AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と夢現祭り二日目 その01



 イベント二日目が幕を開く。
 夜にも一騒動あったのだが、そちらは眷属たちがあっさりと鎮圧したため、特に取り上げる必要もないだろう。

 二日目となり、初日とは違う点として──上空に浮かんだキューブが該当した。
 そこにはユニーク種との戦闘に関する映像が、無数に放送されている。

 これはユニーク種に関する情報を集めてもらうため、協力してもらっていた。
 ほとんどが対[ロウシャジャル]戦の中、フレイたちの対[ネクロエム]戦もある。

 ──おひねり機能もあるので、彼らはうはうは違いなしだな。

  ◆   □   ◆   □   ◆


 イベントエリア バトルフィールド


「さーて、今日は楽しもう!」


 一日傍観に徹していたのは、俺の体に現在イベントエリアすべてに対し行っている監視システムを馴染ませるため。

 眷属たちに問題を報告し、対処してもらうという一連の流れを、ほぼ無意識で行えるようにしたのだ。

 それが意識遮断(睡眠)によって完成し、ほぼ完全に意識せずともできるように。
 お陰でノゾムとして活動できるぐらいの、ほんの僅かなキャパを得られた。


「警護、お願いね──フーラ、フーリ」

「は、はい! メルス様……いえ、ノゾム様のことは私たちが守ります!」
「……任せて」

「うんうん、僕もずいぶんと偉くなったよ。まさか、【英雄】様に守ってもらえるなんてね……」

「私たちにとっては、メルス様こそが本物の英雄です。職業に載ってる【英雄】なんか目じゃない、行動で示してくれる──」
「お姉ちゃん、もうストップ……ノゾム様、しゃがんでる」


 なんだかこう、無性に自分をぶん殴りたくなる今日この頃。
 ガーによく思わせられるのだが、ピュアな感想ほど心にクるものはないな。

 俺という人間が、ダメなヤツだと分かったうえでフーラはそう言っていた。
 俺のどこかに、俺自身すらも認識できない『英雄らしさ』を、彼女は望んでいる。

 俺がやっていることは偽善だと、俺の独りよがりだと言ったこともあった。
 それでもフーラ、そしてフーリたちは救われたことに代わりはないと言ってたっけ?


「メ……じゃなくて、ノゾム様!? だ、大丈夫でしょうか!?」

「う、うん……フーリ、フーラってとっても危ないね」

「……いつも急に言うから、ビックリする」

「こういう部分も、【英雄】に選ばれる資質なのかな? 色は好んで……るかどうかは、フーラ自身の話だよね」


 おや、フーリがやれやれと嘆息している。
 ずいぶんと子供らしくない挙動だが、いったい何がそうさせるのか。

 まあ、無自覚誑しな姉を持つと、苦労することもあるのだろう。
 互いに互いを大好きな二人なので、フーリもまた似たような感じなんだろうけど。


 閑話休題たっかんしたいもうと


「ところでノゾム様、どうしてバトルフィールドへ来られたのでしょうか?」

「バザーフィールドの目玉は、あくまで明日だからね。それに、ちょっと前に高い買い物があったからお財布が苦しくて……あっ、二人にご馳走する分はちゃんとあるからね!」

「そんな……別に、ご飯など!」
「……貰っておくべき。ノゾム様は、食べてほしい言って言っている」

「うん、だからぜひね。お金が無いっていうのは、あくまでノゾムとして使っていい分のこと。僕が眷属の主として、ご馳走する分には何の問題も無いんだよ」


 Z商会で買わせてもらった、『誰でもできる簡単スキル習得本(完全版)』が異常な額だったからな。

 しばらくは俺にお金を渡したいという眷属のお小遣いプレイにあやかりながら、少しずつ貯めていく必要がある……なんか、ここだけ聞くとトコトン屑である。

 小さくコホンッと咳払いをして、心を入れ替えた。
 自然と声も静かで重たいものになって、程よく凄みを覚える。


「──さて、本題だよ」

「「っ……!」」

「今の僕はノゾムで、はっきり言って全然強くない。祈念者と違って、みんなみたいにスキル使用に制限が無いから、多く得れば得るほど使うことができる。だから今回は、いろいろと習得したい」


 獣剣術や森弓術を得る過程で、俺は模倣スキルを習得していた。
 効果は微々たるモノではあるが、見たり試した行動でスキルの熟練度を得られる。

 要するに、この血生臭い場所で観察したり戦ったりすれば、戦闘関連のスキルの習得速度を上げることができるわけだ。


「このバトルフィールドにおける戦闘は、別に1vs1に限定しなくてもいい。二人には僕といっしょに参加して、3vs3をやってほしいんだ」

「よ、よろしいのですか!?」

「今の僕は、二人と比べたら圧倒的弱者だ。フーラがどう言おうと、その事実は変わらない。だから、この姿でもフーラに英雄だって言ってもらえるような強さを、ここでの戦闘で手に入れたいんだ」

「それでしたら……このフーラ、全力でノゾム様をサポートいたします!」
「……ほどほどにね」


 フーリの言う通り、全力でやられると俺のためにならないな。
 本当の強者も混じっているので、全戦全勝とは言わないが……俺は楽しかできない。

 察してくれるフーリはともかく、フーラは張り切って相手を殲滅するだろうし。
 抑え込めたとしても、たぶん俺が一方的に嬲られる状況にしかならないはずだ。

 ──いろいろと不安はあるが、まずは試してみよう!



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