AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と船員集め その09
「──いっしょには参加しませんよ」
せっかくなので、いきなり本題から話してみた際の返答がこれだ。
呼びだされた最後の眷属は、俺の予想通りの解答をしてくれた。
「まあ、お前ならそう言うと思ったよクラーレ。ちなみにだが、共同ってのはどうだ?」
「お断りです。わたしたちは、わたしたちの力だけでどこまで行けるかを試します」
「……そこまでバッサリ言われると、結構心が折れるものだな。俺としては、どこかしらで妥協できると思うんだが?」
「できませんし、しません」
なんともまあ、ざっくばらんな返答を。
アルカ以上にツンが過ぎるが、それ自体は別に嫌ではない……そうした反骨精神が、また俺に必要なナニカを教えてくれそうだし。
だからアルカ、じゃあ私も無しにしようかしら、みたいな顔は止めてほしい。
お前がそういうことを考えると、本当にやりかねんから怖いんだよ。
「じゃあ、もう解散ってことで」
「まだだよ師匠! まだ師匠が口説けば、もうワンチャンあるかもしれない!」
「ワンチャンって……お前なぁ。クラーレのことをなんだと思ってるんだよ。ほれみろ、クラーレも怒って……」
「く、口説くだなんて……は、恥ずかしくないんですか! ま、まあでも、どのようなことを言うのか興味があります。さ、さあ、試しに言ってみてください!」
うーん、怒って……るのか?
まあ、ウェルカムな感じでもあるが、もしかしたらそれは、何かしらの作戦かもしれないので警戒すべきだろう。
「言わん言わん。ユウ曰く口説きだというのも、あくまで交渉の一環なわけだし。そもそもいっしょにやる気は無いって言ってるんだから、これ以上言う必要は……クラーレ、どうして目に見えて落ち込んでいるんだ?」
「いえ、何でも……ハァ」
俺が悪いみたいになっているが、元はといえば交渉を断ったのはクラーレだしな。
それ以上に交渉の余地が無いのは当然、厳しくしないといけない。
「……とはいえ、何もしなくともクラーレが眷属であることには変わりないからな。あとでノロジーとセイラにも言う予定だったが、ちょうどいいから今言うか」
「何をですか?」
「うーん、要は勝負だな。順位だったり、そこに至るまでに何をしたかとかの。で、俺から提示した条件を満たせたら、追加でご褒美とかな」
「ご褒美……具体的には?」
俺が用意するご褒美とは、主に生産して使いどころが見つからない物が多い。
基本は彼女たちとは別系統、自由民の眷属たちに渡すのだが……たまにはな。
「普通に武具として使う物、何かの補助に役立つ物、あとは食べ物……それと、前に俺がやったイベントで余った特典アイテムの獲得権なんかでいいか?」
「……いつも、常識外れですねメルスは。必死に倒さないと得られないユニーク種の特典が、本当に貰えるんですか?」
「人工のユニーク種だから、アジャストしないんだよ。まあ、そこを気にしないなら、それ以外は正規品と同じ仕様だ……まあどうせなら、ユニーク種の方を放逐した方が面白いかもしれないか」
「止めてくださいね、それ。この場に居る皆さんみたいな人たちなら大丈夫かもしれないですが、わたしたち一般のプレイヤーが耐えられません」
今のクラーレたちは充分に優れていると思うが、まだまだ過小評価なんだよな。
クラン内で固有スキルの保有者が二人いるだけでも、充分に強いのに。
「なら仕方ないか……あくまで、眷属内のプレゼントにしておくか。まあ、そこら辺はそのうち決めておく。どういうイベントか分からない以上、まだまだ考えなきゃいけないことが多いけどな」
最悪、ユニーク種で無くとも魔物を創造して放逐すればいい。
その討伐数でも競わせれば、それが立派な報酬の査定に響くだろう。
◆ □ ◆ □ ◆
カチャリと手首の辺りから音がする。
チラリとそちらを見れば、期待通り──着けていた手錠が外れていた。
「やっと解放されたわよ……ユウ、次に同じことをしたら許さないからね」
「はーい、僕も反省したよ」
「どうかしら……もしコイツに仕返しされていなかったら、そう思わなかったんじゃないの?」
「……さーて、どうかなー」
ユニーク種から得られる特典アイテムは、そのすべてがオンリーワン。
今回ユウが使ったのは、条件を満たすまでは外れることのないという手錠。
その条件──全祈念者の眷属との交渉を終えたことで、ようやく俺は解放された。
アルカと巻き添えにしたユウも同じく、手首をさすって開放感を味わっている。
「じゃあ、俺は行くところがあるから。全員解散、各自イベントに向けて何かしらの準備でもしておいてくれ……あっ、第四世界の迷宮に海があるから、そこでいろいろとやってみるといいぞ」
『はーい』
特殊な海や普通の海、まあ他にもいろいろと海関係の迷宮は存在する。
彼女たちが何をするか分からないが、何かしらの役には立つだろう。
「……さて、やるとしますか」
クラン『エニアグラム』のメンバーは彼女たちだけじゃない。
さて、アイツらとの交渉を最後にやるとしますか。
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