AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と戦力集め その02
今回、俺は単独で縛りプレイを行う。
なぜなら最近、同時期に縛りを行っていたニィナとのスキル保有数に、かなりの差が生じ始めているからだ。
彼女は武術と魔法で統合スキルを獲得しているうえ、魔本を読むことで鑑定スキルまで持っている。
対して俺は格闘と投擲術、無と生活魔法しか持っていないのだ。
これだけでも差があるのに、他の系統のスキルもごく一部を除けばニィナの方が多い。
「そうじゃないのは生産スキル、そして煽るための少々グレーなスキルだけ。もう少し、兄らしくいられるようにスキルを取っておかないと……すぐに学んじゃうからな」
ニィナは学習能力の『超越種』。
学んだものに関するスキルは、非常に効率よく習得することができる。
そして、すでに全祈念者たちからさまざまなスキルを使う様子がニィナの中に残っている……つまり、切っ掛けさえあればどんなスキルでも得られるわけだ。
彼女とのスペック差が最初からあり、成長速度で遥かに劣っている。
それでも兄が兄らしく振る舞うには、相応の努力が必要となるのだ。
「眷属のためなら、努力だってなんのその。なんとしても強くならないと……今回は独りだから、その分支援グッズはあるけど」
まずは当然、魔術起動用のデバイス。
片腕に取り付けるのだが、今回は特別に右と左の両方に装着。
デバイスは登録できる魔術の数に制限があるので、一機分よりも多くの魔術を使えるようにするためのものだ。
そして、腰に下げている『収納本』。
魔本探し用に準備したこの魔道具は、本に限り大量に、その中へ納めることができる。
事前に魔本をいくつか仕舞っておいた。
なので必要に応じて使用すれば、持っているスキル以上に効果を発揮してくれる。
「まずは始まりの街で、本屋でも探してみようかな? 図書館にある物は、厳重に管理されているから無理だろうし」
読んで構造を完全に覚え、記憶から読み込むことで魔本を行使……なんて方法を、現在は取ることができない。
だが、軍資金だけは大量に用意してある。
金で解決できることならば、金でなんとかするべきだろう。
冒険の始まりは旅の準備から。
俺の一人旅もまた、最初はモノを準備するところから始まるのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
俺が初心者として街……いや、町で過ごしたのはごくわずかな時間。
イベント後は当時の第一世界で暮らすことが多く、あまり町は利用していなかった。
なので、地形に関する情報はニィナとレベリングと称して行動したときのモノがもっとも新しく、その次が終焉の島から帰ってきた時とかなり開きがある。
「こんな店……在ったかな?」
イメージとしては小さな古本屋。
街を練り歩いている中、誰も目に留めない場所にひっそりと存在していた。
「まあ、なんだかイベントっぽいから入ってみようかな? あっ、でも念のためにやっておこう──“幻ノ君”」
顔が割れると面倒な相手がいるかもしれないので、その時々で顔を変えている。
特にリスクがあるわけでもないし、一期一会な出会いであればそれで充分。
……この体でいる間は問題ないはずだが、普段から畏怖嫌厭スキルの呪縛に囚われているってことなんだろうな。
「すみませーん! ……って、外よりも場所が広いんだね」
「うるさいな……いったいどうやって、この場所を知ったんだい?」
「えっ? 彷徨っていたら、いつの間にか」
「それはないな。少しばかり調べさせてもらうが、それでも構わないかい?」
店番をしていた老人が、入ってきた俺に対してそのような問いをしてくる。
資格的なモノがあるなら知りたいので、了承して調べてもらうことに。
「……なるほど、魔本を持っているみたいだね。それが資格になるのさ」
「ここでは何が買えるのですか?」
「見ての通り、本が買える。払う物さえ払ってくれればね。使わないなら、読むだけってのも構わないよ」
言語理解スキルが無いので、そこまで多くのことは分からない。
だが読める範囲で確認した限り、魔本以外の物もここにはあるみたいだ。
「じゃあ、読ませてもらいますね。勝手に起動してしまう魔本などはありませんよね?」
「ああ、そういう物は別の場所にある。そこには比較的安全な物だけさ」
「よかった。弁償となっても、困ってしまいますので」
「まあ、ここの本でスキルを習得したなら、ぜひともお礼を尽くしてもらいたいがね」
にやりと笑みを浮かべる老人……ニィナを連れてこなくて正解だった。
いったい、どれだけお礼を尽くせばいいのか分からなくなってしまうよ。
魔本はさまざまな場所、時代に作られているので書いてある文字も異なる場合が多い。
俺は共通語とほんの僅かな魔術用の文字しか覚えていないので、読めない物ばかりだ。
それでもいくつか目を通していくと、言語に関する本を見つけた。
どうにかそれを読み進めていく内に、やがて言語理解スキルを習得する。
「おや、どうやら習得したようだね」
「……これ、魔本じゃありませんよ」
「ここの本でスキルを習得したなら、私はそう言ったはずだよ? 誰も魔本でなんて、一言も言ってないじゃないか」
「…………勉強になりますので、あとで買わせていただきます」
かなり古い言語もあるみたいだし、子供たちの勉強のためにもちょうどいいだろう。
少々負けた気分になってはいるが、背に腹は代えられないな。
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