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山田 武

偽善者と夢現祭り初日 その03



 イベントエリア バトルフィールド


「まあ、ここは定番だよな」


 コロシアムが配置されたここでは、フィールドのどこでも[PvP]が行える。
 最初は持っている100Pで賭けを行い、勝敗でそれが増減していく。

 増減量は強さの差で決まり、あまりに圧倒的なら変動がゼロな場合もある。
 ……ただし、徒党を組んで挑めば、1Pぐらいは変動するかもな。


《そんなわけで人が集まる。どこもかしこも戦いたい奴らばっかりで、今回はPKもここでなら合法だ。暗殺でもポイントが入るし、裏稼業の皆さんもハッスルしている》

「そうなのですか?」

《俯瞰してみているから、そういう部分まではっきりなんだよ。しかし悪いな、わざわざ狩りなんてやらせてしまって》

「いえ、マスターがお気にすることではございません。この身はすべて、マスターであるメルスのもの。望まれるのであれば、このようなこと」


 俺の体は現在、少々作業に没頭している。
 代わりに眷属たちが至る場所へ派遣され、俺の頼みごとを聞いていた。

 バトルフィールドに居る二―も、そういう理由でここに来ている。
 彼女は持久戦に長けた武具っ娘なので、もともと迷宮かここに来てもらう予定だった。

 それから考え、戦闘狂ばかりが居ても困るということで、彼女はこちらへ。
 そして、制御を諦めた者たちの代わりに、少々視界を借りさせてもらっていた。


《頼りにするぞ、二―。お前はここにいる眷属の中で、もっとも俺の言うことを聞いてくれる。というか、アイツらが全然聞いてくれない……至る所で暴れてるもんな》

「はい、すでにあまりの強さに疑惑を持った方々が訴えを出していると、GMの方々より連絡が入っております」

《……マジでコールの方、こっちで一度確認できるようにしてよかった》


 うちのチート眷属集団によって、被害を受けた者たちが大量に出ている。
 まあ、祭りだからと能力値は本来のものでいいやと調整しなかった俺も悪いけどな。

 ちなみに参加者はソウ、チャル、シュリュなど……錚々たる面子である。
 認識偽装で正体を偽っているが、対戦相手だけはその恐怖で認識するようになるな。


《それじゃあ、そろそろ再開しよう──今》

「──“瞬脚”」


 俺が合図をすれば、二―は転移を行うスキルを使ってくれた。
 その結果、何が起こるかというと……放たれた黒い刃を躱すことができる。


「チッ、逃げられ──」

「──“流星落脚シューティングスター”」

「がはっ!」

「逃がすはずがないでしょう」


 転移先は、上空。
 宙を蹴って勢いを加速させ、武技を使って凶刃の持ち主に一撃を喰らわせる。

 口調はとても冷静だが、全然顔が笑っていない二―。
 どうやら彼女なりに、下手人のやり方が気に喰わないようだ。


「すでに報告が入っています。初心者のみを狙い、暗殺を行う者が居ると。たしかに、このフィールドにおいてPKは合法です。しかし、ポイントが入らないPK行為に何の意味があるというのですか」

「あ、うがぁ……」

「とはいえ、答えを求めているわけではありません。貴方の行いに意味など無く、ただ得られるのは悦のみ……なればこそ、私もまた悦のために貴方を殺すことにしましょう」


 ちなみに二―に、快楽殺人の気はない。
 彼女にとっての悦とは、俺や眷属たちと共に居る時間なんだとか……うん、とても家庭的な悦であった。


「立ちなさい、戦う術を貴方は持っているはずです。痛覚を消し、動くことも……卑怯とは言いません、今は早く死ぬことができることに感謝しなさい」

「ふざけんなよ。たかが一発程度で、調子に乗りやがって!」

「力量の差も図れないのですね。では、その力を以って私を殺してみなさい」

「やってやるよ──“首狩切断《ヴォーパルギロチン》”!」


 持っていた黒塗りの短剣を使い、二―の首目掛けて進む男。
 だが、同時に影に分身を仕込んでいるし、空から一本の短剣が降ってきている。

 触れればそれだけで麻痺を起こし、一瞬身動きが取れなくなる劇毒が塗ってあった。
 まあ、初心者狩りをするためにというよりも、PKK対策として磨いた技術みたいだ。

 とはいえ──


《というわけだから、全部躱して潰せ》

「──“震脚シンキャク”、“後宙返脚サマーソルトライト”」

「んなっ!?」

「いちいち、甘いんですよ貴方は」


 地面を力強く踏みつけると、地上に居る男は動けなくなる。
 そのまま後方宙返りをすると、空から降ってきた短剣を蹴って、自分自身の影を踏む。

 光属性を帯びた蹴りを受けた結果、影は干渉を受けてしまう。
 宙返りをした後も“震脚”の効果は続くため、着地の際は光属性付きの震動が発生。

 ──そうして、内部に隠れていた本体が地上へ引きずり出される。


「隠れれば、勝てるとお思いですか? だから言ったのです、甘いと」

「や、やめ……」

「終わりです──“踵落撃アクスキック”」


 男の頭がグシャッと弾け、一時的にこの場から消え去る。
 ネロへ連絡は回してあるので、普通の被験者よりも長めに実験をされるだろう。


《お疲れ様、二―》

「ありがとうございます、マスター」

《今のところ、コイツ以上の問題児は発見されていない。少し休もう、代わりに美味しそうな料理を売る屋台を見つけた》

「すぐに行きましょう!」


 その後ニーは、トマトスープっぽい料理を美味しくいただいた。
 ……紹介したのは俺だったが、よく飲めるなと思ったりもしたな。



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