AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と東の島国 その04
連続更新中です(06/12)
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井島の大きさは日本とまったく違った。
これが半分とか分かりやすい差だったならば、ハーフなガイアということで俺的に興奮できたかもしれないが……精々三分の二ぐらいの差しかない。
「さて、探索に行きますか」
今はメル(妖女)としてではなく、ただのノゾム(モブ)として活動中だ。
可能な限り魔力や気を抑えているため、すでに町から出ているが誰にも見つかっておらず、呟きも届いていない。
クラーレたちがログアウトしている時間。
現実とこちらとでは進む時間の長さが違うので、しっかりと一定時間ごとに帰還すれば余裕を持って活動することができる。
まあ、米を手に入れたことで、そろそろ自由行動をしようということになっていた。
町には転移門が無いが、お土産に一度だけ転移できる魔道具が貰えるらしいので、彼女たちもそのアイテムの完成を待つようだ。
そういう技術も井島独特のものなのか、それとも初期地点のある大陸──オルファ大陸から失われたものなのか、いずれは調査するだろう……眷属が。
「時代感は……江戸なのか? 鎖国はされていないが、そもそも船がなかなか来ないのが理由なのか外来の文化が少ない。魔物とか武技とか術とかで、外国語っぽい名前はあるって分かるけど」
井島独特の魔力運用法である『術』があれば、異なる形で日本よりも生活の質を上げることができるだろう。
式神の存在は確認できたので、少なくとも人材問題は無いだろうし。
「海道がここまで整っているってことは、たぶん街道もバッチリなんだろうな。将軍様がそういう政策でもやったのか? けど、この時代でも『術』の有用さが知られているからそういう在り方も変わっているのかもな」
昔は日本でも魑魅魍魎が活動し、それを陰陽師が……なんてことがあったようだ。
妖怪で言えば現代でも伝えられているし、江戸や明治にも存在が記された書籍がいくつも作成されている。
そしてこの世界では、魔力という動力源を素に今でも活動していると思う。
こちらも存在自体は迷宮の召喚システムに載っていたので、証明できたと言える。
さて、そんな人外相手に刀一本で勝つことができ……ないと言いきれないが、それでも同じく魔力を用いた『術』の方が、大衆でも勝つことができる可能性が高いだろう。
そうなれば、戦を行っていた時代から何かしらの変化が生じていてもおかしくはない。
織田さんが寺ごと燃えても逃げ出せたかもしれないし、開国を迫ってきた船を追いかすことも……不可能ではないのだから。
「町に居る時は食べ物の情報と召喚系の情報しか集めてなかったからなぁ。陰陽師が居るみたいな話は聞いたけど、その地位に関してはさっぱりだし」
人生なんて行き当たりばったりだ。
偽善者としての活動だって、それこそ他者同士の営みがなければ決して生まれないモノなので、第三者である俺は出会ったタイミングを見て偽善をするかしないかを決める。
赤色の世界でも適当に活動していたら、いつの間にか他の世界の存在を知ったようなものだし……結局のところ、適当に生きていてもトラブルメイカーは勝手にイベントを引き込むってわけだ。
「……あっ、魔物だ」
すべてが東洋風の魔物というわけではなくて、西洋風の造形をした魔物を現れる。
今回出現した魔物もまた、そんな感じ──プルプル揺れているそれはスライムだった。
「名前は『グラススライム』……緑色だから硝子じゃなくて、草なんだろうね」
この魔物は天魔迷宮の草原フィールドに配置しているので、ちゃんと覚えている。
グラススライム──『草粘体』はもぞもぞと動き、自身の周辺にある草を消化しては後ろ(?)に草の種を植えていく。
この魔物は受動的でとても大人しいので、こちらから手を出さなければただひたすらに草を食べては真っ新な状態にして再び植えていってくれる。
「けど、そこまで強い魔物には遭遇してないな……『月の乙女』たちは西洋風の魔物が暴れているのを処理したみたいだけど、まさか妖怪の大戦争とかやってるのか? それならそれで、偽善のし甲斐があるんだが……」
俺の予想は当たらない気がするし、そもそも会いたいと思ったら出会えないし会えてもトラブルがセットなのが呪縛の特典だ。
そういうのは主人公の役目だ……あの炎の力を使えば、俺も参戦できるのかな?
「って、ブラックな縁の炎しか出せないからなぁ。敵味方丸ごと焼いていたら、それこそ共闘して俺をぶっ殺そうと……いや、そっちの方が偽善者っぽいな! なんかこう、悪の視点から間を取り持つ感じが」
なんて炎同様にブラックなことを言いつつも、ひたすら歩を進めていく。
別に身体強化をして走ったり、空を飛んでいくこともできるが……それだとトラブルを見かける確率が上がりそうだし。
「やっぱりこういう時ぐらい、せめて他の町に着く間ぐらいはのんびりと──」
『だ、誰かぁあああ!』
「…………行くか」
こういうのは正義の味方の役目だろうが、残念なことに周囲にそんなご都合主義な存在が居ないことは瞬時に作動させた探索網の中に引っかからなかった。
まあ、網を掻い潜って出てきてくれるというなら、それはそれで楽しみになるな……。
さっそく行って、それを確かめよう!
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井島の大きさは日本とまったく違った。
これが半分とか分かりやすい差だったならば、ハーフなガイアということで俺的に興奮できたかもしれないが……精々三分の二ぐらいの差しかない。
「さて、探索に行きますか」
今はメル(妖女)としてではなく、ただのノゾム(モブ)として活動中だ。
可能な限り魔力や気を抑えているため、すでに町から出ているが誰にも見つかっておらず、呟きも届いていない。
クラーレたちがログアウトしている時間。
現実とこちらとでは進む時間の長さが違うので、しっかりと一定時間ごとに帰還すれば余裕を持って活動することができる。
まあ、米を手に入れたことで、そろそろ自由行動をしようということになっていた。
町には転移門が無いが、お土産に一度だけ転移できる魔道具が貰えるらしいので、彼女たちもそのアイテムの完成を待つようだ。
そういう技術も井島独特のものなのか、それとも初期地点のある大陸──オルファ大陸から失われたものなのか、いずれは調査するだろう……眷属が。
「時代感は……江戸なのか? 鎖国はされていないが、そもそも船がなかなか来ないのが理由なのか外来の文化が少ない。魔物とか武技とか術とかで、外国語っぽい名前はあるって分かるけど」
井島独特の魔力運用法である『術』があれば、異なる形で日本よりも生活の質を上げることができるだろう。
式神の存在は確認できたので、少なくとも人材問題は無いだろうし。
「海道がここまで整っているってことは、たぶん街道もバッチリなんだろうな。将軍様がそういう政策でもやったのか? けど、この時代でも『術』の有用さが知られているからそういう在り方も変わっているのかもな」
昔は日本でも魑魅魍魎が活動し、それを陰陽師が……なんてことがあったようだ。
妖怪で言えば現代でも伝えられているし、江戸や明治にも存在が記された書籍がいくつも作成されている。
そしてこの世界では、魔力という動力源を素に今でも活動していると思う。
こちらも存在自体は迷宮の召喚システムに載っていたので、証明できたと言える。
さて、そんな人外相手に刀一本で勝つことができ……ないと言いきれないが、それでも同じく魔力を用いた『術』の方が、大衆でも勝つことができる可能性が高いだろう。
そうなれば、戦を行っていた時代から何かしらの変化が生じていてもおかしくはない。
織田さんが寺ごと燃えても逃げ出せたかもしれないし、開国を迫ってきた船を追いかすことも……不可能ではないのだから。
「町に居る時は食べ物の情報と召喚系の情報しか集めてなかったからなぁ。陰陽師が居るみたいな話は聞いたけど、その地位に関してはさっぱりだし」
人生なんて行き当たりばったりだ。
偽善者としての活動だって、それこそ他者同士の営みがなければ決して生まれないモノなので、第三者である俺は出会ったタイミングを見て偽善をするかしないかを決める。
赤色の世界でも適当に活動していたら、いつの間にか他の世界の存在を知ったようなものだし……結局のところ、適当に生きていてもトラブルメイカーは勝手にイベントを引き込むってわけだ。
「……あっ、魔物だ」
すべてが東洋風の魔物というわけではなくて、西洋風の造形をした魔物を現れる。
今回出現した魔物もまた、そんな感じ──プルプル揺れているそれはスライムだった。
「名前は『グラススライム』……緑色だから硝子じゃなくて、草なんだろうね」
この魔物は天魔迷宮の草原フィールドに配置しているので、ちゃんと覚えている。
グラススライム──『草粘体』はもぞもぞと動き、自身の周辺にある草を消化しては後ろ(?)に草の種を植えていく。
この魔物は受動的でとても大人しいので、こちらから手を出さなければただひたすらに草を食べては真っ新な状態にして再び植えていってくれる。
「けど、そこまで強い魔物には遭遇してないな……『月の乙女』たちは西洋風の魔物が暴れているのを処理したみたいだけど、まさか妖怪の大戦争とかやってるのか? それならそれで、偽善のし甲斐があるんだが……」
俺の予想は当たらない気がするし、そもそも会いたいと思ったら出会えないし会えてもトラブルがセットなのが呪縛の特典だ。
そういうのは主人公の役目だ……あの炎の力を使えば、俺も参戦できるのかな?
「って、ブラックな縁の炎しか出せないからなぁ。敵味方丸ごと焼いていたら、それこそ共闘して俺をぶっ殺そうと……いや、そっちの方が偽善者っぽいな! なんかこう、悪の視点から間を取り持つ感じが」
なんて炎同様にブラックなことを言いつつも、ひたすら歩を進めていく。
別に身体強化をして走ったり、空を飛んでいくこともできるが……それだとトラブルを見かける確率が上がりそうだし。
「やっぱりこういう時ぐらい、せめて他の町に着く間ぐらいはのんびりと──」
『だ、誰かぁあああ!』
「…………行くか」
こういうのは正義の味方の役目だろうが、残念なことに周囲にそんなご都合主義な存在が居ないことは瞬時に作動させた探索網の中に引っかからなかった。
まあ、網を掻い潜って出てきてくれるというなら、それはそれで楽しみになるな……。
さっそく行って、それを確かめよう!
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