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山田 武

偽善者とスキル昇華説 後篇



 お次に訪れたのは、第一世界の中でも多くの人が足を運ぶ施設。
 誰もが祈りを捧げ、俺がそれに怯える……神殿内部の最奥。


「──なるほど、事情は分かりました」

「というわけで、何か分からないか?」


 今日も今日とて神々への祈りを捧げている彼女、アイにもスキルのことを訊くことに。
 なんといっても『超越種』、少なくとも祈念者よりも多くの知識を有している。


「……申し訳ありません。そういった知識は与えられてはいませんね」

「ダメだったか?」

「私としては、メルス君のお手伝いをしたいのですが……もともと私たち『超越種スペリオルシリーズ』は個有スキルとは、無縁の存在ですので」

「いやまあ、たしかにそうだけどな」


 スキルの階級はいくつかあるが、最上位は二つあって──個有と超越だ。
 今回の話に関わっている個有と違い、超越は正当な進化といった感じである。

 彼女たち『超越種』が、別にその階級のスキルを持っているわけではない。
 存在自体がそのスキル以上の価値を持っているので、持つ必要が無いとも言える。


「ですが、メルス君の言うような強力なスキルに心当たりが無いわけでもありません。もともとあの地を訪れているのは、それこそ英霊となるほど優れた人々ばかりですので」

「あー、考えには入れていたんだが、死者の冒涜云々とかは大丈夫か? 今回の目的はあくまで性能強化が主だから、偉人の方々のあれやこれを明らかにするのは違うと思う」

「ふふっ、皆さん協力してくれますよ。なので安心して、お話を聞いてください」

「分かったよ……アイには敵わないな」


 彼女がもともと拠点にしていた場所──死者の都には、かつての強者たちが大量に眠っている。

 強者、つまり貴重な職業やスキルを手に入れていた者たちと言うわけで……何かしらの情報を持っているの可能性が高い。

 アイに掛かれば、個有スキルを持っているかどうかなどすぐに分かる。
 いろいろと分からないことだらけなので、ぜひとも教えてもらいたいところだ。


「俺としては、どんなスキルであれ持っていないなら情報が欲しいけどな。模倣するための条件を満たしておけば、自ずと習得できるようになるし」

「一度、あちらに戻りましょう。メルス君が望んだ情報もあるかもしれません」

「了解、俺が転移で運ぶよ」


 アイをエスコートするように手を差し出して、握られた手を介して共に転移。
 死者の都にて、アンデッドたちから情報を聞き出すことになった。


  ◆   □   ◆   □   ◆

 死者の都 礼拝堂


 俺とアイは二手に分かれて、スキルに関するいろんな情報を集める。
 だいぶ前に職業に関する話を聞いていたので、それと同じかと答えてくれた。


「……スキルに関する情報はあったが、やはり個有スキルを持っていた奴は居なかったみたいだ。アイの方はどうだ?」

「こちらもです……申し訳ございません」

「いやいや、それ自体の情報は無かったけどスキルの昇華……階級の向上に関する情報は手に入った。サンプルが少なかったから、少しばかり考える必要はあるけど、それでも情報が得たこと自体が嬉しいことだ」

「メルス君のお役に立てて何よりです」


 アイの持ってきてくれた情報を訊き、俺の方で集めた情報と照らし合わせる。
 情報の精査はあとで解析班がやってくれるだろうし、今は覚えるだけ覚えていく。

 得た情報の大半は便利なスキルや固有スキルの名称や内容だが、一部のアンデッドたちの中に、階級の向上を確認した個体が居てそのことを教えてくれた。


「ただ、問題はそれが死後の場合が多いことなんだよな……さすがに時間が解決してくれるって方法に任せていると、俺の場合どれだけ待つのか分からない」

「死がその者の軌跡を昇華する。そして、その証たるスキルをより優れたモノとして世界に刻むのですね」

「そうなるんじゃないか? 要はあれだ、この方法は他が認めないと意味がない。つまり俺にはできないことってわけだ……さて、どうしたものやら」


 本当に一人か二人、生きている間にスキルの昇華が行われた者もいるようだが、結局より意味のある能力追加などが行われたのは死後だったらしい。

 おそらくだが、これもまた大衆の集団意識などが関わっているのだろう。
 どういった功績があったのか、それが少々歪曲して伝わるからこそ意味がある。


「あー、俺の世界の吸血鬼の伝承って、昔よりも今の方が弱点や能力が多めなんだ。今は祈念者としてこっちに来て、それを広めているだろうし……僅かながらに、影響を及ぼしているかもしれないな」

「無いとは言い切れませんね。それが理に適うものであれば、ほぼ間違いなく反映されるかと。英霊たちの場合、実際にそれを成し遂げてきたからこそ、スキルが昇華された……ということなのでしょうか?」

「たぶんな。シュリュがちょうど、それに該当するんだろう。武で覇を成した劉帝、その認識だからこそ戦闘に関する補正が絶大なスキルがパワーアップしたと」


 だからこその伝説級。
 まあ、竜族がもともと力を尊ぶ種族だったのもそうだし、シュリュが導士だったこともそれに影響しているとは思うがな。

 まあおそらく、[眷軍強化]も{感情}もこの方法は使えない……せめて表で見せ放題なスキルでもないと、できないと分かりました。



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