AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と決闘祭 その12
「──お疲れ様。いやー、ますたーも頑張ったね……私が誘導した通り、太陽を直接消そうとすると思ってたよ」
「師匠、そんな危ないことをさせようとしてたの? 今なら……断罪できるかな?」
「あははっ、無理無理。にしても、ユウもずいぶんと追い詰められていたね。もう少し使えるものを増やした方が良かった?」
「……にしても師匠、ずいぶんとその可愛い姿が似合っているよね。女装の才能とかそういうレベルじゃなくて、もう本当の女の子みたいだし」
……負けました。
どうにか“太陽顕現”を解除することには成功しましたが、そこで魔力が尽きた結果、そのまま焼け死に生命力が0に。
意識が一度失われ、目覚めたときには舞台の外へ飛ばされていました。
もちろん、ユウさんが優勝者として歓声を浴びていました……わたしにも少しあったのが嬉しかったです。
その後、三位決定戦や前大会優勝者とユウさんとの決闘、表彰式がありました。
わたしも準優勝ということで景品を手に入れます……そして今、もう一つのご褒美を。
「スキルが進化しないぐらいには、才能が無いみたいだけどね。偽善者がいくつもの顔を持っているみたいに、私の本当の姿もいっぱいあるってことだよ」
「偽善者か……師匠っていつもそれを言うけどさ、『ユニーク』全員助けているし、どこら辺が偽善なの? 固有スキルだって立派な報酬だと思うんだけど」
「あー、あれね。あの頃は『侵蝕』とかそういうのに気づいてなかったし、知らぬ存ぜぬは無効って気でいたよ。自覚してやるようになったのはますたーと会ったとき、まさかシガンが持っているとは思わなかったけどね」
名前が出てきたシガンですが、わたしを残して他のメンバーたちとギルドハウスでお祝いの準備をしているそうです。
準優勝、回復主体の支援職であるわたしが辿り着くなんて本来ありえない功績。
みんながそれを祝ってくれる、あとがとても楽しみです。
しかし、その前に……聞かなければなりません──メルに、メルスの秘密を。
「メル、ユウさん」
「ますたー……ううん、この場合は普通に呼ぶ方がいいのかな? クラーレ、よく私が用意した試練を乗り越えたね。ユウに勝てないのは、これから話すことに関係あるから仕方ないと思ってね」
「そうだよ、クラーレちゃん。僕もアルカも他のみんなも、クラーレちゃんと違って、雑に育てられた結果こんな風になったんだし」
「ユウ……とりあえず黙ろうか」
メルの輪郭がぶれ、体が淡い光を包まれると──その姿は女の子から男のモノへ。
現れたのは、メルの本当の姿……メルスはユウさんの頭に手を載せました。
「誤解されそうだし、このままだと二人で愚痴を語るだけになりそうだろう。ああ、この姿に戻るのは、クラーレがメルへの感情を変えないようにするための配慮だ。こっちの方が存外に扱えるだろう?」
「……そうでもありませんが、たしかに言いたいことが言えそうです。メルス、教えてもらいたいことがたくさんあります」
「結構話したはずだけどな。まあいいや、まず知りたいのは──これだろう?」
「……なんですか、それ?」
メルスが取りだしたのは、真っ黒な拳銃。
悪魔のレリーフなんかが彫られた……控えめに言ってカッコイイと思える銃です。
しかし、それがどういう関係を……と思っていたのですが、すぐにそれは起きました。
先ほどのメルスのように淡い光を放った拳銃は、その姿を──女の子に変えたのです!
「ごしゅじんさま、何か御用?」
「グラ、いきなりで悪いんだがちっちゃい姿で獣化してくれ。あと、少し撫でられても我慢してくれよ……そっちで目を輝かせているヤツがいるから」
「はーい!」
再びその少女……犬耳を持つ獣人の少女が淡く光ると、今度は二足歩行から四足歩行の姿となりました。
そしてそれは、わたしにはとても見覚えがあるモノで──
「ねぇ、師匠! この娘、貰っていい?」
「分かってて言っているだろう。俺が眷属を手放すと思うか? むしろ、お父さん並みに立ちはだかるからな」
「ぶー、ケチだなー師匠は。ねぇねぇ、グラちゃんって言うんだよね? 師匠もこう言っているし、まずは撫でさせて!」
「わんっ!」
頭の三つある、いわゆるケルベロス。
その子供版みたいな可愛いワンちゃんは、ユウさんを誘導するようにここから少し離れた場所へ向かいました。
残ったのはわたしとメルス。
ユウさんも分かったうえで、この場から退出してくれたのでしょう。
「まずはな、俺の個有スキルについて説明しなければならない」
「固有スキルですか?」
「違う、個有だ。分かっている習得条件は、SPを999まで溜めること。で、これは文字通り望むスキルを手に入れられる……俺が手にしたのは、眷属を作るスキルだ」
そんな情報、聞いたことがありません。
SPが祈念者特有のシステムである以上、この世界の人々は知らないこと。
つまり、自分たちでそこまで辿り着かなければなりませんが……そもそも、999Pなど誰が集められるのでしょうか?
「先に言っておくと、だいぶズルいぞ。俺はスキル習得が全部5Pで済んでたし、成長速度も異常だ。だから始めて二ヶ月もすれば、すぐにそこまで辿り着いた」
「……チートですね」
「ああ、俺はチートだと思っているよ。ただまあ、そうじゃないって言う奴らも居てな。その考えを改めたわけだが……そういうところも含めて、今から説明するよ」
「お願いします」
自分でも言っていることが意味不明な気もしますが、それぐらい重要なことです。
教えてください、メルスがどんな人であるかどうかを。
SIDE OUT
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