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山田 武

偽善者と自己紹介 その38



 夢現空間 居間


 あれから何日かが経過した。
 舞台が広かったため、『かぐや姫』の世界は纏め上げるのも一苦労。

 ただ、もともと代表である帝がため、その辺りの面倒事を押し付けておけばすぐに解決することができた。

 まあ、その際にいろいろと揉めに揉めたわけだが……そこは気にしなくとも問題ない。
 最終的には統治はそのまま、閉ざされた世界の状態を理解してもらった。

 ちなみに危惧していた問題として、まったく出てこなかった五人の貴族がどうなったのかというものがあったが……普通に生きていたので、ほっと一安心をしたりもしたぞ。


「……月の民、か。君たちの世界では、そんな場所にまで人族が生息しているのか」

「赤色の世界にも月は有っただろう……そこには同じ種族が居ないのか?」

「グレッドの月は燃えている。あそこに人が住む場所なんてないよ」

「ってことは、世界によっては済んでいる場所もあるかもしれないのか……その顔、また言わない顔っぽいな」


 情報を出し渋るのは神族の定番なので、今さら気にすることでもない。
 言わないというか言えないというか、いずれにせよそれ以上の情報は出てこなかった。


「今も存在しているか、それは不明だがな。前にミラさんから貰った資料には、月に都があることは判明したんだが……それが過去の遺物なのかどうか、それが不明だし」

「そうかい……」

「まっ、それはどうでもいいけどな。とりあえず今は……これを始めよう」

「君はこれをやることに、どういった意義を見出しているのかい?」


 なんだかそんな根本的な質問をされてしまう……訊いてくれるヤツがいないからな、だいたいのヤツはノリで答えてくれるし。


「前回のアレを見ただろう? つまり、そういうことだ」

「なるほど、それぞれを知るために必要なことというわけか。分かった、私も協力させてもらおうじゃないか」

「助かるよ──それじゃあ、張り切っていきましょうかー! 第三十八回、クエッションターイム! 本日のゲストはこの御方……カグちゃんと一心同体の神様、カカ様です!」

「うん、よろしく頼むよ。……カグの素晴らしさを語るためにもね」


 うん、いつの間にやらずいぶんとカグが大好きな邪神になったものだ。


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「問01:あなたの名前は?」

「カカさ」


「問02:性別、出身地、生年月日は?」

「性別はとりあえず女、出身地と生年月日はそうだね……カグも私も調べたことが無いから、分からないね。なので、そこはカグと同じにしておいてくれ」


「問03:自分の身体特徴を描写してください」

「カグと逆さ。黒色の髪に、ほんの少し火を体現した赤色が混じっている。あと、カグと違い私が表に出ている時は少しだけ髪が上に上がって揺らめくよ」


「問04:あなたの職業は?」

「カグの職業を共有しているよ。私自身には職業のシステムは適応されないからね」


「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」

「自己犠牲が強い……らしいね。私としてはただ、自分にできることを精一杯やっているつもりなんだけど。君も分かるだろう?」

「いや、全然。死なない自信があるからやっているだけで、俺は……って、それについてはどうでもいいだろう」


「問06:あなたの趣味、特技は?」

「カグの動向を見届けることさ。世界をどう生き、何をするか……今はそれが、とても楽しいよ」


「問07:座右の銘は?」

「特に無いけど……ああ、あれだね。君たちの世界で言うところの『カグ命』、だよ」

「……いやまあ、分かるけどさぁ」


「問08:自分の長所・短所は?」

「さっきの性格の部分だね。私なりにやれることはなんでもやり抜くつもりだけど、どうやらそれが他にはあまり好まれないようだ」


「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」

「好きなものは赤色、嫌いなものは……白、だね」


「問10:ストレスの解消法は?」

「ストレスは感じないね。そも、感じたことがないんだ」

「……それ、大丈夫なのか? リオンは普通に感じていたし、異常じゃないか?」

「かも、しれないね。けど、それは昔の話。今はカグのお蔭で安寧を得ているよ」


「問11:尊敬している人は?」

「ちょうど話題に出たリオン君だね。聞けば私よりも酷い状態らしい……うん、お察しするよ。そんな中、それでもよく頑張っていたと褒めたくなる」

「そうしてやってくれ。本当に喜ぶからな」


「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」

「カグが瞑想をしてくれた時間だね。私も、カグとお話をするのは楽しいからね」


「問13:この世で一番大切なものは?」

「カグさ。私を庇い、救ってくれた……彼女こそが、今の私を形成したすべてだよ」

「ちなみにカグはなんて?」

「……『みんなを大切にしないとメッ!』だそうだ。もちろん、一番ではなく二番目に大切なんだがね」


「問14:あなたの信念は?」

「カグの信念を叶え、立派なレディーとなる姿を見届けることだね。……正確には、その過程を手伝うことだよ」

「それ、信念じゃなくて目標だろう?」

「どっちでもいいじゃないか。私もカグも喜ぶ、一石二鳥な信念さ」


「問15:癖があったら教えてください」

「……私もカグと同じだね。無茶な時こそ璧な態度を取っている。これを通じて、カグも反省として生かしてもらいたいものだ。君の発言は、とても堪えていたからね」


「問16:ボケですか? ツッコミですか?」

「ツッコミだね……あと、カグはやっぱりボケの方が向いているよ」


「問17:一番嬉しかったことは?」

「カグが君たちと居ることで、楽しんでくれていることだね」


「問18:一番困ったことは?」

「……君が、カグがもっとも求めていることに応えてくれないことかな? 理屈では納得していても、やっぱり気になるね」

「…………なんのことかさっぱりだし、もう少し待ってくれ。なんのことか、俺にはさっぱりだけどな」


「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」

「カグの体に飲ませるわけにはいかないし、私が飲んだ感覚が伝わるわけにもいかないから飲まないよ」


「問20:自分を動物に例えると?」

「犬であろうと目指してはいるね。カグのために、できることをやるつもりだ」


「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」

「カグと同じく、心当たりはないね」


「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」

「転生を選んだこと、なのかな? そのせいでカグは……酷い目に遭った」

「その辺りは二人で決めてくれ。ただ、俺的にはそれあってこその出会いだと思うから、特に悪いこととは思わないぞ」


「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」

「カグの夢を叶えること」


「問24:自分の人生、どう思いますか?」

「人ではないが……この生は、カグと共にあることで意味を成しているのだろうね」


「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」

「君の言う通り、カグとの出会いが無くなるのは世界にとっての損害だからね……」


「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」

「カグの願いを叶えるために尽力するとしよう……どんな願いであろうと、ね」


「問27:何か悩み事はありますか?」

「カグが私を頼ってくれないことだね」


「問28:死にたいと思ったことはありますか?」

「転生する前だね……それこそ、世界を守るためにそのときは死を選んだよ」


「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」

「カグと同じ立場に立ち、同じ運命を共にしたかったね」


「問30:理想の死に方があればどうぞ」

「一度目は世界のため、そう思って死を選んだが……そうだね、二度目があるならばカグのためと喜んで死のうじゃないか」

「……で、カグの反応は?」

「もうカンカンだよ。けど、本当にそんな状況になったら間違いなくそれを選ぶだろう」

「なら、俺はそうならないようにあの手この手で邪魔をするだけだな」


「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」

「そうだね……カグ、こちらこそありがとうだよ。私は君のお蔭で、こうしていられる」


「問32:最後に何か一言」

「あとは……メルス、君のこともそう憎からず思っているよ」


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「はい、カットー! そう思ってもらえて何より、これからもよろしくな」

「……あんまり堪えてないね。もう少し、カグのときのような反応を期待していたんだけどね」

「あ、あれは……いろいろと不意打ちだったからな。あと、カカはそこまで関係を求めているわけでもないだろう?」

「ずいぶんな物イイだね。なら、良いことを教えてあげるよ」


 少しムッとしたようだが、すぐに表情を改めて俺の耳元で囁いた。
 それこそ、俺の思考が停止する発言を。


「私とカグは一心同体、差異はあれど同じことを思っている。想いだってそう……私の好きなものはカグも好き、そしてその逆も……言い方を改めよう、私は君をとても好ましく想っているいるよ」

「────」

「その顔が見れただけで何より。カグの布石が効いたようだね」


 笑って去るカカを、俺はただ見ることしかできなかった……その言葉の真の意味を、深く噛み締めながら。

 ──信じてもらえているのだと、カグと共に居るように……共に居てくれるのだと。



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