AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と攻城戦中篇 その16
都市の外部をネロが守っているが、それは前方に限定されている。
そこにフィールドのボスを匿うことで、占領権限を保持しているに過ぎないからだ。
さて、残った部分はすべてをリンカが担当している。
もちろん防衛ユニットが配置されており、自動防衛を行ってくれているだろうけど。
「──『貪食人狼の籠手』」
触れた対象から能力を一定時間奪う。
童話クエストの報酬として得たこのアイテムを使い、魔物から能力を奪っていく。
奪える数に制限はないが、時間を延長できないので勝手に戻るだろう。
奪えるのは一人に付き一つ、鑑定が使えないので触れたときにランダムで奪っていく。
俺自身は[ステータス]で確認すれば分かるので、それらも交えて遭遇する魔物たちを次々と屠る。
「──『竜の頸の珠』、“辰乃鹿角”」
お次はカグヤ姫の宝具の一つ、辰の力を扱うことができる五色の宝珠。
一時的に辰魔法が使えるようになるので、それを行使して頭に鹿の角を生やす。
「──“辰雷”」
そして、そこから迸らせた雷を以って魔物たちを殲滅していく。
ついでに身体系スキルである雷雲操作を発動し、より威力を向上させる。
接近戦でも対応できるように、雷は角に溜め込んだ状態で都市まで突っ込む。
その他の宝具や武具を重ねて使用し、無事外壁まで辿り着く。
「リンカ!」
「……襲来」
「せめて『来訪』とか、『歓迎』とかが嬉しかったな」
「閉口、忌避」
全然その気がないことは分かった。
外壁の上で待機していたリンカの下へ跳躍して向かうと、嫌そうな表情を浮かべる。
「魔物の方はどうだ? やっぱり、下からも出てきたか?」
「位階、極小」
「いちおう弱めなのか……壁の方は無傷で守れているな?」
「完璧」
そこは胸を張る……平らだけど。
実際、魔物たちは壁の周辺に近づくにつれて姿を現さなくなっていた。
代わりに居たのはシルエット状の妖怪。
人ならざる姿をした者たちがさまざまな手段を以って、魔物たちの迎撃をしていた。
リンカ自身の知性が上がったからか、その妖怪──かつての『穢れ』──たちも、ただ目の前の敵に突っ込む以外の戦闘方法を手に入れたのだろう。
何はともあれ、リンカは頑張ってくれた。
これが初陣だというのに、全うしてくれたわけだ……。
「よしよし、偉い偉い」
「! 接触、厳禁!」
「っと、悪い悪い。けどまあ、今はやらせてくれ……褒美はあとにするとして、俺自身の感謝の気持ちだな」
「……早急、中止」
頭を撫でると物凄い量の瘴気をバラ撒いて抵抗してきたが、俺に効かないことを思いだしたのか渋々と頭を差し出し、時間が過ぎ去ることを願う方にシフトチェンジする。
……意外と頬が緩んでいることは、内緒にしておくとしよう。
◆ □ ◆ □ ◆
≪──はっかいめのこうじょうせんはしゅうりょうとなります。みなさん、おつかれさまでした。ざんねんながらこんかいのこうじょうせんで、クリスタルがはかいされてしまったちいきがでました≫
≪システムをゆうこうてきにかつようし、すべてのりょういきをまもりぬきましょう≫
運営側に怒られてしまう俺たち。
防衛に失敗した場所をクリスタルの機能で調べると、どうやら西側に在る町らしい。
あと、いつの間にかそれぞれの防衛難易度が載っているんだが……ここが最大レベル、眷属祈念者が占領している場所がその一つ手前の状態だ。
やはり、守る場所が増えたことが敗因なのかもしれない。
リンカのように即座の迎撃ができるヤツがその場に居ないと、対応できないだろうし。
「ふむ……どうしたものか」
偶発的レイドがいつ起きるか分からない。
ゲームのように何かの法則に則って動くならともかく、アンによると運営側で不規則に始動させているようなのだ。
手動でやっているからこそ、分かるというヤツも居るのだが……さすがに直接相対しても居ない相手から法則を読み取るのは、眷属総出でも難しい。
「──“空間把握”、“死屍蒐集”」
ネロの礼装を未だに着用しているので、呼びだしていたアンデッドたちを回収する。
彼女の方も専用のアイテムを使って、片付けに入ると思う。
アンとドゥルは直接魔法陣を見ながら戦闘していたわけなので、何も言わずとも問題なく撤収してくる……と思ったのだが。
《──メルス様のことですので、労いのお言葉は帰ってからでいいとお考えでしょうのであえていいましょう……カスであると!》
「……いろいろとツッコみたいけど、とりあえず一つだけ。あのさ、なんで分かった?」
《深淵を覗く時、深淵もまたメルス様を覗いているのですよ》
「見てない、深淵見てないから」
アンの軽快なボケにツッコみながら、クリスタルを操作していく。
やることは盛りだくさん、思考加速と並行思考スキルでそれらを処理しながら。
《とは言っても、メルス様にそこまでの対人スキルをわたしたちは求めていません》
「…………」
《回線を切ってやろうか、と口に出さずとも思っている時点でそこは確定かと》
「マジか、エスパーだな」
アンが俺の思考を読みながら会話をしているのは分かるが、こういうノリもかなり楽しいのでそのまま続ける。
──もちろん、帰ってきたら盛大に労おうじゃないか。
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