AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と狂邪真竜
『グロォオアアアアアアアア!』
「……あれ、いつもより知性的だな。邪気のお蔭か?」
「主様、生命体としてありえぬほどの力を秘めておるようじゃが? ……あれは、存在して良いのかのう?」
「まあ、いいんじゃないか? 名前は……凄いな、『狂邪真竜』って言うらしい」
いかにもな名前、そして相応の格。
目の前で雄叫びを上げるその竜は、まさにドラゴンという存在の恐ろしさをその身で体現する禍々しさを見せつけている。
「ソウ、戻るのは無しな」
「それぐらいは構わぬ。じゃが、その……ご褒美を所望したいのじゃが」
「レベルも250を超えているみたいだし、内容にもよるが別に良いぞ」
「そ、そうか! ならば、早々に片を付けねばならぬのう!」
どうせ被虐に関する内容だろうし、予め割り切っておけばいいだけの話。
うきうきしながら鱗を引き剥がし、それを武器に作り変えているソウを眺める。
「哀れな竜よ、主様の無邪気な実験ゆえにそうなったことに関する憐みは持つが、その力に溺れるさまは関心できぬのう」
「おーい、俺が悪いみたいに……あっ、そういえばそうだったな」
「このように、主様は多少抜けているところはあるが……力には溺れておらぬよ。さて、元の死骸に戻ってもらおうか」
『グォオオオオオオオ!』
片や人間サイズの白銀の龍、片や高層ビルほどの暗黒の竜。
映画などでありそうなマッチングだが、そうではないこともある──対等以上に、前者が強いということだ。
「“龍乃飛翼”」
背中に龍の翼を生みだす魔法なのだが、人化した龍が行使する場合のみ特殊な効果が追加される。
人化の部分解除を行えない龍の背に、本来の姿の一部を魔力の塊で再現するのだ。
具体的に言うのであれば、ソウの背中に白銀色の翼が生みだされた。
「これ、羽ばたこうともがくな。沈んでおくのじゃ──“重叩”」
『グゴォオオオオ……』
ソウが鱗を以って生成したのは、白銀色の巨大な大剣。
刀のように鋭さで斬るのではなく、その厚みで叩き付けて押し切るタイプだ。
その質量を生かした“重叩”は、剣でありながら斬るのではなく叩くことを目的とした武技である。
叩かれた衝撃で意識が軽く飛んだのか、何やら唸りを上げていた狂邪真龍。
ソウはその背中に飛び乗ると、大剣に力を籠めて振るっていく。
「気絶はせぬか……だがまあ、この間に斬らせてもらおう──“火炎斬”」
『ギャァアアアアアア!』
「……うわぁ、一方的な蹂躙だなぁ」
翼を切断し、精神エネルギーを変換して生みだした炎によって焼き切る。
傷口は癒えず、龍の再生能力を以ってしても回復が阻害されるようになった。
俺の感想も致し方ないだろう。
眷属たちが解析を済ませて情報がだいぶ集まってきたのだが、どうやらあの竜は位階が13はある魔物だったらしい。
普通の人族が相手だったなら、英傑たちが力を合わせて討伐する……なんて物語が、一本や二本できるような魔物だったのだ。
だが運悪く対するは、位階が元から15なのに人族の技術まで体得した、成り上がりの超越種……神すら倒すことができる古の龍が相手では、その強さは薄れてしまう。
「主様の世界の物語であれば、能力の一つや二つ使わせるのが道理というものじゃが……それをさせて得をすることなど、何一つも無いからのう──“四肢連斬”」
『────ッ!』
もう声にもならない絶叫が上がる。
本来ならば対人用の武技も、超高速で竜の四肢に向かうことができる身体能力があれば使うことが可能だ。
四つの点目がけて描かれる軌跡は、それぞれの場所で朱い華を咲かせていく。
一つ、また一つと華は咲いていき、点と同じ数である四輪の華が開花する。
そしてそれと同時に、ドスンと大きな音が鳴り響く──それは支える物を失った狂邪真龍が、地面に胴体を打ち付けた音だった。
「主様、トドメまで刺すかのう?」
「いや、それはいいや。生かしたまま、少し生体レポートを取っておきたい──ネロ、これ要るか?」
「ぜひにも! 吾は錬金術は修めておらず、こういった分野には少し疎くてな。うむ、死亡から蘇った場合、魂魄はどうなっているのか……すぐにでも調べておきたい!」
「とまあ、そういう理由だ。使えなくなったら、『狂愛包丁』で解体してアイテムを剥ぐとしよう」
便利なスキルやアイテムが手に入るかもしれないし、本人(龍)以外がみんな幸せになれる結果ではないか。
……蘇った時点で土下座でも命乞いでもしてくれていたら、未来は変わっていたけど。
閑話休題
ネロが自身の部屋に死にかけの狂邪真龍を運ぶということで、いったん解散となった。
一部の眷属が運搬を手伝い、この場に居る理由も無くなったからだな。
「さて、ソウ。ご褒美ってなんだ? 俺も覚悟はしておいたから、荒縄でも蝋燭でも今回は受け入れてやろう」
「そ、それはなんと魅力的な……じゃ、じゃが、今回はそうではない」
「マ、マジか……ソウなのに、ソウなのに他のことを所望するのか!?」
「う、うむ……一度、主様と共にやってみたいと思っていたことがあってのう。それを今回の褒美として、行ってもらいたい」
そして、ソウはその内容を俺に言い……俺もまた、それを受け入れた。
とりあえず、準備をしないと……最悪、死ぬかもしれないし。
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