AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と夢現祭り三日目 その09
連続更新です(09/12)
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祈念者の中にも、優れた者が居る。
俺の知っている人物として、該当するのはアルカと【暗殺王】であるチズだ。
魔法の高みへと近づきつつある前者と、暗殺の技術を神の領域まで高めようとする後者だが……共通点はそれらを、己の才覚を以って成している点である。
自由民と違ってスキル枠に制限がある祈念者は、決められたスキルの中で求められる行動をしなければならない。
統合したスキルでそれを行う者が多い中、才ある者たちはスキルではなく自身の技術でその分を補っている。
「祈念者で有名な怪盗……連絡をしている間に、どうやら逃げられたようだな」
「す、すまねぇ。だが、お前だってあの手際の良さを見ていれば、仕方が無いって言うに決まってる!」
「ふむ、今はそれでいいとしよう。それよりも、警備の方は外部よりも内部の方を警戒することにしろ。ヤツ以上に警戒する者は、そう多くはない。どうせ脱出するのだ、他の者もついでに捕縛しておけ」
「金は入るんだ、任せておけ!」
怪盗や泥棒などを捕まえた者には、相応の額を用意しておいた。
今回、アンが連絡を受けた怪盗には最高額である10億Yが懸けられている。
忘れている者が多いと思うが、この世界の通貨の単位Yはほぼ円と同じ価値だ。
なので10億円も貰えるということで、祈念者も自由民も張り切っていた。
ちなみに、数百万ほどの懸賞金が懸けられていた怪盗がすでに捕まっている。
捕らえて何をするかというと……うん、いろいろな実験に協力してもらっているぞ。
「コロシアムの中は転移系の脱出手段がすべて禁止だし、あとでオークションが始まれば全部俺が封じる。どんな奴が相手でも、正式にイベントが終わるまでは脱出不可能なわけだ。ふっふっふ、年貢の治め時だな」
《いかにも追いかけていた泥棒に伝えそうな発言ですね。メルス様、わたしの記憶がたしかであれば初対面……いえ、まだ会ってもいませんよね?》
「けど、気になるだろう? 祈念者の身でありながら、すでに【梁上君子】なんて立派な極級職に就いているんだ。俺も見習いたくなるよまったく」
俺は固有の超級職にはだいぶ就いていたのだが、結局極級職には就けなかった。
いろんな職業の条件を無視できる【怠惰】の“虹色夢職”も、超級以上には就けない。
そして何より、通常の職業から進化した超級と極級には就く際に更なる条件がある。
それを達成しなければ、就くことができないため……過去にも就けなかったのだ。
「【梁上君子】、要は高貴さもある立派な泥棒とか怪盗ってことだよな。王とかが付く超級よりも、レアそうな名前だ」
《侵入から解析を行っておりますが、やはり高度な偽装能力を有しているようです。それらを強化する特典も確認されており……直接メルス様に視てもらうのが、もっとも解析の成功を上げられるでしょう》
「となると、すでに潜んでいる怪盗を相手に知恵勝負をしなきゃいけないわけだ。俺が自由民だったならともかく、祈念者扱いされているから盗む気満々だな」
君子という気品のある言葉があるものの、職業名は鼠の別称とされている。
まだ推測ではあるが、義賊とはまた意味合いが違うのだろう。
つまり清濁呑み合わせた、そんな職業なのが【梁上君子】である。
祈念者からは容赦なく、自由民からは義の心を以って盗みを行っているのだ。
勝負はオークションが終わりかけた瞬間、決して解除できない次元の壁が解かれた一度きりのチャンス……それまでは、監視網を観ているだけでいいな。
◆ □ ◆ □ ◆
そして夕方、始まったオークション。
武闘派ばかりが集ったバトルロイヤルとは打って変わって、この時間帯に集まるのはそれ以外にも商人などの非戦闘職などもいる。
≪ただいまより、オークションを開催いたします。バトルロイヤルに引き続き、司会はわたしアンが行わせていただきます≫
実際にその姿は見せず、機人族としての能力で外部のスピーカーから発声している。
ちなみに成り代わりなども定番だから、その対策としてやっているだけだな。
アンは俺が決めていたルールや入札の仕方などを、観客たちに説明していく。
基本的なやり方は帝国で実施されている、オークションのやり方をそのままパクった。
そうして説明を終えると、さっそく始まるオークション。
だが、これは俺が決めたイベント……少しばかり、ユーモアを混ざてある。
≪本来、目玉商品は最後と言うのが定説なのでしょうが……さっそく、一つ目玉商品をご紹介いたしましょう≫
アンが機械を操作して、床から迫り上げさせるのは“次元固定”で封じられた箱。
それを視認した俺が、部分的に魔法を解除することで──中身が明らかとなる。
≪さぁ、現れますは小さな袋。しかし、ただの袋と思うことなかれ。契約すれば、ありとあらゆる物を仕舞える世界を生みだす袋なのです。アイテムならばどんな物でも収納できる。神器の名は──『強欲王の零次元袋』≫
淡々と、いつもの棒読みで告げられた袋の形をしたその神器。
祈念者の反応は……微妙だが、自由民たちは盛り上がっている。
まあ、[アイテムボックス]があれば時間も止まっているからな。
対する自由民であれば、時間は止まっていなくても大量保存できるだけでも喜ぶ。
だがまあ、まだ待ってほしい。
まだまだ売り文句は用意してあるのだ……怪盗だってこれを欲しがるように、な。
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祈念者の中にも、優れた者が居る。
俺の知っている人物として、該当するのはアルカと【暗殺王】であるチズだ。
魔法の高みへと近づきつつある前者と、暗殺の技術を神の領域まで高めようとする後者だが……共通点はそれらを、己の才覚を以って成している点である。
自由民と違ってスキル枠に制限がある祈念者は、決められたスキルの中で求められる行動をしなければならない。
統合したスキルでそれを行う者が多い中、才ある者たちはスキルではなく自身の技術でその分を補っている。
「祈念者で有名な怪盗……連絡をしている間に、どうやら逃げられたようだな」
「す、すまねぇ。だが、お前だってあの手際の良さを見ていれば、仕方が無いって言うに決まってる!」
「ふむ、今はそれでいいとしよう。それよりも、警備の方は外部よりも内部の方を警戒することにしろ。ヤツ以上に警戒する者は、そう多くはない。どうせ脱出するのだ、他の者もついでに捕縛しておけ」
「金は入るんだ、任せておけ!」
怪盗や泥棒などを捕まえた者には、相応の額を用意しておいた。
今回、アンが連絡を受けた怪盗には最高額である10億Yが懸けられている。
忘れている者が多いと思うが、この世界の通貨の単位Yはほぼ円と同じ価値だ。
なので10億円も貰えるということで、祈念者も自由民も張り切っていた。
ちなみに、数百万ほどの懸賞金が懸けられていた怪盗がすでに捕まっている。
捕らえて何をするかというと……うん、いろいろな実験に協力してもらっているぞ。
「コロシアムの中は転移系の脱出手段がすべて禁止だし、あとでオークションが始まれば全部俺が封じる。どんな奴が相手でも、正式にイベントが終わるまでは脱出不可能なわけだ。ふっふっふ、年貢の治め時だな」
《いかにも追いかけていた泥棒に伝えそうな発言ですね。メルス様、わたしの記憶がたしかであれば初対面……いえ、まだ会ってもいませんよね?》
「けど、気になるだろう? 祈念者の身でありながら、すでに【梁上君子】なんて立派な極級職に就いているんだ。俺も見習いたくなるよまったく」
俺は固有の超級職にはだいぶ就いていたのだが、結局極級職には就けなかった。
いろんな職業の条件を無視できる【怠惰】の“虹色夢職”も、超級以上には就けない。
そして何より、通常の職業から進化した超級と極級には就く際に更なる条件がある。
それを達成しなければ、就くことができないため……過去にも就けなかったのだ。
「【梁上君子】、要は高貴さもある立派な泥棒とか怪盗ってことだよな。王とかが付く超級よりも、レアそうな名前だ」
《侵入から解析を行っておりますが、やはり高度な偽装能力を有しているようです。それらを強化する特典も確認されており……直接メルス様に視てもらうのが、もっとも解析の成功を上げられるでしょう》
「となると、すでに潜んでいる怪盗を相手に知恵勝負をしなきゃいけないわけだ。俺が自由民だったならともかく、祈念者扱いされているから盗む気満々だな」
君子という気品のある言葉があるものの、職業名は鼠の別称とされている。
まだ推測ではあるが、義賊とはまた意味合いが違うのだろう。
つまり清濁呑み合わせた、そんな職業なのが【梁上君子】である。
祈念者からは容赦なく、自由民からは義の心を以って盗みを行っているのだ。
勝負はオークションが終わりかけた瞬間、決して解除できない次元の壁が解かれた一度きりのチャンス……それまでは、監視網を観ているだけでいいな。
◆ □ ◆ □ ◆
そして夕方、始まったオークション。
武闘派ばかりが集ったバトルロイヤルとは打って変わって、この時間帯に集まるのはそれ以外にも商人などの非戦闘職などもいる。
≪ただいまより、オークションを開催いたします。バトルロイヤルに引き続き、司会はわたしアンが行わせていただきます≫
実際にその姿は見せず、機人族としての能力で外部のスピーカーから発声している。
ちなみに成り代わりなども定番だから、その対策としてやっているだけだな。
アンは俺が決めていたルールや入札の仕方などを、観客たちに説明していく。
基本的なやり方は帝国で実施されている、オークションのやり方をそのままパクった。
そうして説明を終えると、さっそく始まるオークション。
だが、これは俺が決めたイベント……少しばかり、ユーモアを混ざてある。
≪本来、目玉商品は最後と言うのが定説なのでしょうが……さっそく、一つ目玉商品をご紹介いたしましょう≫
アンが機械を操作して、床から迫り上げさせるのは“次元固定”で封じられた箱。
それを視認した俺が、部分的に魔法を解除することで──中身が明らかとなる。
≪さぁ、現れますは小さな袋。しかし、ただの袋と思うことなかれ。契約すれば、ありとあらゆる物を仕舞える世界を生みだす袋なのです。アイテムならばどんな物でも収納できる。神器の名は──『強欲王の零次元袋』≫
淡々と、いつもの棒読みで告げられた袋の形をしたその神器。
祈念者の反応は……微妙だが、自由民たちは盛り上がっている。
まあ、[アイテムボックス]があれば時間も止まっているからな。
対する自由民であれば、時間は止まっていなくても大量保存できるだけでも喜ぶ。
だがまあ、まだ待ってほしい。
まだまだ売り文句は用意してあるのだ……怪盗だってこれを欲しがるように、な。
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