AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と戦力集め その01
始まりの街
俺はリーンやルーンの国民の内、試験に合格した者をこちらに向かわせていた。
言わば国外研修的なものであり、封鎖された世界に変化を生むための勉強をしている。
ある者は商業を、ある者は生産を、ある者は冒険者としての常識を……いろんなことを学んではこちらの世界に持って帰ってきて、それらを世界に反映させていた。
もちろん、それは明るいようなことだけではない……裏で使われるような技術もモノにしておかなければ、その対策を立てることができなくなるからだ。
町は正式に街となり、その分さまざまな技術が取り入れられている。
それは他国のものであり……他の世界のものでもあった。
「──だいぶ、上手くいっているみたいで何よりだ。これなら問題ないな」
「メ、メルス様!?」
「そこまで驚かなくてもいいと思うが……別にそれはいいか。全員、苦も無くやっていけているか?」
「も、もちろんでさぁ! まさかあの伝説の方々と共に仕事ができるなんて……おいらぁなんて幸せ者なんでしょう!」
伝説の方々、とはボスたちのことである。
ボスって見た目以上に長生きしており、それなりに名の知れた御方なのだ。
そして、彼はルーン……いや、過去のネイロ王国に居た悪党たちの親分。
祈念者が起こしたイベントで捕縛されていたので、それを釈放したのだ。
だがいちおうでも悪党、そのまま野放しにするわけにもいかなかった。
そこで彼と彼を敬愛する者たちを国外追放という体で、修行をさせることに。
「そうか、追放してしまったとはいえ、お前たちも俺の世界の住民だ。何か困ったことがあったら、伝えてくれればできる限りのことはしよう」
「……メルス様にはもぉ、返そぉにも返しきれないほどの恩がありまさぁ。あいつらも無実にしてくれたうえに、居場所まで用意してくれるなんたぁアンタにしかできねぇよ!」
「俺がやったのは、誰でもできることだ。ただ、できるのとやるのはまた別のこと。お前らは、俺の偽善の琴線に触れた。ただの悪党だったら無視してただろうよ」
「分かってまさぁ。アンタは救う奴をしっかりと選んでいる。そんじゃそこらのクソッたれな正義の味方とはそこんところが違う。けど、あんたはそのうえでおいらたちを救ってくれたんでっせ? そりゃぁ感謝しますよ」
この世界の人々とは、基本的に善人だ。
……いや、地球の人々が汚れ切っていると言った方がいいのかもしれない。
創作上の話だと割り切り、周りに迷惑が被るような話でも平気で喧伝する。
子供たちは昔からそれを見て育ち、脳裏に焼き付けてしまう。
そうした結果、常識という薄皮が剥げれば悪党に落ちやすくなっている。
他者を傷つけることをよしとする、それが最終手段として生まれているのだ。
この世界は日常的に犯罪行為が栄えているが、それは生死を賭けているものが多い。
そういった取り繕いが必要とされていないからか、その行動すら純粋だ。
悪党には二種類ある。
自ら望んでそうなったか、状況がそうならざるを得なかったか。
要するに彼らにも事情があり、その事情すら取り払えば善人であろうと努力する。
俺はそれを信じ、犯罪者であった彼らを生かしているのだ。
「ところで、今日はどういった御用で?」
「ちょっとした頼み事をな。ああ、今回は別に仕事をしてほしいわけじゃない。集めてほしい情報があるんだ」
「……へぇ、なんでございやしょう?」
「魔本をな。前に言ってた特別な物だけじゃなくても構わない。色物な魔本があれば、可能な限り集めてほしい……もちろん、犯罪にならない程度にな」
彼らにも運命の女神謹製の魔本を集めるように言っていたのだが、先日の話を聞いて通常の魔本も集めてもらうことに。
どうやら、魔本でしか手に入らないスキルなども存在するらしく、まだまだ俺の知らない面白さが存在しているんだとか。
「金は……まあ、これぐらいあればいいか。あくまでも平和的に、ボスたちが眉間に皺を寄せない程度に頼むぞ」
「へい、分かりやした」
「あとはそうだな……祈念者の居るここで問題を起こす奴はいないと思うが、もしものときは好きにやってくれていい。責任は俺がとるし、ボスにも話は付けてある」
「……本当、メルス様は漢でさぁ」
たまに妖女になっているとは、なかなか言いづらいない……最初から言う気ないけど。
しかし、この街で探そうにも限界があるだろうし……うん、次の目的にしようか。
◆ □ ◆ □ ◆
「さて、頑張ろうか」
さまざまな縛りをやってきたが、だいたいのモノは縛ってきた。
系統ごと、武器制限、一属性限定、消費身力増大などさまざまだ。
そこから発想を得て、新しい魔法や武技が生まれたりスキルを獲得した。
なのでさらに縛りを進めた結果、現在では再びゼロから始める電脳生活をやっている。
初期状態からスキルを磨き上げ、いずれは最強スペックと同等のステータスを手に入れることを目指していた。
「まあ、固有スキルは無しで、祝福も新規で得られなければ無し。そんな状態で、どう追い付けって話かもしれないけどね」
本格的にこの縛り──やり直しをできるように、わざわざ多重存在スキルを使って別の体を用意してある。
ニィナといっしょに居るときに、だいぶスキルを得ているのでかなり初心者としては強い方だろう。
「魔本を探すこと、あとはこっちの体の方で有名になることを目指そうかな? こっちなら畏怖嫌厭スキルで憎まれることもないからちょうどいいや」
俺本体は邪縛を受け、第一印象が最悪になるという偽善をやり難い現状だ。
だがこっちの体を使えば、その邪縛は発動せずに人と接触することができる。
──何より、こっちで先に会っておけば、本体に会っても邪縛の影響が無いんだよな。
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