AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と四色の使徒 後篇


連続更新中です(03/12)
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「──それで、02さんのこと以外にも何か話があるんだろう?」

「はい。本来であれば別の方に伝えてもらおうと思っていたのですが……せっかくの機会に、メルスさんと逢いたくて……」

「レイ……」
「メルスさん……」

「「「あー、ゴホンゲフンッ!!」」」


 俺とレイが見つめ合って数秒、すぐにレイの姉妹たちによって間に亀裂が生じる。

 引き裂かれた俺たちは「あっ」と息を互いに漏らし……よりいっそう、亀裂が広がる速度を高めてしまった。


「レイお姉さま、なに自分が一人で提案したみたいに言っているの!」

「す、少しぐらいイイじゃないですか!」

「……いいえ、こればかりはたとえレイお姉様であろうと譲れませんわ。これはワタクシたち全員で決めたことではありませんか」

「そーだそーだー!」


 そこから始まる姉妹による口喧嘩。
 物理的な説得になるまで放置しておくつもりだが……なんだかこんな展開を、前にも見たことがあるのは気のせいだろうか?


「たしか、シンクが会ったときだっけ?」


 少しずつ、{夢現記憶}を使わずとも思いだしてきた──うんうん、そういえばそんなこともあったっけか。

 あれから出会ったGMの数も増え、賑やかになってきたものだ。

 GMに目を付けられる、『プレイヤー』としては避けたいはずなのだが……この世界では、逆に感謝したくなる現象である。


「……さて、そろそろ止めるか」


 せっかくなのでと記憶を洗い直して時間を潰していたが……3VS1で不利な中、レイがかなり健闘しているらしく、まだ話し合いはそのまま続いていた。

 さすがに長いという判断により、介入が行われる──もちろん、『(物理)』である。


 閑話休題かっこぶつり


 本来であれば、神の使徒である彼女たちにダメージを与えることはできない存在。
 ましてや仕えているのは運営神、受肉体を創造してもらっている祈念者であれば、攻撃すべてが無効化されてもおかしくはない。

 だがまあ、俺は肉体を眷属たちによって改ぞ……りょうされているし、称号として神へ攻撃できる『神殺し』を所持している。
 それより何より、俺自身がいちおう上級の神なので──普通に干渉できるのだ。

 そんなこんなで、頭にできた小さなタンコブを庇う四人の美(少)女たちに、ここに偽善者を呼んだ理由を説明してもらう。


「──そうか、またイベントなのか……」

「はい。ただ、今回はこれまでのイベントとは異なり、完全に運営神様主導によって行われます。私たちにはアナウンスとトラブル対応の任が与えられていますが、おそらくはただのマスコット扱いかと」

「そうか……ちなみに、具体的に誰が主導かは分かっているのか?」

「ドミリオン様以外の運営神様が、全員可決のうえでリソースを行使しております……もちろん、スペーク様だけはドミリオン様との約束を守っておりますが」


 リオンもボッチではないので、親友ならぬ『神友』が情報を回してくれる。
 そのお蔭で、運営神云々の情報も手に入るようになったんだよな。

 ああ、ちなみに約束とはリソース──共有分の神気の使用を、一定以下に抑えるというもの……維持管理費って、結構重要だから。

 しかし、それでも一柱分……それだけではまだまだ、財政的な意味で苦しむだろう。


「だいぶ本気なんだな……それで、今回のイベントはいったい何をするんだ?」

「端的に申してしまえば──レイドです」

「レイド? もう海とか育成イベントのときとかにもやっていたじゃないか。ずっと前ならリョクとか過去の王都で」

「今回はそういったものではなく、運営神様が用意するレイドボスをどれだけ倒せるか、といったイベントになるようです。スペーク様の情報によりますと、エリアボスの強化個体は確実に用意されるそうです」


 まあ、たしかにアレって一度きりだよな。
 さらに言ってしまうと、北にあるエリアのボスなんて正式サービス開始日に屠られているわけだし……はい、俺が犯人です。

 当時の弱者たちができなかった強者との闘いを、今回のイベントで行えるようにした、というわけか……。
 なるほど、たしかに少しだけ面白そうな気がするよ。

 視線をレイからシフト、後ろの方で不満げな少女たちへ向ける。


「──三人は何か知っていることは?」

「……いや、情報源はスペーク様だけだし」
「レイお姉様の言った情報だけですわよ」
「全部独り占めしちゃったしね……」

『……ハァ』


 ため息を漏らす赤、青、緑の美少女。
 金髪の美女は胸の上あたりで指と指をつんつんとぶつけながら、「だってだって……」と姉の威厳ゼロで言っている。


「──だって……メルスさんのお役に立てているって思ったら……不思議と口が軽くなってしまって……」

「レイ姉ぇ、惚れた相手にはトコトン尽くすタイプだよね。メルメル、優良物件じゃん」

「……そうだな。その、レイ……いろいろ教えてくれて助かった……その、ありがとな」

「~~~~ッ!? う、うきゅぅ~~」


 可愛らしい声を上げて、顔を真っ赤にしたレイが倒れそうになる。

 この事態をフーカが褒めている辺りから察していたのか、シンクとアオイが予めスタンバイしており──しっかりと支えた。


「はいはい、お疲れ様。これで知っていることは全部だから、この情報をどうするかはメルス次第よ」
「何があるか分かりません……御武運を」
「メルメル、気を付けてね」

「ありがとう。そうだ、また今度いっしょに逢おう。そのときは俺──お前たちに伝えたいことが……」

『フラグ!?』


 短く単語だけでツッコまれてしまった……だがまあ、これまでも似たような約束を交わしてきたのだ。

 いずれ縁が役に立つ、とある少年の能力を思い返しながら……そんなことを想った。



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