている。だが君たちの世界では、そうではない。君の持つソレ──魔術デバイスという代物。その扱いならば、ボクたちの方が優れている」
「なるほど、魔術のことが知りたいと?」
「そうでもある。要はそれらの情報、無属性でも扱える術が欲しい。君たちの世界をより詳しく教えて欲しいんだ」
ただ力を欲しているわけではなく、その理屈を知りたいと彼女は言っている。
魔術デバイスで言えば、魔術やその仕組みについて把握したいということだな。
創作物のやられキャラで定番だが、ただアイテムを貰っただけだと確実に破滅する。
そうならないよう、それらに関する知識を身に着けておくというのも面白い。
「僕はあんまり、理論畑の住民じゃないので旨い説明ができるかは分かりません」
「大丈夫、ボクの方で理解する」
「あははっ、それなら安心ですね……分かりました、可能な限り情報をお伝えします」
きっと、彼女ならば自分のやりたいことが見つかるだろう……なんて浅はかなことを考えられたのはここまでである。
このときの俺は、まだ知らなかったのだ。
彼女の飽くなき好奇心は、凡人の持ち得る矮小な知識程度では決して満足することができないとは。
◆ □ ◆ □ ◆
それから俺は、彼女が気になったことすべてに可能な限り答えた。
途中で教育や解説、考察といったスキルを入手できたのは不幸中の幸いである。
……それが無かったら、俺は途中で根を上げていたかもしれない。
好奇心旺盛な彼女は、普段の俺なら一瞬で折れてしまいそうな質問をしてきたからだ。
それでも諦めず、スキルや魔法の力を借りてどうにか質問に答え切った。
現在は脳の疲れを取り除くため、ぐったりと寝込んでいる。
「──これが魔術、従来の理論とはまったく異なる仕組みで動いているのだな」
「…………ええ、骨子となる部分を神々ではなく機人族が構築していますので。彼らに合わせたその理論を、そのデバイスが人族でも可能な形にしてくれます」
「だが君のように、その身で魔術を編むことができる者もいると」
「…………やり方次第です。魔法のように、スキルと詠唱を組み合わせて使っている人ではほぼ不可能ですが。術式の暗記と精密な魔力操作が必要となりますから、最低限完全な無詠唱はできないと無理ですね」
倒れながらも、まだまだ熟考する彼女の問いにはしっかりと答える。
脳を叩かれるような痛みに耐えながら、質疑応答を続けていく。
なお、口調を演じる余裕などまったくないので、半ば適当になってしまっている。
すでにバレているので、彼女もさして気にせず会話を続けていた。
「──異界の武術……具体的にはどういったものが?」
「……地域ごとに差はありますけど、相手の力を利用して受け流す柔術。他には拳術だけで戦うボクシング、軍隊でも採用されているシステマなんてものがあった気がします」
「君自身はそういったものを?」
「……僕の住んでいた地域だと、柔術と剣道ですね。あっ、剣道は剣術と違って武を競うというスポーツ的な意味合いが強いですね」
少しずつではあるが、脳の疲労も癒えつつある。
急ピッチで再生やら瞑想、呼吸スキルが働いてくれているからだな。
回復魔法があれば一発だったろうが、脳細胞まで治せる魔法はあっても高位だし。
簡単なレベルの魔術では、気休め程度にしかならないのだ。
「──うん、これならいけそうだね。では、次の段階に移行しよう」
「えっと、僕は教えられませんよ?」
「なんとなくでも、理解しているだろう? 最終的にはマスターしたいが、今は体系的な部分だけで構わない。それに、なんとなくというものもバカにはできない。知っているのは君だけなんだ……お願いできないかな?」
「……うろ覚えでもよろしければ」
夜を迎える前までに、彼女はある程度定めた目標を満たしていた。
本人は首を傾げていたが……彼女もハイスペックなんだぁと思った今日この頃である。
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「──決めたよ。助手君、君の知識を僕に貸してもらいたい」
「……その前に、ですよ」
「う、うむ……すまないね」
「「──ごちそうさまでした」」
すでに夜は明け、朝食を食べ終えた頃。
これまで熟考し続け、無意識で起きたり食事をしていた彼女だが……ついに、その解を導き出した。
しかし、食べたからにはしっかりと言ってもらうのがジャパニーズの掟。
少々不服そうだが、手を合わせて日々の糧に感謝してもらった。
「はい、お粗末様でした。では、皿洗いをしてきますので、先生は新聞でも読んでゆっくりとしていてください」
「あ、ああ、ありがとう……ではなく。もしかして君、わざとじゃないかい?」
「えー、そんなことありませんよー。それよりも、お皿洗いをしたいので……」
「……君が初めから先生というときは、真剣な時かからかっている時だけなんだよ」
はははっ、何のことやら。
ジト目な彼女の視線を避けるように、黙々と皿洗いを行う。
ここでの生活のお陰で、家事スキルも習得できた。
他にも掃除や洗濯なども……そこまでこだわりが無い人なんだろう。
ともあれ、そんな朝の日常を終えたのち、改めて話を聞くことにした。
どうやら俺の知識を使うようだが、いったい何をするのだろうか。
「えっと、僕の知識ですよね? それをどうされるおつもりですか?」
「ボクのように属性魔法を持たない者は、この世界において不遇な扱いを受けている。だが君たちの世界では、そうではない。君の持つソレ──魔術デバイスという代物。その扱いならば、ボクたちの方が優れている」
「なるほど、魔術のことが知りたいと?」
「そうでもある。要はそれらの情報、無属性でも扱える術が欲しい。君たちの世界をより詳しく教えて欲しいんだ」
ただ力を欲しているわけではなく、その理屈を知りたいと彼女は言っている。
魔術デバイスで言えば、魔術やその仕組みについて把握したいということだな。
創作物のやられキャラで定番だが、ただアイテムを貰っただけだと確実に破滅する。
そうならないよう、それらに関する知識を身に着けておくというのも面白い。
「僕はあんまり、理論畑の住民じゃないので旨い説明ができるかは分かりません」
「大丈夫、ボクの方で理解する」
「あははっ、それなら安心ですね……分かりました、可能な限り情報をお伝えします」
きっと、彼女ならば自分のやりたいことが見つかるだろう……なんて浅はかなことを考えられたのはここまでである。
このときの俺は、まだ知らなかったのだ。
彼女の飽くなき好奇心は、凡人の持ち得る矮小な知識程度では決して満足することができないとは。
◆ □ ◆ □ ◆
それから俺は、彼女が気になったことすべてに可能な限り答えた。
途中で教育や解説、考察といったスキルを入手できたのは不幸中の幸いである。
……それが無かったら、俺は途中で根を上げていたかもしれない。
好奇心旺盛な彼女は、普段の俺なら一瞬で折れてしまいそうな質問をしてきたからだ。
それでも諦めず、スキルや魔法の力を借りてどうにか質問に答え切った。
現在は脳の疲れを取り除くため、ぐったりと寝込んでいる。
「──これが魔術、従来の理論とはまったく異なる仕組みで動いているのだな」
「…………ええ、骨子となる部分を神々ではなく機人族が構築していますので。彼らに合わせたその理論を、そのデバイスが人族でも可能な形にしてくれます」
「だが君のように、その身で魔術を編むことができる者もいると」
「…………やり方次第です。魔法のように、スキルと詠唱を組み合わせて使っている人ではほぼ不可能ですが。術式の暗記と精密な魔力操作が必要となりますから、最低限完全な無詠唱はできないと無理ですね」
倒れながらも、まだまだ熟考する彼女の問いにはしっかりと答える。
脳を叩かれるような痛みに耐えながら、質疑応答を続けていく。
なお、口調を演じる余裕などまったくないので、半ば適当になってしまっている。
すでにバレているので、彼女もさして気にせず会話を続けていた。
「──異界の武術……具体的にはどういったものが?」
「……地域ごとに差はありますけど、相手の力を利用して受け流す柔術。他には拳術だけで戦うボクシング、軍隊でも採用されているシステマなんてものがあった気がします」
「君自身はそういったものを?」
「……僕の住んでいた地域だと、柔術と剣道ですね。あっ、剣道は剣術と違って武を競うというスポーツ的な意味合いが強いですね」
少しずつではあるが、脳の疲労も癒えつつある。
急ピッチで再生やら瞑想、呼吸スキルが働いてくれているからだな。
回復魔法があれば一発だったろうが、脳細胞まで治せる魔法はあっても高位だし。
簡単なレベルの魔術では、気休め程度にしかならないのだ。
「──うん、これならいけそうだね。では、次の段階に移行しよう」
「えっと、僕は教えられませんよ?」
「なんとなくでも、理解しているだろう? 最終的にはマスターしたいが、今は体系的な部分だけで構わない。それに、なんとなくというものもバカにはできない。知っているのは君だけなんだ……お願いできないかな?」
「……うろ覚えでもよろしければ」
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