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山田 武

偽善者と自己紹介 その43


 夢現空間 居間


 再び元の肉体を取り戻した俺は、すぐに自分の動きを確かめた。
 モブスペックから偽善用万能スペックに戻ろうと、使用者が凡人なことに変わりない。

 言われたことを思い返し、一つずつなぞるように行っていく。
 当然、スキルの補正が尋常ではないので、それらはすぐに体に定着していった。

 肉体は別でも魂魄は同じなため、再習得をする必要はない。
 まあ、肉体に依存した種族スキルなどは、その体でしか使えないなどの制限が付くが。

 要するにスキルそのものは縛り中に得ておけば、通常の体を使うことでその理解度を飛躍的に高めることができるのだ。

 逆もまた然り。
 この体で覚えたスキルの動作を、縛り中の体でなぞればほんの僅かでも習得速度を上げることができる。


「──なんてことがあったんだ。やっぱり、スキル習得が難しいものは、結構取るのに時間が掛かるみたいなんだ」

「……どうして」

「ん?」

「どうして、頑張るの? だって、あなたはそうしなくてもいいだけの力があるのに」


 モブスペックでの体験談を話していると、ふとそんな問いをされる。
 どう答えるのが正しいのか……まあ、ありのままを答えればいいか。


「俺の力は、努力して勝ち得た物じゃない。ふと手に入った力が、ふと失われる……そんな未来が来るかもしれない。けど、この世界は努力が目に見えて証明される。なら、少しぐらい頑張ってもいいんじゃないか?」

「……自分のため?」

「そうだな。そんな未来ありえないかもしれないし、やっても意味はないかもしれない。けど、本当にあったら怖い……お前たちを守れないから。自己満足ではあるが、だからこそやっているんだ」

「……そう」


 今の体ならともかく、縛り中の体はとんでもなく弱い。
 眷属たちには敵わないし、敵対者にも負け得る可能性を秘めている。

 その可能性を排除すべく、自分にできることは強くなること。
 ……眷属たちに勝てるとは、全然思っていないけどさ。


「そろそろ始めようか──第四十三回クエッションタイム! 本日のゲストはこの方──とっても努力家なリラちゃんです!」

「……よろしく」

「はい、こちらこそよろしくお願いします!二人で盛り上げていきましょうか!」

「それが願いなら……私は、あなたの願いを叶える」


 というわけで、さっそく行ってみよう。


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「問01:あなたの名前は?」

「リラ……リラ・ロッシェン」


「問02:性別、出身地、生年月日は?」

「女、分からない、──年の4月12日(諸事情によって修正が掛かっていることをご了承ください)」

「分からないって……どういうことだ?」

「うん……生まれは貧民街だったし、あそこの人の中には自分が居る場所が分からない人もいる……私もそうだった」


「問03:自分の身体特徴を描写してください」

「オーロラ? みたいに変化する髪と瞳……あとは特にない」

「背が少しだけ低いよな。栄養、しっかりと取っているか?」

「……ここは料理が美味しい……あと、すぐに大きくなる」


「問04:あなたの職業は?」

「『奉仕者』……誰かのためにすることに、補正が入る」


「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」

「……真面目?」

「うん、バカが付く程な。あと、さっき言った通り努力家だ」


「問06:あなたの趣味、特技は?」

「お菓子作り……子供たちにあげる」


「問07:座右の銘は?」

「一日一善……誰かのために、何かすべき」


「問08:自分の長所・短所は?」

「いろんなことができる……けど、これって言うものがない」

「もともと一般スキル縛りみたいな状態だったんだから、仕方ないと言えば仕方ないけどな。その分、大量にあったスキルが今では統合されているけど、アイツらは……まあ、誰も彼もが特化型ばっかりだし」


「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」

「好きなことは人助け、嫌いなことは何もしないでいること」


「問10:ストレスの解消法は?」

「感じたことない」


「問11:尊敬している人は?」

「人……はいない」

「なら、誰なら?」

「献上の神『ティーザ』……何もなかった私に、生きる意味を与えてくれた」


「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」

「特にない……けど、人助けをするならどんなことでも叶えてあげたい」

「……ダメ男製造マシンだな」


「問13:この世で一番大切なものは?」

「心……誰かのため、そう思いやれる心」

「今までで一番、胸に沁みる言葉だったな。けど、そこは自分の命って言ってほしい。嫌かもしれないが、眷属は俺の家族。人助けで捨てていいほど、安い命じゃないんだ」

「……そう望むなら……」


「問14:あなたの信念は?」

「誰かを助けるのに、理由は要らない」


「問15:癖があったら教えてください」

「……無い、かな?」

(人助けセンサーが敏感なところだろうな)


「問16:ボケですか? ツッコミですか?」

「ん、ツッコミ……」


「問17:一番嬉しかったことは?」

「あなたと共に神殿に行って、今までのすべてが報われたとき」


「問18:一番困ったことは?」

「それからのことを、あなたに決められてしまったこと」

「……迷惑だったか」

「ううん……ただ、ちょっとビックリした」


「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」

「飲ませてくれない」

「子供は飲んじゃいけません」


「問20:自分を動物に例えると?」

「……分からない」

「他者を思いやれる動物って、人間だけだから仕方ないか……じゃあ、好きな動物は?」

「……ハリネズミ」


「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」

「街の人が『献身聖女』って呼んでた……分からない」

「充分、リラが頑張ってくれている証拠だ」


「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」

「……あのとき、あなたが……ノゾムが居なかったら、私は『地操脈竜』に殺されていたと思う……だから、ありがとう」

「──ええ、お役に立てたようで」


「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」

「もう一度、『ティーザ』に会う……そのために、信徒として頑張る」


「問24:自分の人生、どう思いますか?」

「約定を与えてくれたティーザに感謝して、人助けをするもの」

「……それだけか?」

「分からない……けど、あなたたちと居るのは居心地がいい」


「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」

「もう一度ティーザに会いたい」


「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」

「何とかする……手伝って?」

「ええ、お望みとあらば」


「問27:何か悩み事はありますか?」

「自分だけにできることがない……みんな、何かそういうものがあるのに」

「俺も無いから気にするな。あっても、それは自分の力じゃないし」


「問28:死にたいと思ったことはありますか?」

「無い……約定を果たすため、死ぬわけにはいかなかった」

「なのに死にかけるようなことは、平然とやろうとしてたよな」

「……人助けだから」


「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」

「もう一度、ティーザに約定を与えられるような人に……」


「問30:理想の死に方があればどうぞ」

「ティーザの使徒に選ばれるようなもの」


「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」

「……必ず、また会えるようにします」


「問32:最後に何か一言」

「ノゾム、あなたは人として一番」


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「はい、カット! ……人としてって、どういう意味?」

「……内緒」

「俺、人じゃないってこと? って、待てって! ちょっと、説明していてくれよ!」


 先ほどの言葉の真意が分かるのは、もう少し先の話であった。
 それまではずっと、人間性について延々と悩む羽目になるが……それはまた、別の話。



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