AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者とクラン設立 中篇



「まずは、状況を理解してほしい。俺は面倒事に巻き込まれて、一度でも死に戻りをすれば二度とログインできない状態にある。別に死んだら死に戻りするわけじゃないから、アルカの魔法バトルはウェルカムだけどな」

「……ふんっ」

「話を戻すぞ。今もスキルで運営(神)からどこにいるか分からないようにしている。イベントに参加する時も、俺だとバレる決定的な証拠だけは残さないようにしているが……今回のイベントは不味い」

「「クランだから?」」


 オブリとユウが同時に訊いてくるので、肯定を示すように頷く。
 そう、クランはシステム上、あちら側にもバレる可能性が高いからな。


「言うのもアレだが、お前らってチート能力の持ち主だからな。迷宮イベントで理解してくれていると思うが、本気になれば間違いなく上位に入る……別に止める気はないぞ、その方が面白いし」


 クランメンバー(候補)たちは、その辺をしっかりと認識しているのだろうか?
 この場に居る者たち全員、ある程度祈念者からも覚えられている有名人であることを。

 有名クラン『ユニーク』からは──『極光の断罪者』ことユウ、『無限砲台』ことアルカ、職業【聖女】のセイラと【科学魔法】を扱うノロジー。

 野良の二人組として活躍する『吸血姫』ことティンス、『妖聖王女』のオブリガーダ。

 ハーレムクランの『黒勇者』シャイン、ソロでも上位の『召竜姫』イア、『天魔騎士』ペルソナ。

 眷属という意味では、他にクラーレなども含まれるが……彼女には基本、『月の乙女』として活動してもらいたいので、ちゃんと言い聞かせておいた。


「お前らは俺にかしずく必要なんてないし、そもそも命令を全部訊く気なんてないだろう? あくまでメリットがあるから眷属になっている、そういうヤツの方が多いし」

「お、俺は……!」

「正座していなさい。そこのTS勇者はさておき、アルカなんかは分かりやすいよな。観ての通り、殺す気満々だし」

「何よ、何か文句でもあるの?」


 何もないので、不敵な笑みを浮かべる。
 大半の者から、なぜか蔑みの視線が……いやいや、間違ってないだろう?


「──まあつまり、このクランが目立つのは確定された未来と言っても過言ではない。それは確実に、上の目に入る……そうなると、間違いなく面倒事になる。それを避けるためにも、俺はただのヒラとして所属するんだ」

《あの……もしバレたら、どうなってしまうのでしょうか?》

「良い質問だ、ペルソナ。とある伝手から教えてもらった限りだと、だいぶ前にアナウンスされたイベント──『神敵討滅』が行われて、お祭り騒ぎになるだろうな。内容を簡単に言うなら、俺対世界のデスマッチ」

《あっ、覚えてます! 全然何にも無かったから、ただの誤報と言われていた……って、あれメルスさんなんですか!?》


 最終戦争とか、いかにもな結末を迎えてしまうことになるだろう。
 少しずつ、選ばれし者たちによって進んでいたグランドクエストも台無しだ。


「詳細は俺も知らんからさておき、俺を殺せば金銀財宝ざっくざくらしいぞ。まあ、その報酬よりも俺の創るアイテムの方が、性能はいいと思うけどな!」

「師匠、話が逸れてるよ」

「っと。そうだった、要するにだ──お前たちで適当なリーダーとサブリーダーを決めてくれ。メンバーまで調べられることは無いだろうから、所属はする。誰がリーダーでも、特に面倒な仕事は無いんだしな」

『…………』


 ナックルの例から分かるように、本当は面倒臭いことが盛り沢山だ。
 子供のオブリ、別クランのシャイン、そして俺を除いた全メンバーが対象の代表選択。

 ──平和にじゃんけんとかで決まるかな?


  ◆   □   ◆   □   ◆


「ねぇねぇ、お兄ちゃん」

「ん、どうしたんだオブリ?」

「どうしてお姉ちゃんたちは、あんなことをしているの?」

「……本当、どうしてだろうな」


 現在、俺たちは『闘王技場』に来ていた。
 観戦席から見下ろす舞台の上では、乙女たちが激しい攻防を繰り広げている。


「じゃんけんじゃダメだったのかな?」

「あいこが続いていただろう? アイツらもオブリも、レベルが高すぎてじゃんけんの手がどれかが分かるようになっているんだ」

「……そうなの? でも、前にティンスお姉ちゃんとやったときはすぐ私が勝ったよ?」

「それは、きっとオブリが凄いからだな」


 ティンス、勝ちを譲ったんだな。
 連続あいこの要因として、絶対に勝ちたいという意志が能力値が示す最大のスペックを発揮しているという説が挙げられる。

 なんてことを考えていると、同じく参加を免れたシャインが質問をしてきた。


「ご主人様、いったい誰が勝つでしょう?」

「正直誰でもいい……が、対外的なことを冷静に考えれば、『ユニーク』の誰かがやるのがいいと思うぞ。独立して、女の子たちだけでクランを始めた、ぐらいの認識にさせるのがちょうどいいだろうし」

「具体的にはどのような構成をお考えで?」

「ユウかノロジーに任せればいいとは思うんだが……二人とも、普段が大変だしな。正直誰でもいいと思う。心の底からやりたいと、そう思ってくれるなら」


 ただ、代表者は面倒だからな。
 一番いいポジションであるサブリーダーの座を、求めあっているようだ。

 シャインがやけに質問を繰り返してくる。
 リア充だからか『よいしょ』の乗せ方も上手く、何よりオブリが居るので手酷く扱えずに俺も答えていた。

 ……計算だったら、本当に恐ろしい。


「──さて、オブリ。終わったら連絡してくれないか?」

「お兄ちゃん、用事?」

「ああ、ちょっと野暮用ができてな。悪い、少し出かける。シャイン、十分経ったら強引に止めてといてくれ。そこで全員倒せたら、ご褒美をやるよ」

「お、お任せあれ! 必ずや、やり遂げてみせましょう!」


 やる気満々なシャインと、笑顔で手を振ってくれるオブリを見る。
 それから闘技場で戦う少女たち……彼女たちのためにも、足りない要素を集めよう。



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