自称偽善者は電脳異世界に揺蕩う(旧:AFO ~(自称)偽善者のVRMMO(?)記~)

山田 武

偽善者とレイドラリー後篇 その07



 炎の剣が俺の眼前まで近づいていた。
 その瞬間、スキルによって加速した思考はまだイケると告げて──

「──“剣器創造クリエイトソード吸収剣アブソーブ”!」


 即座に生みだした剣に属性を吸わせる。
 凄まじい勢いで内部の魔力が消費され、削られていくのが分かった。

 だがそれでも、次の魔法を間に合わせる。


「──“対滅剣ニュートライズ”!」


 かつてナースと戦った黒衣の剣士……を真似した祈念者プレイヤーが振るった、二振りの魔剣。
 俺が生みだした二振りの剣は、彼の魔剣を解析した術式回路を再現する魔法だ。

 先ほど男が使った“質量増大マスアップ”は、その名の通り質量を増すことができる魔法である。
 エネルギーは『E=mc2』と表せるように、それだけで威力を上げられるのだ。

 先ほどの炎も含め、発動している力そのものを吸い取ることができるのが彼の魔剣。
 それをもう一つの魔剣が運用し、刻んだ回路が示す力──対消滅を発揮させる。


「ッ……! これでもダメなのか」

「ちょっとビックリしたかな? だけど、もうフィナーレといこうか」

「…………お前、本当に従魔か?」

「ますたーは私を従えているよ。そして、それに私は不満はない……それだけだよ」


 意味深っぽく言ってみるが、どう受け止めるか分からないな。
 リーダーであるこの男の目的が復讐なのは分かるが、彼はそれなりに考える頭がある。

 本気じゃないんだろうな……あくまで付き添いというか、まさにゲーム感覚というか。


「──“剣器創造・削源剣カーテイル”」

「ほぉ、三本目は浮くのか。ならば、刺さっている剣を使わないのはなぜだ?」

「理由なんてないよ。こっちだって、もう使わないから刺しておくからね」


 言った通り“対滅剣”を地面に突き刺す。
 あくまで双剣までを最大として、それ以上は使わない……まあ、意味なんてないぞ。


「先ほど、お前は転移して回避しなかった。それに、隙を見せたのに転移しなかったときもある。そこはちょうど、お前が一度転移してきた場所だった」

「…………」

「お前の“二剣入替ソードスイッチ”とやら、もしや一度しか使えないのではないか?」

「…………」


 答えは否、使い放題である。
 ただし、俺が剣を持っていないと転位できないというのが先ほど使わなかった理由だ。

 途中までは惜しかったんだよな……転位しなかった理由も、ただ殺す気がなかっただけなんだから。


「ふっ、沈黙は肯定と判断するぞ」

「……さて、どうだろうね」

「まあいい、これが最後になるか。おい、最後に景気よくやってくれ」

「──“業炎投槍バーンジャベリン”」


 すっかり忘れていたもう一人。
 隠蔽も使ってこっそり用意していたのであろう数十本の炎の槍を、いっせいにこちらへ飛ばしてきた。


「これ以上は使わせない──投剣!」

「がふっ」

「そして……これならこっちでも斬れる!」


 情調もへったくれもなく、まず吸収剣を魔法を発動したばかりの術者に投げて射抜く。
 生命力もエネルギーの一種なので、回復する間もなくそれを奪われた男は死亡する。

 炎と暴風の剣は折れたものの、まだ岩と重力の剣は突き刺さったままだ。
 それを抜いて合体させると、削源剣と同時に振るっていく。


「はぁああああああああ!」

「……今日は驚かされることばかりだ。ゲームやアニメみたいなことができるんだな」

「なんでも一度はやってみないと分からないものだよ!」


 鼓舞して奮わせた体を使って、次々と炎の投槍を処理していく。
 柔と剛、いなしと砕きを的確に行い──そのすべてを無傷で乗り切る。


「──“不可視射インビジブルショット”」


 その一瞬の隙を突き、男が放った弾丸。
 隠し持っていた小さな短銃が、武技の力で不可視の弾丸を撃ちだした。


「──“二剣入替ソードスイッチ”」

「……やはり、ダメだったか。当然か、この場には百もの剣があるのだからな」


 もっとも男から離れた場所に転位し、その弾丸を回避した。
 今の俺ならできると視てみたのだが、即死効果を持つ超高価な弾丸だったようだ。


「これが最後だよ──“三剣連鎖ソードチェイン”」


 俺が指定した三本の剣に、薄っすらと半透明な鎖が結ばれていく。

 その一本目は俺がすでに握っており、再び“二剣入替”を使って男に近づくとそのまま剣を振るいだす。


「一ノ剣──重岩剣」

「剣に……鎖?」

「はぁああああ──せいっ!」

「その程度で、この剣が壊れるものか!」


 さすがに“永遠種火”を宿した剣を無効化するのは、まだ難しかった。
 だが、これは三回攻撃の一回目……まだあと二回残っている。

 鎖で繋がった二本目の剣を──引っ張って掴むとさらに振るう。


「二ノ剣──隼敏剣!」

「二回攻撃がどうした!」

「気づいてないの? あなたの剣、もうそろそろ限界なんだよ」

「……ッ!」


 そこにダメ押しの二連撃。
 もっとも壊れやすくなっている部分に、叩き込まれた斬撃。

 もっとも、それで隼敏剣もドロドロに融けてしまったが……これで終わりだ。


「三ノ剣──削源剣!」


 最後は握っていたもう一方の剣。
 そこで“三剣連鎖”の効果が発動──これまでの二振りの能力も三本目が同時に行使することができる。

 質量を増し、二回攻撃ができるうえ──耐久度を削ることができるこの剣。
 何度も何度も剣戟を繰り返してきた男の剣も、さすがに限界だった。

 ──辺りに甲高い音が鳴り響く。


「これで終わり。続きはますたーたちが居る時にゆっくり聞かせてもらうよ」

「……わざわざすまない」

「いいよいいよ、私もますたーたちを呼ぶのにあなたたちを利用させてもらったんだからお相子だって」


 ニコッと笑顔を浮かべて縦に一閃。
 男は目を見開いた状態で、粒子となってこの場から消えていく。


「ヴィクトリー!」


 観客へ向けてそう叫ぶ。
 ……ちょうどいる、六人組の女子にもな。



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