AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と夢現祭り二日目 その04



 何度も勝利を繰り返していると、だんだんと俺たちは注目を浴びるようになった。
 姉妹のどちらかが戦い、俺ともう一人は修業をしている……もう異常でしかないな。

 だが一人として、俺たちに敗北を与えた者はいない。
 フーラもフーリも強いので、武器を片方しか使わないでも勝てるんだよな。


「そういえば、フーリはフーラの反射速度を羨ましがってたよ」

「そうなんですか? 私としてはフーリの対応力の方が、凄いと思うのですが……」

「どっちも凄いんだよ。実際、僕はそのどっちもスキル無しじゃできないわけだし」


 現在はフーリが前に出て、俺とフーラが見取り稽古をやっている。
 先ほどの短剣使いとフーラの動きをなぞることで、スキル獲得を目指していた。

 とはいえ、俺は並列作業と思考加速スキルは持っているので、会話をする余裕がある。
 なので先ほどフーリと話したことを、フーラと語り合うことに。


「フーリの持つ武器は『魔銃[創弾]』、イメージした銃弾を自在に生みだせる。フーラが無意識で武器を作るのに対して、フーリはその場その場で考えて弾丸を生みだして戦っている」


 今回の相手は全員が弓を使うのだが、それぞれ射程が違うので近接戦にも対応できるというネタパーティーである。

 一人が短弓、一人が長弓、そして残った一人がクロスボウを使っていた。
 最後の奴は接近戦もできるので、フーラが相手でも戦えていただろう。

 フーリは銃を構え、弾丸を放つだけ。
 しかもその場からは一歩も動かず、ただ引き金を引くだけでいい。


「──『獣弾』」


 発射された弾は、途中で形を変えて獣へ。
 弾丸サイズの小さな獣だが、飛んでくる矢の迎撃程度ならば難なくこなす。


「──『風弾』、『土弾』、『雷弾』」


 どんどん弾丸の名前を言って、引き金を引いては特殊な魔弾を射出する。
 相手はそれと同じタイミングで魔法の矢を放つのだが、それらすべてが相殺された。


「フーリは探知能力が高いし観察するのが上手いから、相手が何をするのか先読みすることができるんだよね。そして、対処法として適した銃弾を生みだすことですべてを跳ね除ける……それがフーリ自身の戦い方」

「羨ましいです。私みたいに無意識で武器を用意するんじゃなく、しっかりと考えたうえで戦えている……私も、フーリみたいに戦えればと思ってしまいます」

「それを言うなら、僕も眷属たちみたいに戦いたいって思っているよ。フーラみたいに無意識でも対応できるようになりたいし、フーリみたいに理詰めで戦えるようになりたい。けど、僕にはどっちもできないからね」


 武技の力で連射をし、大量の矢をフーリと俺たちに降らしてきた彼ら。
 だが、俺もフーラも何もしない……信じているからな、頼もしい【英雄】を。 


「──『雨弾』」


 銃弾が放たれ、拡散弾のように飛び散る。
 彼らが放った矢に弾丸が命中する……のだが、今回はこれまでとは少し違った状況に。

 弾丸が拡散したことで、その威力も低下してしまっていた。
 対して彼らは少々お高めの魔法の矢、そして武技を使うことで威力を上げていたのだ。

 その結果、矢は弾丸を越えて俺たちを攻撃してくる。
 まあ、ここに来る分はフーラがすべて弾くので問題ない。


「フーリ!」

「へっ、ようやく一人か」
「俺たちの連携攻撃の前に」
「銃など無意味なのだ」


 なんともまあ、三下な発言をしてくれる彼らは誤解していた。
 大量の矢はたしかに強かったので、普通の奴なら死に戻りをしていただろう。

 そのせいか、彼らはフーリが死んだと思っているらしい。
 土煙が立ち込める中、薄っすらと見えた影から銃声が響く。


「──『樹聖弾ユラル』」


 状況は一気に狂う。
 銃弾が彼らの下に着弾すると、そこで膨大な量の樹木が生え始めたのだ。

 根や枝が彼らを呑み込み、束縛する。
 身体強化をして必死に抵抗しているが……解放できたのは腕だけで、体自体は抜け出すことができなかった。

 それもそのはず、眷属の名を与えた弾丸は一日に一発ずつしか撃てない最強の魔弾。
 だがその分の性能を発揮する──そして、眷属は一人ではない。


「──『死焔弾フェニ』」


 次の弾丸は火を噴き、樹木を燃やす。
 水で消そうとしても無駄、止めるには死ぬよりも先にフーリを倒さなければならない。


「さっきまでの攻防を、今度は制限時間付きでか……フーラ、彼らは勝てると思う?」

「フーリは絶対に負けません!」

「うん、それは僕もそう思うよ。あくまで様式美として聞いただけだし」


 眷属の弾丸を使うのは、先ほど防げなかったことに対する返礼だろう。
 今の自分が持ち得るすべてで、捻じ伏せてやるという宣言。

 フーリはとても冷静な子ではあるが、フーラ関係のことだと熱くなりやすい。
 さっきの攻撃で火が付いた結果──物理的に火を起こしたわけだな。


 ──勝者:『英雄と従者Hero And Servant


「あっ、終わりましたね」

「うん、終わった終わった……今回は弓術のお勉強かな? フーラはフーリをすぐに褒めてあげてね」

「ふふっ、分かっています。私はお姉ちゃんですから」


 少々俯く妹の姿を見て、すぐに駆け寄ってギュッと抱き締める姉なのだった。
 ……さて、少し別の場所がどうなっているのかも把握しようかな?



コメント

  • ぽてふさん

    『ふむ、やれるのあればな。不死鳥とは、死から程遠い種族なのだが』

    『ふむ、やれるのであればな。不死鳥とは、死から程遠い種族なのだが』

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