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山田 武

偽善者と橙色の調査 その02



「見えたか……アレが『サフランワー』」

「なるほど、とても明るい色だな」

「まんまヒマワリだしな……種が大量にありそうだ」


 空に咲く黄色の花。
 巨大なソレは空を飛び、ふわふわと漂う。
 これまでも二つ見てきた華都──ここには獣人族たちが住んでいるらしい。


「まずは同化だな──“因子注入・獣人”」

「メルス……それは、種類としてはどの獣人なのだ?」

「さあ? ランダムなのか統合なのかは分からないけど、とりあえず獣人だろう?」


 俺は無数の存在から因子を抽出し、それらから能力や種族特徴を引き出せる。
 今回は獣人族たちの華都に行くので、因子の注入を行ったが……まあ、疑問がな。

 特別な因子は個人の者を使用しているが、基本的には多数の人々から抽出した物を利用していた……まあ、要するに種族ゲノムみたいなものを使っている。

 だから獣人族の因子を使えば、ケモミミや尻尾はちゃんと出せるようになるのだが……具体的にどの種族なのかが不明なのだ。


「狐耳とか犬耳とか、普通は特徴で分かるはずなんだがな。何だろう……こう、全部の獣人族の因子をごっちゃ混ぜにして、平均値を割り出したみたいな感じ」

「傍から見て獣人族であることは分かるが、じっくり見ると詳細が分からなくなるな。あまり注視させない方が良いだろうか?」

「まあ、そもそも空を飛んでいる時点で普通の獣人じゃない。クエラムもそろそろこれの準備をしてくれ」

「ああ、『装華』だな。ふむ……さっそく使おうではないか──『開花』」


 眷属全員が使える装華。
 クエラムは自分用の装華を起動させると、その身に武装を纏う。

 特別な花の形は存在せず、花弁が一枚一枚バラバラに重なって鎧となっている。
 色は主に白色を基礎に、薄い虹色が出来上がっていた。


「変色──『空』」


 白色が鮮やかな空青色スカイブルーに染まる。
 色ごとに能力が決まるという、クエラムの多様性を示す『装華』だった。

 今回の『空』の場合、翼が無くとも魔力を籠めることで、空を飛ぶことができる。
 ……このままだと、クエラムが他の種族か魔花だと怪しまれるからな。


「己はメルスを運んでいけばよいのだな?」

「俺は[守式]を使うから、そうなるな。あれは基礎機能しか搭載してないし」


 人工装華である[守式]は、魔術を使う機能と防御性能ぐらいしか搭載されていない。
 あくまで偽装するための物だし、実際に使うにしても学校とかでの統一のためだな。


「『開花』っと……それじゃあ、任せた」

「メルス、落ちているぞ!?」

「早く受け止めてくれよ~」


 使っていた飛行能力が解除されたので、俺は物理法則に従って下に墜ちる。
 まあ、魔術を使えば空は飛べるが……縛り的に、それは無理だからな。


「すぐに行くぞ、メルス!」

……よろしくな~」


 だいぶ遠くなったが、ちゃんと伝わっただろうか?
 物凄い勢いでクエラムが来てくれているので……まあ、大丈夫だろうな。


  ◆   □   ◆   □   ◆

 華都 サフランワー


 多少疲労感を作ったからか、俺たちは難民として中に入れてもらえた。
 能力値に縛りが設けられているため、クエラムも小休憩が必要になる程度には疲れる。

 回復を待って事情を聴取され、それから都の中へ。
 舌状花の部分が魔花に備える防衛基地、筒状花の部分が獣人族たちが住む都区画。

 下を向いた円錐、といった感じだろう。
 雄しべと雌しべで上手く区画分けされたその都を、俺とクエラムは歩いていく。


「とりあえず、『守護者』の存在について調査をしないとな。クエラム、よろしくお願いできるか?」

「うむ、ギルドもあるのだ。そこに行って聞いてみることにしよう」

「……他の都にもあったけど、それもかなりおかしいよな」


 世界が違うというのに、まったく同じ在り方でギルドが存在している。
 違いは魔物か魔花かという点だけ、あとは制度から何までほとんどいっしょ。

 昔、華都になる前から制度があって、魔花の影響で少し変わったとのこと。
 森人の図書館で読んだ情報から、そういったことが分かった。


「まあ、神様云々がいろいろとやっているのかもな。そもそもこの世界はAFO世界と半ば接続しているし、おかしくはないけど……ここは研究班に任せるか」

「うむ、頼られることはとても好ましい。メルスがそうするのであれば、きっと喜んでくれるはずだぞ」

「じゃあギルドに行こうか。クエラム、俺の護衛は任せたぞ」

「委細、承知した!」


 橙色の世界だと、俺は基本的に眷属任せでやっている。
 ……変えようとも思ったが、なぜか高評価なのでそんなヒモ状態を維持していた。

 ギルドの前に辿り着き、看板を見る。
 この世界の文字で『ギルド』とのみ書かれたその施設は、辺りの二階建て住居を上回る四階建てで築かれていた。


「冒険者だけでなく、商人や生産職の恰好をした者もいるな……」

「統合ギルドらしい。これまでの二つの街だと行ってなかったからな……今度、あっちの方にも行ってみようかな? ああ、登録用の受付があるらしい」

「なるほど、ではそちらに向かおう」


 ギルドの扉を開き、俺たちは内部へ入る。
 さっそく登録だが……テンプレイベントは起きるのだろうか?



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