AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と船員集め その02



 参加を決めた渡航イベント。
 前回の攻城戦同様、いろいろとやってみるのがいいだろう。


「というわけで──よっこらしょ」

「あっ、ちょっと……!」

「もういいだろう。それよりアルカ、ユウ、今回は俺といっしょに遊ばないか?」

「「……っ!?」」


 そこまで驚かれるようなことでもないだろうに……アルカが魔法の制御をミスって狂いだしたので、干渉して自然消滅させる。

 ユウの能力も解除して、手首をさすって自由を味わいながら……何やら呆然としている二人と交渉を行う。


「前回は結局敵対していたし、ちょっと前のアレもそうだった。けどたまには、お前たちと同じ物を見てみるのもいいかなって」

「……ふ、ふん、何よいきなり。それに、恥ずかしくないの、そんな言い方して?」

「まあ、そういう気がしないでもないけど。ユウもアルカも、俺の本音が聞きたいって感じだったしな。さっきまで言わなかった分、今ここで言っておくだけだよ。俺は、このイベントに二人と参加したい」

「どうしよう、師匠が壊れちゃった……」


 これまた失礼なことを言われているが、俺は別に壊れてなんかいない。
 時折眷属にも言われている通り、ある程度素直になっているだけだ。

 ……まあ、恥ずかしくて多少{感情}が内包するスキルの力は借りているけど。
 意図して【怠惰】で一部の発露を抑え、ありのままを語れるようにしている。


「ナックル、それにアヤメさん……少しだけここを貸してもらっていいか?」

「どうしよう、マジで面白そうなんだが……ここに居たらダメかな?」

「私個人としては、納得したいですが……見ての通り、無理そうですね」

「ははっ、そりゃあそうか。それじゃあお三方、ごゆっくりどうぞ」


 俺の見えないところで、アルカとユウが二人に威圧でも掛けていたのだろう。
 俺たちだけを残して、二人はいなくなった結果……静寂が生まれる。


「そうだな……まず、ユウ」

「な、なに?」

「いつもアルカを支えて、俺との仲介役をしてくれているな。そういう小さな気遣い、あとはさっきみたいにそれでもやってくる小さな悪戯。とっても可愛いな」

「え、えっとぉ……褒めてくれているのかもしれないけど、正直反応に困るよ」


 そう言われて当然だな。
 残念ながら、俺は美辞麗句が上手くないのは眷属公認で修業中の身。

 いずれやろうとは思うが、今は今できることだけで話してみる。
 ユウに対する感情、まあ感謝やらいろいろと伝えていこう。


「最初はあんな感じだったし、【傲慢】を満たせる器ではあるが、俺の弟子ってことに今はなっているよな。拒んでも来るし、隠していたのにいろいろと暴いてきて……まあ、最初はあんまり好印象じゃなかった」

「うん、それはなんとなく……」

「でも、今は違う。師匠って言ってくれることに嬉しさも感じている。まあ、師匠らしいことなんて、全然できていないけどな」

「ううん、師匠は師匠だよ。僕が【断罪者】であることに固執していた時、それを打ち砕いてくれた。それからも、いろんなことを教えてくれた……間違いなく、師匠なんだよ」


 改めて聞くが、罪悪感しか湧かないな。
 俺は『模倣者』足り得る存在として、彼女の力を模倣していただけだしな……うん、もう過ぎた話として流してもらっているが。


「なんか話がだいぶ逸れてきたな。まあ、要するにだ。ユウ、正直もう弟子とか皆伝だと思うぞ。だから最終試練とでも思って、いっしょにイベントに出てくれ」

「参加する気だったんだけど」

「……だけど?」

「そういう話なら、やっぱり無しかな?」


 えっ、と思うが……免許皆伝で無事に弟子卒業って嬉しくないのか?
 アルカの方に助けを求めようと視線を向けるが、彼女はそっぽを向いている。


「僕、師匠の弟子を辞めたいって……そんなこと言ったかな?」

「普通、弟子はいずれ師匠を超えるものだと思うけど。ほら、アルカも俺を殺すっていつも言ってるだろ」

「アルカは弟子じゃないし、そもそも師匠を殺す気なんてまったくないでしょ。あれって結局、師匠の気を引きたいから言っていることだからね」

「──ちょっと、ユウ。いくらアンタでも、あることないこと言いふらかすなら容赦しないわよ」


 冷酷な声で、アルカがこちらに告げ……ているつもりなんだろうが、その顔が【憤怒】と同じくらい赤くなっているので、その冷酷さは本心じゃないのだろう。

 そんなアルカの反応で、少しだけ意識をリセットできた。
 ユウが求めているものを完全に理解できていない以上、この話は止めた方がいい。


「なら、さっきのは無しで普通に参加してくれ。せっかくだし、弟子の成長ってヤツをたまには見てみたい」

「最初からそう言えばよかったんだよ。いつもアルカばっかり見ているんだから、今回はしっかりと弟子である僕を見てね」

「! お、おう……」


 あんまり上手い返しができていないのは、アルカの嘆息とユウのニマニマとした笑みが証明してくれている。

 まあ、それだけの破壊力があったんだ、それも仕方ないということにしますか。



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