AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と船員集め その07
なんだか、二人ずつ呼ぶことが決まりみたいになりつつある交渉。
ユウが連絡を入れて数分、これまた二人組がやってくる。
「ご主人様、ただいま来ました!」
「……まあ、呼ばれたから来たけど。話って何なのよ?」
「シャイン、とりあえずソファに座れ。イアも、話も座ったらするから」
黒い鎧を纏うシャインと、体の所々に蒼玉の鱗が生えたイア。
彼女たち(?)をまずは席に着かせ、改めて説明を行った。
「──イベントねぇ。まあ別に、参加すること自体は構わないわよ。ただ、あんたといっしょにっていうのは……」
「おい、ご主人様のご意向に逆らうのか?」
「黙りなさい、変態。ワタシはその、ご主人様とやらと話しているの。あんたがそこにとやかく言うのは、それこそご意向に逆らうってことじゃないの?」
「くっ……!」
いやいや、論破されないでくれよ。
イアが俺を拒否しようとするのは、なんとなく分かっていた。
アルカ同様、俺への反発心が強いからだ。
出会った頃の第一印象から、彼女にはだいぶ嫌われていた気がするからな……まあ、それをどうにかするのが交渉である。
「イア、どうしたら参加してくれるんだ?」
「そうねぇ……今は特に条件を課さないわ。だから、そのうちワタシの願い事を叶えてもらえるかしら?」
「内容によるんだがな……たとえばあるアルカみたいに、死ねとかいうのはなぁ」
「それも魅力的な提案だけど、それはアルカに譲ってあるからまた別の時に。もっと他に頼みたいことができたら、その時に言うわ」
命の危機に関わらないのであれば、別に構わないというのが本音だ。
しかし、一人の願い事を叶えるとなら、他の者にも同様のことをしないといけない。
「その願いの規模が分からないから、簡単にYESとは言えないな。だからそうだな、俺からも一つ提案をしてもいいか?」
「提案?」
「単純に、貢献度だな。イベントがどういう感じでランキングとかをするか知らないが、眷属に頼んで何らかの形で判定をしてもらってみる。その順位が高い順に、規模のデカい願い事ができるって感じだ」
「……悪くないわね。最悪、些細な願いが浮かんでもそれを叶えてもらえるみたいだし」
周りを見てみるが、そこまで否定的な表情は見えない。
何やら企んでいる奴も混ざっているが……そこはまあ、そのうち対策を考えよう。
「じゃあ、参加ってことでいいか?」
「いいわよ……って、ユウはどうしたの? 急に残念そうな顔をして」
「最初は師匠がみんなを口説いていたんだけど、全然それが聞けなくなっちゃって」
「……どういう思考なのか分からないけど、少なくともワタシはごめんよ。それに、そういうのって、人に見られながら聞かされるものでもないじゃない」
少し外套に付いたフードを深く被り直し、そんなことを言うイア。
周囲はなぜかニマニマ……理由はさっぱりだが、女性同士分かることがあるのかもな。
「シャイン、分かるか?」
「さぁ、何のことでしょうか?」
「だよな……あっ、そうだ。お前は参加するのか?」
「無論! ご主人様のご命令とあらば、どのようなことでも致す所存です!」
シャインがそういうことは、予め分かっていたことなので、再度確認する。
こいつはMでTSな変態だが、それでも複数人の女性を要するクランの長だからな。
「あの子たちはどうするんだ? こういうクラン単位で参加するイベントなら、やっぱりいっしょに参加したいんじゃないか?」
「ご安心を。そう言われると思い、このような物を持っていけと」
「魔道具? ああ、メッセージ系のヤツか」
記述した内容を投影し、手紙のように使うことができるアイテム。
内容を消せば再度書けるバージョンは、貴族とかが重用しているとかしてないとか。
お高いモノだと、特定の魔力波長じゃないと開示できないが……今回の物はお安め、一回切りの平民仕様だ。
「えっと、何々……『こちらのことはお気になさらず。私たちは、シャインさんとの共同作業を見せていただければ充分です』っと。いろいろと濁しているけど、まあ向こうが問題ないって言うならそれでいいか」
悪意ではないが、言葉の裏々に何らかの企みを感じる文面だった。
彼女たちはシャインの変化を受け止めた連中だし……たぶん、そういうことかな?
まあそれも、ゲームだからという認識が強いからだろう。
仮初の出会いだからこそ、受け止められるわけで……現実だったら殺されてたな。
「実際の所、お前はどう考えているんだ? 本心を語れ」
「……好かれて、悪い気はしません。俺のダメなところを見て、それでもいっしょに冒険してくれていますから」
「まあ、クランの在り方なんて場所それぞれだしな。ここがバラバラなのと同じように、そこが拠り所な奴らもいるか。もし協働できるなら、そのときは少し手伝うとしよう」
「はっ、ありがとうございます!」
出会った当初は生意気なガキという印象しか持てなかったが、ずいぶんと変わったモノだよな……この変化は俺だけじゃない、彼女たちの影響でもあるのだろう。
そんな風に上手く纏めたかったが、結構無理があるよな。
俺とシャインで手伝いに行った暁には……間違いなく、ネタにされるに違いない。
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