AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と迷宮神珠

月末の連続更新です(01/12)
……だいぶ追いついてきました
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 第四世界 天魔迷宮


 俺が最初に造った迷宮ダンジョン、その最深部。
 三層目であるそこには、巨大な宝珠が置かれている。


《これが……神珠オーブですか?》

《らしいな。それと──これ、どっちも星海に関する迷宮システムを解放できるって解析結果が出ていてな。全迷宮に同期させたいのと、この神珠を使えるかどうかを試しにもらいに来たってわけだ》

《なるほど、承知いたしました》


 現在、俺はその宝珠に手を載せて思念を籠めている。
 そうすることで、中に秘められた意思とコミュニケーションが取れる……のだが。


《ところでレン、なぜ急にこのやり方がしたいって言いだしたんだ?》

《これがもっとも効率的に、主様マイマスターの伝えたいことが分かりますので。普段はともかく、本日のご用件はとても大切ということでしたので、この方法を取らせていただきました》

《……普段の会話も、俺としてはいいと思うけどな。ほら、思念のやり取りだと不信感とか、そういうのも入っちゃうかもしれないわけでさ……》

《主様は……そのような感情を、懐いておいでなのですか?》


 そんな風に言われてしまっては、言うべきことなど失われてしまう。
 レンの望む通り、そういった{感情}をいっさい抱かずに会話ができることを証明する。


《……ありがとうございます。では、話を戻しましょう。その迷宮神珠は、現在主様がお持ちなのですか?》

《ああ、何が起こるか分からないから、とりあえず次元魔法で隔離してある》

《その状態のまま、取りだしてください。迷宮の[解析]システムでどういった風に活用できるかを調べてみます》

《了解した》


 他者からの干渉を受け付けない、そんな状態にある迷宮神珠を取りだす。
 そして設定を一部弄くり、調べることはできる謎仕様にしておく。

 レンはそれに[解析]を行い、迷宮でしか調べられない情報を暴きだす。


《これは……ッ!》

《何か凄いことでもあったのか?》

《はい。迷宮神珠は神造迷宮の核であり、自動的に神気の生成も可能なシステムが搭載されています。また、全システムが初期状態ではありますが解放されています》

《たしか、初期は八つの機能があったよな。それが成長でちょっと増えて……最終的に何個あるんだよ》


 昔はできることも迷宮っぽいことだけだったが、そのときは持っていた【迷宮主】のレベルアップもあって、魔物の配置場所移動や念話機能なんかも使えたな。


《システムは主様の行動経験によって最適化され、一部は取ることができませんでした。ですが、迷宮神珠を取り込むことでそれらすべてをこちらでカスタムすることが可能となります》

《まあ、なんか凄そうだな……迷宮の設定もこっちでできるってことか。俺やカナタは迷宮に意志があるから似たようなことができるけど、そもそも普通は会話もできないから、何をやるにも設定が面倒だろうしな》


 そういった意味でも、俺は恵まれている。
 カナタ……というかコアさんの場合、転移してくるまで意思はあっても意志はまだ発露できていなかったらしい。

 だがレンの場合、すぐにそれが生まれた。
 その違いはきっと……{感情}を持っていたからこそだったのだろう。


《今の主様では上手く扱えませんので、すべて私に合わせたモノに……してもよろしいでしょうか?》

《ああ、気にせずやってくれ。俺がやりたいのは……まあ、[召喚]のカタログリストさえ、見れればいいんだけれど》

《そちらは主様の見やすいよう、変更を加えておきます。現在でも絞り込みが行えていましたが、システムが全解放されれば仮想召喚も可能となるでしょう》

《仮想召喚? なに、そのカッコイイの》


 話を聞くと、ホログラムみたいな感じで召喚した対象の姿を見れるらしい。
 種族共有のスキルやステータスも表示されて、それらを使用した姿も見れるんだとか。

 なぜそんな俺好みのヤツなのに、使用不可だったのか訊くと──召喚のし直しなどが条件だったかららしい。
 俺、基本出したモノは使っていたからな。


《──えっと、だいぶ話は逸れたが……とりあえず迷宮神珠は使っておいた方がいいってことで、いいのか?》

《……いえ、これはまた独自の迷宮として使用した方がよろしいかと。これもまた一つの個を確立し、必ずや主様のお役に立つかと》

《うーん、それって確証があるわけじゃないけど、レンが取り込んだ方がいいと思う。それの方がレンのためにもなるし、何より俺が喜ぶ……かな?》

《……よろしいのですか?》


 ふむ、不安六割の期待四割と見る。
 普段はまったく働かない俺のセンサーが、なんとなくレンの思念を読み取ってそう感じさせた。


《俺にとって、レンは大切な眷属だ。その戦力増強の手段があるのなら、どんなことでもやっておきたい。そもそも、これまでも拾った迷宮核はレンに渡していただろう? レンが取り込んだ方が、もっと強くなれるさ》

《……分かりました。では、次元魔法の結界の解除をお願いします》

《あいよ》


 そうしてレンは迷宮神珠を取り込み、新たな力を手に入れる。
 そして……本人(核)もまた、迷宮神珠へと進化するのだった。



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