AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と夢現祭り二日目 その10
『何ゆえに、この地に踏み入れるか』
「くそっ、階層守護者が居るのかよ!」
『すぐに引き返すのであれば、見逃そう。だが、さらに足を進めるのであれば……相応の代償が必要と思え』
フェニが不死鳥の姿で、二層を訪れた探索者たちに警告をする。
全員が祈念者、ならば特別金銭に苦しんでいるというわけではないだろう。
「どうする、戻るか?」
「はぁ? バカなこと言うなよ、このルートで入るために、どんだけヤバい橋を渡ったと思ってやがる! アイツを殺して、さっさと掘っていくんだよ!」
『……ふむ、それが選択か。ならば致し方あるまい──多少強引になろうと、お帰り願おうことにしよう』
バッと大きな翼を広げると、威嚇をする。
それ自体にスキルなどは使っていないようだが、フェニのレベルと放つ存在感が、彼らに恐怖を抱かせる。
「……ひぃっ!」
「お、おい、レベルはどうなんだよ!」
「……れ、レベル250!?」
『ッ!?』
実際はもっと上なのだが、それ以上だと普通の奴らがありえない数字だと思ってしまうので、偽装ステータスのレベルは250だ。
魔物がそのレベルに至るのことは、極めて少ないケースだ。
雑魚の魔粘体だって進化すれば、レベルが上げづらくなるからな。
今のフェニの種族は、すでに最上位の種族なので進化は存在しない。
逆に言えば、合計レベルで言えば250以上を超える……それが魔物の凄いところだ。
『なんだ、お前たちの覚悟とはレベル差程度で折れるものだったのか。ならば、疾くこの地を去るがよい!』
「! ……そうはいかねぇんだよ。お前ら武器を取れ、絶対に殺す。神鉄をゲットできた暁には、俺たちはやりたい放題できる!」
「そうだ……諦めてたまるかよ」「不死鳥が死なねぇなら、死ぬまで殺せばいいだろ!」「水でもぶっ掛ければ死ぬんじゃねぇか?」「よっしゃぁ、やっちまえ!」
『……理由はどうあれ、覚悟は決まったか。ならばよい、お前たちのすべてを賭けて我に挑め! そして──何も残せぬまま死ね!』
フェニの種族は──【永熱魔王】。
種族としての【魔王】でも、悪事を働くような【魔王】でもない……ただ概念を司る、存在が【魔王】染みているだけだ。
『我が炎の前に眠れ──“赤炎”』
生みだされた赤色の炎。
それは揺らめく炎に例えとして付けた色ではなく、本当に赤色でのみ燃える炎。
それは真っすぐ彼らの下へ向かう。
もちろん、ただ愚直に受けるわけではないようだ。
「壁だ!」
「はい──“鋼鉄壁”!」
堅固な鉄でできた壁によって、火を防ごうとする祈念者たち。
熱は帯びるだろうが、水魔法も使えるようなのでどうとでもなる……そう思ったか。
「おいおい、なんでだ……いくらなんでも早すぎるだろう!」
『赤の炎はすべてを燃やす。金属だろうと、魔力だろうと……水すらもな』
「なら、重ねておけ!」
「“鋼鉄壁”! “鋼鉄壁”!」
魔力切れで倒れた男を担ぎ、壁から遠ざかる彼ら。
その判断が正しかったと証明するように、すぐさま融けていく金属。
どこかの『選ばれし者』を彷彿とされる現象だが、まあ仕方ない。
なぜならフェニの魔法は、彼の固有能力の上位版に位置する炎だからな。
『無は再び有へ──“緑炎”』
「ふ、フレイムアイアンゴーレム! レベル200です!」
「ふざけんなよ! なんだよそれ、チートすぎるだろうが!」
『チート、お前たちは何にでもその言葉を使うな。その炎は、我が燃やしたモノに命を与える炎。そこにいったい、何の違和感があるというのだ』
彼が紡ぐ縁によって強化される炎、あれはあくまで彼との関係性が生みだすものだ。
しかしフェニのモノは、多様に変質した色付きの炎を生みだすもの。
赤はすべてを燃やし、緑は命を育み、他の色もそれぞれ異なる性質を宿している。
それこそが、フェニの得た炎の力……万能性を求めた結果、辿り着いた固有能力だ。
『やれ、炎の下僕たちよ。奴らに死を……我は何もせぬ、信じるかどうかはお前たち次第だがな』
「チッ、お前らやるぞ! 先にアレを潰し、それからアイツをぶっ殺す!」
『ふむ、やれるのあればな。不死鳥とは、死から程遠い種族なのだが』
一番は神族だが、彼らは『神殺し』さえあれば絶対に死んでしまう。
だが不死鳥なら、称号とかの効果で死ぬことは無いんだよな。
なので彼らの言動に、俺が反応することは無い……そう、冷静なんだぞ。
これからどうやって殺すかとか、そんなことなんていっさい考えていないんだからな。
《フェニー、これからどうするんだ?》
《うむ、次は“紫炎”で奴らが倒したゴーレムを再び操るつもりだが……ご主人は、もう戻るのか?》
《そうだな、一つの場所に意識を向けすぎるのも、ちょっと不公平だって言われててな。悪いな、フェニ》
《構わない。ご主人が観てくれていた、それだけでも誇れることなのだ。最後まで、この使命を全うしよう》
この先の展開は分かっているということもあり、次の場所に視界を移し替える。
フェニには悪いことをするな……って、これから全眷属にこれをするんだけどな。
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