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山田 武

偽善者と攻城戦中篇 その15



「来い──[スタードロップ]」


 ドゥルの隣で呼びだすのは、銀色に輝く球体型のアイテム。
 それは所々に星を模した光がちりばめられ、球体そのものの輝きで銀星となっている。

 このアイテム、そしてこの縛りになってから使ってきた一部のアイテム。
 それらは少女たちの軌跡、そして未来を模した品だったが……それはまた別の時に。

 今回そこから理解してもらいたいのは、これから使う[スタードロップ]もまた、とある少女にアジャストされているという点。


「『スターソード』」


 告げる、それが球体へ作用しだす。
 球体の中で散らばっていた星の輝きが突如動きだし、球体そのものも剣に変形する。

 それが[スタードロップ]の効果。
 本来使うべき少女の軌跡──積み重ねてきた技術の髄、そのすべてを使うための武器。


「武技が使えないからな──『三連撃トリプルアタック』」


 名を告げる意味はないが、自分に使うぞという意識をさせて体を動かす。
 共有武技──多様な武器で使用可能──なのだが、剣の場合は三回の斬撃を放つ。

 上、中、下。
 目の前に立ちはだかる大きめな人型の魔物に対して、武技モドキが命中した。

 星銀には破邪の力が宿っている。
 そのためただの腕力任せの一撃でも、一定の威力が見込めるだろう。

 実際、受けた魔物は絶命している。
 ……まあ、狙ったのが首と心臓と股座だからかもしれないけど。


「地味だがこれでいいか……ドゥル! 俺に武具を寄越せ!」

「仰せのままに、我が王マイロード


 指示の通り、武具庫から取りだされる無数の武具たち。
 それらを掴み、振るっていく。
 縛りなどそこには存在しない。

 ──数千、数万の武具はすべて、俺の打ち上げた特殊能力を持っているからだ。


「ははっ、『スターアーマー』!」


 堅固な鎧が身を包む。
 そして空いた両手へ魔物に突き刺さった武具を拾い上げ、再び斬っては投げての連続。

 なかなか無い無双っぽい戦い方。
 大量の武具を使って投擲、魔物に命中した途端それらは内部から砕けて力を発揮する。


「ドゥル、これらは問題ない・・・・んだよな?」

「はい。我が王のお望みのまま、可能なものだけを選択して取りだしております」

「うむ、ならばよし!」


 ドゥルの取りだす武具、それらは複製魔法によって事前に複製されている。
 言わば某英雄王と某贋作者のコラボ、独りでそのことに満足しながら武具を振るう。

 担い手というか創り手は間違いなく俺。
 なのでそれらはすべて馴染み、魔力を籠めれば望んだ通りの効果を魅せ──自壊する。


「勝利のため、そんな犠牲も嫌だからな!」


 複製魔法でバックアップを取ってあるのだから、どれだけ壊して本体は無事。
 剣の丘なんてものはないが、使い捨てを前提にした戦術を取ることができる。

 ……もちろん複製できない武具も多く、神器や意思を持つ武具なんかは不可能。
 そのため普段はなかなかやらないが、この状況と縛りであればベストな使用法だ。


「素晴らしい、さすがは我が王!」


 なお、そんな称賛をしてくれているドゥルは二本の騎士剣を巧みに使っている。
 片方は魔法の触媒となるし、もう片方の剣も霊的能力サイキックを使うことが可能。

 それらの力に加え、鎧そのものに付けた機能などで魔物たちを圧倒。
 たとえ肉弾戦になろうと、雷や炎を生みだして打ち倒している。


「ドゥルも立派だよ。というか、今さらながらいいのか? 競争をやっているのに」

「ご安心を。すべては我が王の思うままに、何よりそうしたいと私自らが望んでいます」

「……そっか。なら、一位と同等にはならずとも、何か用意することにしよう」

「光栄でございます」


 騎士様はとても真面目であった。
 しかし、それと同じくらい可愛い……少々顔が赤くなっているからな。


  ◆   □   ◆   □   ◆


「──“死者之衣ネクロス”」


 霊魂を体に纏い、複腕として纏う。
 そこには先ほど拾っておいた無数の武具が取り付けられており、移動を行う俺の代わりに魔物の排除を行っている。

 西と東で魔物を処理しており、中央から突破する魔物はあえて逃していた。
 それらはネロとリンカによって屠られていたのだが……間もなく時間だ。


「止めた方が評価に入るしな……やるか」


 リラと共に使ったクリスタル製の短剣を準備し、身体系で駆け抜ける。
 すでに一度は向かった場所なので、制限中でも瞬脚スキルで一気に飛ぶこともできる。

 だが、魔物たちが即座に阻む。
 短剣を刺そうとする俺の行動を防ぎ、逆に一撃与えようとしてくる。

 しかし“死者之衣”がそれを捌く。
 ネロと違って死霊を操らない俺は、擬似魂魄をこの魔法の触媒として使っている。

 そして、その擬似魂魄とは『死者の都』の皆さま方の情報を書き込んだものだ。
 そのため、俺以上の動きで魔物たちを屠りながら道を切り開いてくれている。


「俺が本体というより、こっちがメインな感じがするけど……まっ、終わりよければすべてよしとはまさにこのことだ」


 召喚陣の上に立つと、クリスタル製の短剣で刺し貫く。
 するとパリンッという甲高い音と共に、陣は砕け散る。


「……さて、リンカの様子を見に行くか」


 たまに破裂音とかがするし、爆炎が噴きあがっているのだが……大丈夫だろうか?



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