AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と攻城戦終篇 その01
≪──じゅういっかいめのこうじょうせんがしゅうりょうしました。みなさん、おつかれさまでした。レアモンスターもしっかりととうばつしていますね≫
≪あすはいよいよさいしゅうびです。ですので、とくべつなイベントをかいさいします。げんざいおこなっているこうじょうせんは、じゅうにかいめでさいごとなります。よりょくをのこさずいどんでください≫
イベントエリアにおいて最北に位置する、都市エレモロの内部にて。
俺と眷属たちは、GM06ことリウのお知らせを聞いていた。
大半の眷属を引き連れて城を攻めていたのだが、お留守番組はお留守番組でしっかりとこの地を守ってくれたようだな。
「……さて、これからどうするかだな」
「仕事を切り詰めた者が多く、その処理にすぐさま帰宅しましたね。残るはメルス様とわたしのみ……どうしましょうか?」
「アン、お前にもたしかやることがあったんじゃないか?」
「押し付けました」
ああ、道理で研究班が恨みがましい視線を向けながら帰還していたのか。
アンの仕事は魔術関連を除けば研究班で共有できるので、それを利用したのだろう。
「どうしてそこまでして……」
「メルス様、魔導を使いましたね。それも、めったに使わない時を遡らせる。その危険性に関して、ご説明したはずですが?」
「シリアス場面でも無かったんだけど……こう、ノリだな。だいぶ楽しかったし、そのお礼に時間を返したかったんだよ」
「メルス様……眷属には時間改変に関する耐性がございますが、膨大な情報の処理にはそれなりの時間が掛かるのですよ?」
俺とカナ、彼女の従魔以外に時間改変をしたことがバレないように細工をしていた。
なぜかアルカは自力で気づいたが、自由民の眷属たちもちゃんと把握している。
スキルとして存在している干渉耐性を習得しておくと、変わる前と変わった後の変化に気づけるようになるのだ……これ、アルカも次に会うときは習得しているんだろうな。
まあ、そんなこんなで気づいたのだが、彼女たちは時間改変の影響を受けていない。
しかし、実際には起きている……それを知ろうと彼女たちはあることをする。
それが情報の共有。
俺のやったことはすべて{夢現記憶}に記録され、把握することができる。
なんだかヤンデレチックな話だが、別に見られて困るものでもないのだから投稿している……みたいなノリだ。
で、眷属たちはそれをすぐに視聴した。
ソウがアルカの下を離れたのも、おそらくそれが理由……俺だけ楽しんだから、もう退いていいと思ったのだろう。
「──ずいぶんと長い考察でしたね。メルス様、どうしてわたしたちが時間遡行や改変を危険と言ったか、覚えていますか?」
「バレると面倒だから?」
「とても抽象的ですが、概ねあっています。生と死を司る『アイドロプラズム』、星海を司る『ミラ・ケートス』など。『超越種』は何かしらの概念を司っています。当然、時間などというものにも」
「そのために、わざわざ隔離したうえで時間停滞をしておいたんだぞ? お陰で魔力が無くなりかけたけど」
多くの魂魄に大きな影響を与えてしまうこと──アイドロプラズムことアイの話を聞いて、それこそが問題になるのだと感じた。
なので時間改変もまた、世界……もしくは星海全体に影響を及ぼしてしまうからこそ、禁止されているのだと。
という理屈で諦める俺じゃない。
最初から対象だけを世界から離して、その状態で時間を経過させる……その後で、移動した時点の時間に戻せばいいと考えたのだ。
実際、それは実験でも成功している……がしかし、魔力量だけが問題なんだよな。
カナの前だから何も言ってなかったが、だいぶ消耗したんだよ。
「ナース様が虚無エネルギーを供給したからこそ、アルカさんが魔力をくれたからこそあの程度で済んだのですよ?」
「いや、アイツに限ってくれるとかそういうことは……あっ、はい。すみませんでした」
レイフ°目で見てくるアンに視線が冷たくなったことを察知し、ジャンピング正座をして反省していることを示す。
「はぁ……以降はせめて、ご連絡していただければ。縛りを解除したわたしたちにも、責任の一部はございます」
「そんなに気にしないでくれよ。悪いのは俺だから、理解しているから」
「理解……ですか。ではメルス様、もし時間が戻せれば偽善がやりたい放題と言われたとき、いったいどうします」
「──すぐに使う! ……あっ」
くっ、なんて恐ろしい罠なんだ。
そう言わないことが正解だと分かっていても、そう言わざるを得ない雰囲気になるとは思ってもいなかった。
アンもそれを承知の上で、そのような尋ね方をしたに違いない。
だが、{夢現記憶}の記録には、そんな裏事情など関係ないのだ。
しかし、俺が騙されやすいのか?
それならそれで、よりいっそう誰かと話すときは注意をしなければ……詐欺師とかに接触しても困るわけだし。
「そうならないように、頼れる眷属以外は夢現空間には入れないようにしているのではありませんか。──と、ここまでの休憩は満足していただけでしょうか」
「……ああ、だいぶな。そろそろ十回目で何があったのかを把握したいからな」
「では、ごいっしょさせてもらっても?」
「分かってる。いっしょに観よう」
情報処理に長けたアンが居てくれた方が、それもさっさと終わるだろう。
情緒もへったくれもないが、それで満足してくれるのだから……うん、膝に乗せよう。
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