AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者とレイドラリー前篇 その02
連続更新中です(06/12)
===============================
──掲示板に情報が挙げられた。
この神殿跡のような遺跡には魔法陣が廃屋に隠されており、それを使うことでレイドバトル用のフィールドへ向かうことができる。
ただし、エリアボスであれば一度はその場所へ到達していること、レイドボスであればそれ以外の何かしら提示される条件をクリアしていなければな入場できないと。
初めは疑心されたこの情報だったが、すべては信用によって証明される──情報提供者の名はナックル。
祈念者のため、さまざまな形で力を課してきたギルドのトップの情報は……すぐに信じられていく。
◆ □ ◆ □ ◆
「ああ、やっぱり頼んで正解だったな」
耳を澄ませてみれば、『掲示板』やら『廃屋』という単語がよく聞こえてくる。
頼んだ通りに情報を挙げてくれたようで、祈念者たちもやる気を出したようだ。
「神殿を綺麗にするのはプレイヤーの仕事だが、それを早くやった集団は一番にイベントに参加できたという事実が残る。ちゃんと自分でやらせないと、達成感が残らないしな」
先ほどの“地形変革”で片付けることもできたのだが、あえてそれをしなかったのはそのためである。
補整された道を進むより、多少の苦労をした方が人は満足するのだ。
未だに効果が継続しているので情報を探れるのだが──どうやら主人公候補の一人が、凄まじい速度で神殿の一つを掃除している。
まあ、問題はそれからなんだが……情報通りなら、すぐに使えるようになるだろう。
「俺も一個ぐらいやるかな? けど、レイドイベントなのにソロ活動ってのは……よし、召喚しようか」
最近は黒よりも使っている白の魔本を取りだすと、表紙に魔力を流し込む。
すると対象を指定した召喚ではなく、条件に応えられる中で暇なヤツが召喚される。
……まあ、“召喚・眷属”をこっちでもできるようにしただけなんだが。
黒い方にもセットしてある魔法だが、アレにそれを使う理由ってほとんどないよな。
「──呼びかけに応じ、馳せ参じました……我が王よ」
「ああ、うん。レイドイベント挑むときに、レイドボスが出てきた」
「な、何か不都合があったでしょうか? では、すぐに帰還の準備を……」
「いや、問題ない。先に情報は流しておいたと思うが、ここはプレイヤーたちがかつてのレイドボスと擬似的な戦闘を行う場所だ。つまりは……そういうことだ」
現れた緑髪の鬼人に伝えておく。
今ではかつての姿などまったくないが、今回祈念者全員が求める相手でもあったからこそ──それを言っておいた。
「再現に魂魄は必要ない。ある程度似せた肉体にスキルを付与すれば、それだけでレイドボスは完成する……たしかリョク、お前もスキルを与えられたんだろう? たぶん、それがマーカーになっていたんだと思うぞ」
「そうだったのですか……あの頃は生き延びるため、神でも悪魔でもなんでも縋りつき、仲間たちを生かそうとしておりましたので、考えてもおりませんでした」
「まあ、良くも悪くもそれが俺との出会いなわけだ。俺としては特にそのことは気にしないんだが……今回のイベントで、もしかしたらかつてのリョクが出てくるだろう」
レイドイベント『草原の乱』。
かつてリョクがボスとなって、祈念者たちにもたらされた最初のイベントだ。
しかし、それは俺の(偽)善意によって防がれ、誰にも知られていない……たぶん。
「掲示板に動画が挙がっているかもしれないからなー。まあ、そこは別にどうでもいいんだけど、リョク……行ってみるか?」
「──ぜひに!」
「即答か。ちなみにだが、理由は?」
「……かつての自分との決別でしょうか。我が主と出会わず、あのまま他者を犠牲としたワレ自身と蹴りを付けたいのです」
とても真面目に言ってくるものだから、俺も応えざるを得なくなった。
すでに場所は把握しており、術式からどうすればいいかもすぐに分かる。
「よし、分かった。ならすぐに行くぞ──誰かが来る前に済ませておきたい」
「は、はい!」
「神殿内には誰もいないな……あと、対運営神用偽装結界準備完了──飛ぶぞ」
「あ、その……」
パッと手を掴み、次元魔法で転移する。
時空魔法でも空間魔法でもないのは、それくらい厳重なロックをしてあるからだ。
……少なくとも、祈念者でこれが使える奴は希少を通り越して絶滅種だし。
切り替わった視界には、ボロボロな神殿が映りだされる。
そして、床にはかなり古びた魔法陣が描かれていた。
「外には幻覚を施して、<畏怖嫌厭>でも付与しておけば問題なしっと……さて、綺麗にしますか──“地形変革”」
地面に落ちていた建物を構築していた石材が勝手に動きだし、元の姿に戻るように組み上がっていく。
足りない分は辺りの地面が加工されて用意されるので、時を戻すよりも完成が速い。
「完成っと。魔法陣の準備も良し、あとは設定をして転移するだけだ……リョク、準備はいいか?」
「は、はひっ!」
「はひ? ……まあ、準備はしておけよ」
かつて起きたことを考えれば、これぐらいのことは不思議でもなんでもない。
とりあえず放置して、さっさとレイドバトルの準備をしよう──
===============================
──掲示板に情報が挙げられた。
この神殿跡のような遺跡には魔法陣が廃屋に隠されており、それを使うことでレイドバトル用のフィールドへ向かうことができる。
ただし、エリアボスであれば一度はその場所へ到達していること、レイドボスであればそれ以外の何かしら提示される条件をクリアしていなければな入場できないと。
初めは疑心されたこの情報だったが、すべては信用によって証明される──情報提供者の名はナックル。
祈念者のため、さまざまな形で力を課してきたギルドのトップの情報は……すぐに信じられていく。
◆ □ ◆ □ ◆
「ああ、やっぱり頼んで正解だったな」
耳を澄ませてみれば、『掲示板』やら『廃屋』という単語がよく聞こえてくる。
頼んだ通りに情報を挙げてくれたようで、祈念者たちもやる気を出したようだ。
「神殿を綺麗にするのはプレイヤーの仕事だが、それを早くやった集団は一番にイベントに参加できたという事実が残る。ちゃんと自分でやらせないと、達成感が残らないしな」
先ほどの“地形変革”で片付けることもできたのだが、あえてそれをしなかったのはそのためである。
補整された道を進むより、多少の苦労をした方が人は満足するのだ。
未だに効果が継続しているので情報を探れるのだが──どうやら主人公候補の一人が、凄まじい速度で神殿の一つを掃除している。
まあ、問題はそれからなんだが……情報通りなら、すぐに使えるようになるだろう。
「俺も一個ぐらいやるかな? けど、レイドイベントなのにソロ活動ってのは……よし、召喚しようか」
最近は黒よりも使っている白の魔本を取りだすと、表紙に魔力を流し込む。
すると対象を指定した召喚ではなく、条件に応えられる中で暇なヤツが召喚される。
……まあ、“召喚・眷属”をこっちでもできるようにしただけなんだが。
黒い方にもセットしてある魔法だが、アレにそれを使う理由ってほとんどないよな。
「──呼びかけに応じ、馳せ参じました……我が王よ」
「ああ、うん。レイドイベント挑むときに、レイドボスが出てきた」
「な、何か不都合があったでしょうか? では、すぐに帰還の準備を……」
「いや、問題ない。先に情報は流しておいたと思うが、ここはプレイヤーたちがかつてのレイドボスと擬似的な戦闘を行う場所だ。つまりは……そういうことだ」
現れた緑髪の鬼人に伝えておく。
今ではかつての姿などまったくないが、今回祈念者全員が求める相手でもあったからこそ──それを言っておいた。
「再現に魂魄は必要ない。ある程度似せた肉体にスキルを付与すれば、それだけでレイドボスは完成する……たしかリョク、お前もスキルを与えられたんだろう? たぶん、それがマーカーになっていたんだと思うぞ」
「そうだったのですか……あの頃は生き延びるため、神でも悪魔でもなんでも縋りつき、仲間たちを生かそうとしておりましたので、考えてもおりませんでした」
「まあ、良くも悪くもそれが俺との出会いなわけだ。俺としては特にそのことは気にしないんだが……今回のイベントで、もしかしたらかつてのリョクが出てくるだろう」
レイドイベント『草原の乱』。
かつてリョクがボスとなって、祈念者たちにもたらされた最初のイベントだ。
しかし、それは俺の(偽)善意によって防がれ、誰にも知られていない……たぶん。
「掲示板に動画が挙がっているかもしれないからなー。まあ、そこは別にどうでもいいんだけど、リョク……行ってみるか?」
「──ぜひに!」
「即答か。ちなみにだが、理由は?」
「……かつての自分との決別でしょうか。我が主と出会わず、あのまま他者を犠牲としたワレ自身と蹴りを付けたいのです」
とても真面目に言ってくるものだから、俺も応えざるを得なくなった。
すでに場所は把握しており、術式からどうすればいいかもすぐに分かる。
「よし、分かった。ならすぐに行くぞ──誰かが来る前に済ませておきたい」
「は、はい!」
「神殿内には誰もいないな……あと、対運営神用偽装結界準備完了──飛ぶぞ」
「あ、その……」
パッと手を掴み、次元魔法で転移する。
時空魔法でも空間魔法でもないのは、それくらい厳重なロックをしてあるからだ。
……少なくとも、祈念者でこれが使える奴は希少を通り越して絶滅種だし。
切り替わった視界には、ボロボロな神殿が映りだされる。
そして、床にはかなり古びた魔法陣が描かれていた。
「外には幻覚を施して、<畏怖嫌厭>でも付与しておけば問題なしっと……さて、綺麗にしますか──“地形変革”」
地面に落ちていた建物を構築していた石材が勝手に動きだし、元の姿に戻るように組み上がっていく。
足りない分は辺りの地面が加工されて用意されるので、時を戻すよりも完成が速い。
「完成っと。魔法陣の準備も良し、あとは設定をして転移するだけだ……リョク、準備はいいか?」
「は、はひっ!」
「はひ? ……まあ、準備はしておけよ」
かつて起きたことを考えれば、これぐらいのことは不思議でもなんでもない。
とりあえず放置して、さっさとレイドバトルの準備をしよう──
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
221
-
-
439
-
-
32
-
-
0
-
-
353
-
-
2813
-
-
314
-
-
549
-
-
4503
コメント