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山田 武

偽善者とレイドラリー中篇 その18



 そして、迎えた最終日。


「なんだかもう、これがずいぶんと定着した行動になっている気がするなぁ……」


 はるか空の上から一丸となって挑むレイドバトルを観戦する俺は、ぷかぷかと浮かびながら辺りを見渡していた。

 観測は神眼を解放しているので、近くで観ているプラス俯瞰している気分だ。

 素晴らしきチートボディは、そうして観測した情報を眷属に送り届けることでさらに強くなることができる。

 この中に居るであろう主人公候補たちの活躍も、バッチリというわけだな。


「相手は『屍練の扉』……うん、ズルいね」


 そんな彼らが挑むのは、フィールドの中央にドーンと設置された巨大な両開きの扉。
 それ自体は攻撃をせず、延々と中からさまざまなモノを出すだけ……ただしボスを。

 おまけにボスをどれか一体でも倒さないと無敵状態で、倒したボスの位階ランクと討伐速度によって無敵解除時間が変化してしまう。

 雑魚のボスは倒してもすぐに無敵モードに戻ってしまうが、強いボスは倒しのに時間が掛かれば同じこと……祈念者たちの団結が今求められていた。


「懐かしの面々、みたいな感じなのが多いのかもねぇ……あの女の人も居たし」


 そんな中、それを行っている集団も。
 思い返すは先導……ではなく扇動する者。
 あれから一年は経っており、その腕にも磨きが掛かっている。

 あまり縁が無かった者ではあるが、祈念者の眷属が時折情報を漏らしてくれていた。
 いつの間にか一大ギルドのトップに君臨しているらしい……能力的にも納得だよ。


「名前はたしか…………キョウカだっけ?」


 そう呟いた瞬間、なぜか彼女がバッとこちらを向いた気がする。

 超高度に居る俺を観測できるとは思えないが、女の勘という超常的なセンスによるモノかもしれない。

 彼女が戦闘に集中しないと、崩壊してしまう前線もある……今は遠くに離れて、そっと無事を祈っておこう──“幸運付与エンチャントラック”。


「ん? あれはもしかして──候補か?」


 嗚呼、懐かしきかなフレイ君。
 背中に灯らせるは縁の炎、侍らせりしは五人の少女たち……って、五人?


「ハーレムフルパーティーかよ。いつの間にあんなに集めたのか?」


 そういえばシャインも、いちおう人数は最大まで集めていたなー。

 今やさらに増えて特殊な癖の女性の方々を受け入れるギルドになってはいるが、優秀なのは間違いないわけで……。

 それはともかくとして、新たに三人の女性がメンバーに加わっていた。
 そのせいか、あのときよりも炎の火力が上がっているようだ。


「そして他の候補者たちも……報告にあった通りの容姿をしているな」


 眷属が発見していた候補者は六人。
 フレイ君がまず一人として、それぞれの属性っぽいのに見事分かれた奴らが、この戦場でも活躍していた。

 緑色の青年は走り、周りを翻弄する。
 青色の少女は謡い、想いを届けていく。
 茶色の少年は造り、軍勢を指揮する。
 金色の少女は輝き、他者を導いていく。
 黒色の青年は包み、相手を恐怖へ誘う。

 それぞれが求められる役割が異なっているためか、誰も近くでは戦っていない。
 あくまで異なる戦場において、大活躍している……といった印象だ。


「幸いにして、門から『俺』は出てきていない。それをやるぐらいの鬼畜難易度だったら手伝おうと思っていたけど……下手なお節介は不要みたいだな。なら、何をするかな?」


 偽善者たる者、わざわざ求められずとも己の欲を満たすものである。
 先ほどやったように、魔法で支援するのがベストであろうか?


「あんまり目立たないように魔法を撃つのは難しいかな? ……あっ、そうだ!」


 それをやっても問題なさそうなヤツに、すぐさま回線を繋ぎ連絡を取る。


《カクカクシカジカ、ウマウマサンカク》

《……急に何よ》

《魔法を使いたい。けど、俺だとバレると面倒事になる。まだ見せたことのない魔法を撃つからサービスってことで、一芝居して》

《本ッ当に心の底からあんたの言うことを聞くのは嫌だけど……その新しい魔法とやらに免じて、今回はやってあげるわ》


 繋いだ座標へすぐさま飛び、さまざまな偽装工作をしてから地上へ降り立つ。
 ちょうどそこでは彼女──アルカが魔法で宣誓を拡声させていた。


「これからこの場に居るすべてを吹き飛ばし魔法を使うわ! 全員、できるだけ魔物たちから離れてちょうだい!」

《サンキュー、やっぱりアルカは何をやらせても一流だな》

《ばっ、ばばバカ言ってんじゃないわよ! それよりほら、さっさとその魔法とやらを見せなさいよ!》

《はいはい、了解しましたっと》


 巡らせていた魔力をくべて、より多くのエネルギーを手に入れる。
 回路内に高められたそれらを精練し、高純度となった魔力の塊を全身から解き放つ。

 まあ、手からやったり体の一部分から出すのでもよかったんだが……どうせ複数回分発動するので、一気に体外へ魔力を送り込んだ方が効率がいいのだ。

 とにもかくにも準備完了。
 大空へ舞い上がった、とある属性へ変換した魔力に名前を与える。


「──“災害喚起ディザスター流星雨メテオール”!」


 与えられた名のままに、魔力は形を成していく──生みだされるは次元の裂け目。
 高い魔力感知能力を持つ者だけが観測できる、時と空間を超えた概念の崩壊。

 そして降り注ぐ──無数の流れ星。
 どこからともなく現れたそれは、召喚者の意のままに魔物たちを殲滅していった。



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