AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と夢現祭り三日目 その01
月末の連続更新となります(01/12)
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イベントエリア
イベント三日目が幕を開く。
やることを夜明け前にすべて済ませ、快く始めることができる最終日──その始まりはコロシアムからである。
空では花火が打ち上がり、地上では至る所で盛り上がるイベント参加者たち。
三日目用のフィールドはすべてが繋がっているからこそ、その賑わいも繋がっていた。
迷宮がコロシアムを囲うように展開され、至る所に店が並んでいる。
また、宝は街のどこかに隠されており、これまでやっていたこともすべて行えた。
「さて、三日目も自分の体で楽しもうか。ノゾムとかメルだと、誰かしらに見つかったときが厄介だからな」
「ご安心ください。旦那様のことは、わたしがしっかりとお守りしますので!」
陽の光のように仄かに輝く薄黄色の髪。
そして、血に染まったような紅の瞳を持つ彼女──フィレルは自信ありげにそんな頼もしいことを言ってくれる。
陽光龍と先祖返りの始祖吸血鬼、その間に生まれたのが彼女だ。
その出自から封印されていた時期もあり、少々やさぐれていた頃も──
「旦那様、何か……変なことを考えてなどいませんか?」
「いや、初めて会った頃は全然態度が違ったなって改めて……うん」
「む、昔のことはお忘れください! あの頃は少し……ええ、少し荒んでいただけです。ですが、それも旦那様があの娘と会わせてくれましたので、もう大丈夫です」
「──あれ、何の話をしてるの?」
俺とフィレルの会話に入ってきたのは、背から翼が生えた少女。
ただし、天使ではない……天人族という、極めて珍しい種族だ。
アッシュブロンドの髪色をした、人形のように精巧な容姿を持つ彼女。
彼女こそが、フィレルがかつて離れ離れになってしまった……亡国のお姫様である。
「アイリス……いえ、少し昔話を」
「昔……ああ、あのヤンキー口ちょ──もがもがっ!?」
「ほ、ほらアイリス、もうなんとなく流れで分かるだろ! 見ろよあの顔……なっ?」
「も、もがもが!」
種族以上に珍しい転生者という経歴も持っているので、ヤンキーと平気で言うお姫様ではあるが……そんな彼女の口を塞ぎ、ギリギリのところで発言を阻止した。
チラリと見たフィレルの姿は、とても綺麗な笑みを浮かべていた。
ただし、まったく目が笑っていなかったので、これは正解だったと言えよう。
どうにかフィレルを誤魔化し、朝食を何か買ってきてもらうことに。
……この世界なら絶対に俺が作る方が旨いが、祭りとは出店の食品を楽しむものだ。
そうして距離を取っている間に、きちんと説教しておくことに。
さすがに今回は危なかった……もしすべて言っていたら、どうなっていたことやら。
「ぷはぁ! もうメルス、あと少しで酸欠するところだったよ! ……あっ、でももしかしてそれが狙いだった?」
「……なんでだ?」
「えー、それはもちろん、気絶したワタシの唇を狙って──人工呼吸イベント! 普通にするのも恥ずかしいからって、そんな遠回しにしなくて……いつでもウェルカムだよ」
「そんな冗談が言える元気がまだ残っているのか。さっきのアレ、初手でバットエンドに行っててもおかしくなかっただろ」
前世はJCだったとのことだが、かなりいろいろと幅広い知識を持っている。
……病院生活だったようなので、細かいことはこちらからは聞けないけどな。
「ワタシもフィレルも、メルスには好感度がカンスト済みなんだから別にいいじゃん。どうせメルスがそっちもいいとか言ったら、すぐにやってくれるんじゃない? 血を吸ったらなるんだし」
「……薄めないとやばいって、あのときに学習したからこそだよ。その状態がいつでも発動するなんて、この祭りじゃ致命的だぞ。間違いなく[ロウシャジャル]が出てくる」
「あの子? うーん、大丈夫じゃない? 内輪揉めだし、ワタシたちにいっさいの悪感情が無いんだから。フィレルもメルスに合法的に甘えられる、ワタシは二人を楽しめる……一石三鳥だよ」
「俺の分の鳥が居なかったな」
そりゃあ、フィレルが甘えて来てくれるのが鳥なんだろうとすぐ分かる。
ただあの状態だと、俺も危ないからな……うん、やっぱり控えてもらおうか。
◆ □ ◆ □ ◆
フィレルが持ってきてくれた食べ物を持参して、コロシアムの中へ。
主催者なので、当然イイ席を確保しておいてある……認識されない場所にな。
基本的には俺とアイリスが会話をし、その光景をほっこりと見るフィレルという形で時間が過ぎていく……なんだか、旦那と娘を観ている奥さんって感じがするけど。
「──そういえば、メルスは参加しなくてよかったの? 戦いたかった人とかも、結構いたんじゃないの?」
「うん? まあ、そうだな。うちの戦闘狂もそうだけど、ツンドラ娘もな……ほら、もうあそこで髪を赤くしてる」
アイリスに言われて周囲を探ってみると、ちょうど怒りを露わにする少女が一人。
まあ、俺が主催したイベントなんだから、参加すると思うよな。
「あとでぶつかった眷属に、オークションの方だって伝えてもらおうか」
「オークションかー。やっぱり……って、前にもこんな感じの話をしたっけ?」
「したな。まあでも、今回は奴隷の売買も無い極めて合法なヤツだしな。ある意味、それ以上にヤバい物は売るけど」
「ゲームソフトの元値が58億で、それをそのオークションで350億以上で売るとかそういう感じ?」
某孤島に転送させる、欲望渦巻くゲームの話を何故しているのやら。
……たしかに面白いので、ユニーク種と戦うための仕組みには組み込んだけども。
「ゲームは売らないよ。けど、そうだな……前に話してたアレ、できないか?」
「ん? いつでも準備はしているから、やろうと思えばできるけど……売るの?」
「限定的に、金持ちに売ってみよう。お小遣い稼ぎにちょうどいいんじゃないか?」
「まあ、一度試す必要もあったから、それでもいいけど……本当にいいの?」
なんて悪巧みをしている間も、フィレルはニコニコとしている。
新たにオークションに加える話をしている内に、午前中の催しが始まるのだった。
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イベントエリア
イベント三日目が幕を開く。
やることを夜明け前にすべて済ませ、快く始めることができる最終日──その始まりはコロシアムからである。
空では花火が打ち上がり、地上では至る所で盛り上がるイベント参加者たち。
三日目用のフィールドはすべてが繋がっているからこそ、その賑わいも繋がっていた。
迷宮がコロシアムを囲うように展開され、至る所に店が並んでいる。
また、宝は街のどこかに隠されており、これまでやっていたこともすべて行えた。
「さて、三日目も自分の体で楽しもうか。ノゾムとかメルだと、誰かしらに見つかったときが厄介だからな」
「ご安心ください。旦那様のことは、わたしがしっかりとお守りしますので!」
陽の光のように仄かに輝く薄黄色の髪。
そして、血に染まったような紅の瞳を持つ彼女──フィレルは自信ありげにそんな頼もしいことを言ってくれる。
陽光龍と先祖返りの始祖吸血鬼、その間に生まれたのが彼女だ。
その出自から封印されていた時期もあり、少々やさぐれていた頃も──
「旦那様、何か……変なことを考えてなどいませんか?」
「いや、初めて会った頃は全然態度が違ったなって改めて……うん」
「む、昔のことはお忘れください! あの頃は少し……ええ、少し荒んでいただけです。ですが、それも旦那様があの娘と会わせてくれましたので、もう大丈夫です」
「──あれ、何の話をしてるの?」
俺とフィレルの会話に入ってきたのは、背から翼が生えた少女。
ただし、天使ではない……天人族という、極めて珍しい種族だ。
アッシュブロンドの髪色をした、人形のように精巧な容姿を持つ彼女。
彼女こそが、フィレルがかつて離れ離れになってしまった……亡国のお姫様である。
「アイリス……いえ、少し昔話を」
「昔……ああ、あのヤンキー口ちょ──もがもがっ!?」
「ほ、ほらアイリス、もうなんとなく流れで分かるだろ! 見ろよあの顔……なっ?」
「も、もがもが!」
種族以上に珍しい転生者という経歴も持っているので、ヤンキーと平気で言うお姫様ではあるが……そんな彼女の口を塞ぎ、ギリギリのところで発言を阻止した。
チラリと見たフィレルの姿は、とても綺麗な笑みを浮かべていた。
ただし、まったく目が笑っていなかったので、これは正解だったと言えよう。
どうにかフィレルを誤魔化し、朝食を何か買ってきてもらうことに。
……この世界なら絶対に俺が作る方が旨いが、祭りとは出店の食品を楽しむものだ。
そうして距離を取っている間に、きちんと説教しておくことに。
さすがに今回は危なかった……もしすべて言っていたら、どうなっていたことやら。
「ぷはぁ! もうメルス、あと少しで酸欠するところだったよ! ……あっ、でももしかしてそれが狙いだった?」
「……なんでだ?」
「えー、それはもちろん、気絶したワタシの唇を狙って──人工呼吸イベント! 普通にするのも恥ずかしいからって、そんな遠回しにしなくて……いつでもウェルカムだよ」
「そんな冗談が言える元気がまだ残っているのか。さっきのアレ、初手でバットエンドに行っててもおかしくなかっただろ」
前世はJCだったとのことだが、かなりいろいろと幅広い知識を持っている。
……病院生活だったようなので、細かいことはこちらからは聞けないけどな。
「ワタシもフィレルも、メルスには好感度がカンスト済みなんだから別にいいじゃん。どうせメルスがそっちもいいとか言ったら、すぐにやってくれるんじゃない? 血を吸ったらなるんだし」
「……薄めないとやばいって、あのときに学習したからこそだよ。その状態がいつでも発動するなんて、この祭りじゃ致命的だぞ。間違いなく[ロウシャジャル]が出てくる」
「あの子? うーん、大丈夫じゃない? 内輪揉めだし、ワタシたちにいっさいの悪感情が無いんだから。フィレルもメルスに合法的に甘えられる、ワタシは二人を楽しめる……一石三鳥だよ」
「俺の分の鳥が居なかったな」
そりゃあ、フィレルが甘えて来てくれるのが鳥なんだろうとすぐ分かる。
ただあの状態だと、俺も危ないからな……うん、やっぱり控えてもらおうか。
◆ □ ◆ □ ◆
フィレルが持ってきてくれた食べ物を持参して、コロシアムの中へ。
主催者なので、当然イイ席を確保しておいてある……認識されない場所にな。
基本的には俺とアイリスが会話をし、その光景をほっこりと見るフィレルという形で時間が過ぎていく……なんだか、旦那と娘を観ている奥さんって感じがするけど。
「──そういえば、メルスは参加しなくてよかったの? 戦いたかった人とかも、結構いたんじゃないの?」
「うん? まあ、そうだな。うちの戦闘狂もそうだけど、ツンドラ娘もな……ほら、もうあそこで髪を赤くしてる」
アイリスに言われて周囲を探ってみると、ちょうど怒りを露わにする少女が一人。
まあ、俺が主催したイベントなんだから、参加すると思うよな。
「あとでぶつかった眷属に、オークションの方だって伝えてもらおうか」
「オークションかー。やっぱり……って、前にもこんな感じの話をしたっけ?」
「したな。まあでも、今回は奴隷の売買も無い極めて合法なヤツだしな。ある意味、それ以上にヤバい物は売るけど」
「ゲームソフトの元値が58億で、それをそのオークションで350億以上で売るとかそういう感じ?」
某孤島に転送させる、欲望渦巻くゲームの話を何故しているのやら。
……たしかに面白いので、ユニーク種と戦うための仕組みには組み込んだけども。
「ゲームは売らないよ。けど、そうだな……前に話してたアレ、できないか?」
「ん? いつでも準備はしているから、やろうと思えばできるけど……売るの?」
「限定的に、金持ちに売ってみよう。お小遣い稼ぎにちょうどいいんじゃないか?」
「まあ、一度試す必要もあったから、それでもいいけど……本当にいいの?」
なんて悪巧みをしている間も、フィレルはニコニコとしている。
新たにオークションに加える話をしている内に、午前中の催しが始まるのだった。
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