自称偽善者は電脳異世界に揺蕩う(旧:AFO ~(自称)偽善者のVRMMO(?)記~)

山田 武

偽善者とレイドラリー前篇 その16



 日に日に成長するアルカは、どうやら人形使いとしての才能もあったらしい。


「あのさぁ、口以外思う通りに動かないんですけど……何かしましたか?」

「電気信号を止めてんのよ。ついでに神経も掌握したから、何もできないと思いなさい」

「マジですか……」

「まったく、師匠が変なことをするからこうなったんじゃないか。あんまりそういうことばっかりしていると、誰も近づいてくれなくなるよ」


 かつてシャインを操作した俺だったが、まさか自分自身も同じ目に遭うとは……人を呪わば穴二つ、因果応報とはこのことか。

 いやまあ、鎖で縛られても動けたので暴れた末、床の清掃を全身全霊を以って始めたのがアルカの気に障ったのかもしれないが。


「……ったく、そもそもどうして会話ができているのよ。今だって、全身が焼き切れる苦痛があるはずでしょ」

「慣れた。最初は相乗効果でかなり効いていたんだが……悪いな、俺って肉体しゅぞくだけは優秀になったからさ」

「チッ、化け物ね」

「よいしょっと……アイツらと居て思ったことだが、身動きが取れないってだいぶ嫌になるよな。だからそこだけはどうにかなるように、いつでも適応能力だけは働くようにしてもらったんだ」


 要するに──同じ攻撃は通用しない。
 さらに一定時間行っていた攻撃も、同様の原理で自動的に無効化できる。

 ビバ[不明]の能力──未知に適応することで、すべてを既知として対処するだけだ。

 すべての拘束術式も、糸を断ち切るようにプツンプツンと解れていく。
 どれもこれも凡人にして非才の俺では、決してどうにもできなかった術式である。


「今さらだが、二人は何を倒すんだ? これまで何人かとやってきたけど、一つとして俺が必要だった戦いとかないんだけど」

「そりゃそうだよ、師匠。初めから倒せるんだから、ついでに師匠をって誘っているんでしょ? 本当に師匠が必要なら、誰一人として師匠を呼ばないよ」

「えー、呼ばれて飛び出て解決するのが偽善者の役目だろ。その部下たるお前たちが、上司たる俺を必要なタイミングで呼ばないとかおかしいだろう」

「はっ、部下なんて絶対に嫌よ。力が欲しいから、こちとら悪魔以上に下劣なヤツに魂を売っただけじゃない」


 それはもしかして……いや、もしかしなくとも(アルカの主観では)俺のことなのか。
 人様に偽善を振り撒くこの俺を、悪魔以下の存在にするか──悪くはないよな。


「じゃあ、それでいいや。ユウ、アルカ、早く行って速く終わらせよう」

「はーい」
「……少しは堪えなさいよ」

「本当に傷ついてほしいのか? それで俺が敗北していいのか? 言葉という武器で俺を倒して、それで満足──ぶなっ!」

「はいはい、分かりました。負けよ、負け。ほら、ユウ。さっさと行きましょ」


 改めて、三人で神殿の内部で輝く魔法陣の上に立ち──転移する。
 なおその間、ずっと追尾する魔法に追われている俺でした。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 結局の所、今回もまた俺の出番というモノは存在しなかった。
 二人でありながら無双をする少女たちの様子を、ただ眺めることしかできずにいる。


「バランス取れてんだよな、アイツら。オブリとティンスはどっちも色物職染みてるから少し違うけど、こっちは両方普人フーマンだし」


 広く浅く、幅広い力を得ることができるのが普人族フーマンの持つ他種族に無い点だ。
 だいたい他の奴らは何かしらに特化し、相応の代償を背負っている。 

 それが普人にはない。
 それだけで、優れているとは言えないものの、劣っているとは言えない性質だ。


「ユウは……まあ、普通にエリート階級っぽいし、アルカは何かしらの天才。ただでさえ現実リアルでもそうなのに、そんな可能性が無限大みたいな種族に就いたら……そうなるわな」


 ボスが二体居るパターンだった。
 おそらくエリアボスではなくユニークかクエスト関係のボスなんだろうが、炎を纏う狼と氷を纏う狼が叫びを上げている。


「マルコシアス……だったっけ? なあ大悪魔、アレ知ってるか?」

《知らないよ。知っていても君に教えるわけがないじゃないか》

「つまり知っていると……協力感謝するよ」


 召喚はキツイので念話で確認して、その正体を確実なものにする。
 なるほど、ケチって鑑定をしていなかったが周りを使えばちゃんと分かるモノだな。

 大悪魔に訊ねたのはもちろん、相手が悪魔だと思ったから──纏っている炎も氷も、なぜか翼っぽくなっているし。


「まあ、とっくに知っているだろうから何も言わないけど……それならユウの独壇場になるのも当然か」


 ユウは【断罪者】。
 相手の業に応じて威力を増す攻撃の数々、それは生まれつきの悪に属する今回のボスにとっては最悪の相性かもしれない。

 ……まあ、元は天使らしいけど。


「そして、時間を稼がれたジ・エンド。無限砲台ことアルカさんによる魔法が──だから俺を狙うな!」

《──うっさい、変なことを言う方が悪いのよ!》

「あーったく。魔力を無駄遣いするなよな」

《必要経費よ!》


 二体のマルコシアス、そしてなぜか俺を狙うように放たれた強力な魔法。

 先ほどの拘束と同様に、複数の方法で似たような魔法を行使することで、その性能を相乗効果でさらに高めている。


「マルコシアスは合体してからが本番の、ボスだったんだろうけど……ユウが居るから業値を上げないために二体のまま。弱体化しているから特殊な能力が使えないでアルカの高火力で撃沈、みたいな感じか」


 いくらボスとして強化された魔物であろうと、人族の限界までレベルを上げたうえで固有スキルに目覚めた者が相手であれば敗北してしまう。

 せめて狼としてではなく、悪魔としての能力を充分に発揮できていれば……もう二、三分は闘えただろうに。


「結局、俺の出番は無かったな」


 遠くで手を振るユウと腕を組んでそっぽを向くアルカの方へ、手持無沙汰に向かう。
 ……何かしようとすると、アルカが魔法で威嚇してきたんだよ。



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