AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と東の島国 その02
連続更新中です(04/12)
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この東の大陸……というより島国の名前は『井島』であり『イートウ』である。
前者はこの島国に住む者から訊き、後者は本で読んだときに記されていたものだ。
まあ、そんな井島はどうやら騒動に巻き込まれているようだ。
訪れた少女たちは人々の依頼を達成し、少しずつ信用を勝ち得ていく。
「──へい、お待ち!」
「うわぁ、ありがとうお姉ちゃん!」
「ふふーん、お代わりならまだまだたっぷりあるからね。銭貨3枚で交換するよ」
ただ、この世界は通常のゲームのように定められた理に従う必要はない。
彼らの信頼や信用を得る方法は、別に一つではない……そもそも現実でもできることができない方が、おかしいだろう。
「お嬢ちゃん、料理が上手いんだねぇ」
「あははっ、味が旨いことも保証するから安心してね」
「ぷはっ! おうおう、こりゃあ一本取られちまったな!」
「お代わりは皿を盛って来てくれたら安くするからね──はい、一丁上がり!」
洒落に洒落を返し、器を差しだす。
中には海で獲れる魚をふんだんに使ったあら汁が注がれている。
米を取りに来たというのが目的なので、同じく味噌などが使えないための苦肉の策だ。
だが、俺は【生産神】に就いていたこともある男(現在無職)で、生産神の加護を賜った者だ(別の神から呪縛も)。
たとえ大雑把に作った料理でも、少々貧しい人であれば満足できる一品を作れる。
「さぁさぁ、どんどんじゃんじゃん作っていくからね! 無くならないようにたっぷりあるから、お代わりが欲しい人は何度でも並ぶがいいさ!」
『うぉおおおおー!』
「あっはっはっは……って、なんでますたーたちも並んでいるのさ?」
「……ズルいですよ。わたしだって、メルのスープが飲みたいです」
その言い方はどうかと思うが、とりあえずちゃんと並んでいた『月の乙女』一同にあら汁が入った器を提供する。
殺気立つ男嫌いのプーチですら、こういうときは大人しいんだよな。
「ますたーたちもお代わりは銭貨三枚──つまり3Y払ってね」
「全員分で18Yですね……ですが、日本円で三円分って安くありませんか?」
「私の作る料理は、あんまり材料費が掛かってないからね。これの代金って、結局私の自己満足でしかないんだよ。あとでこれのレシピは提供するつもりだし、私が欲しいのはお金というよりみんなの満足感だからね」
「メル……正直引きますよ」
まあ、タダだとありがたみが無いので適当に頭に浮かんだ3Yを要求している辺り、俺は偽善者なんだなーと思える部分だ。
決してタダじゃない、タダより高い物はないと疑われることもあるらしいし。
「まあまあ、ますたーたちもその恩恵にあやかっているんだから気にしないでよ。まだまだお代わりはあるよ──どうする?」
「……ください」
「はい、毎度ありがとうございます♪」
作り微笑を浮かべて返してもらった器に再びあら汁を注いでいく。
それを飲んだクラーレは、とてもホッとした表情を浮かべていた。
◆ □ ◆ □ ◆
交渉(胃袋)という方法を取れる者は、今回井島を訪れた中に俺しかいない。
なので俺はそのまま料理を通じてここの人たちと交流を深め、戦闘などの依頼を彼女たちが行うことになった。
……普通逆では? とか思っちゃダメだ。
人にはそれぞれ適性があるし、何より一定水準とかそういう問題を気にしないなら彼女たちもしっかりと料理が作れる。
ただ、その水準とやらを俺が過剰なまでに引き上げてしまったのが問題だった。
もともとは料理スキルをいちおう持っていた者も、俺という万能料理人が作る至高の一品たちを前に屈服してしまったのだ。
「まあ、生産班といっしょにゆっくりと生産スキルも磨いているみたいだけどね……できるだけ簡単にスキルレベルを上げられるレシピを用意しておいたけど、それでどうにかなれば…………大丈夫かな?」
ちなみに数日が経過している。
最初は警戒していた者たちも、毎日毎日香ばしい匂いを嗅がされるという拷問に耐えかね、クレームついでに料理を食べた結果次々と陥落していった。
今ではある程度値上げした俺の料理店に文句を着ける者などなく、少しでも値引こうと料理の素材を恵んでくる……なんだか俺が悪役っぽくなっている気がするが、俺が料理を決めるより、こっちの方が楽なんだよ。
「よう、メル──これでなんか作ってくれ」
「ふむふむ、どういう風に食べたいの?」
「そうだな……やっぱり焼いてくれ!」
「分かった。シンプルだけど美味い、そんな感じで調理してみるよ」
青年が釣ってきた魚をチラつかせ、ついでに銭貨を五枚並べてさっそく依頼してきた。
それを受け取ると、パパッと加護が赴くままに体を動かして内臓などを取り除く。
そして鮮度を失う前に口からS字になるように通し、塩を振りかけてから炭火で焼いていく……こういう部分でも加護が機能するため、最高のタイミングでそれぞれの作業を止めることができる。
「はい、出来上がったよ」
「うぉおお! やっぱりこれだな、もうメル無しじゃ俺はやってけねぇよ!」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、私はますたーたちに付いていく従魔みたいなものだからね。ますたーたちがここから去るなら、私も同じように去るだけだよ」
「従魔? ……ああ、式神みたいなもんだっけ? だいぶあのネーちゃんたちも信用されてきたし、米をこっちが売るまでは粘っていてくれるだろうよ」
このように、俺は『月の乙女』たちの好感度が上がるようにせっせと働いている。
そのうちお米も手に入るし、味噌とかも分けてくれるかもな。
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この東の大陸……というより島国の名前は『井島』であり『イートウ』である。
前者はこの島国に住む者から訊き、後者は本で読んだときに記されていたものだ。
まあ、そんな井島はどうやら騒動に巻き込まれているようだ。
訪れた少女たちは人々の依頼を達成し、少しずつ信用を勝ち得ていく。
「──へい、お待ち!」
「うわぁ、ありがとうお姉ちゃん!」
「ふふーん、お代わりならまだまだたっぷりあるからね。銭貨3枚で交換するよ」
ただ、この世界は通常のゲームのように定められた理に従う必要はない。
彼らの信頼や信用を得る方法は、別に一つではない……そもそも現実でもできることができない方が、おかしいだろう。
「お嬢ちゃん、料理が上手いんだねぇ」
「あははっ、味が旨いことも保証するから安心してね」
「ぷはっ! おうおう、こりゃあ一本取られちまったな!」
「お代わりは皿を盛って来てくれたら安くするからね──はい、一丁上がり!」
洒落に洒落を返し、器を差しだす。
中には海で獲れる魚をふんだんに使ったあら汁が注がれている。
米を取りに来たというのが目的なので、同じく味噌などが使えないための苦肉の策だ。
だが、俺は【生産神】に就いていたこともある男(現在無職)で、生産神の加護を賜った者だ(別の神から呪縛も)。
たとえ大雑把に作った料理でも、少々貧しい人であれば満足できる一品を作れる。
「さぁさぁ、どんどんじゃんじゃん作っていくからね! 無くならないようにたっぷりあるから、お代わりが欲しい人は何度でも並ぶがいいさ!」
『うぉおおおおー!』
「あっはっはっは……って、なんでますたーたちも並んでいるのさ?」
「……ズルいですよ。わたしだって、メルのスープが飲みたいです」
その言い方はどうかと思うが、とりあえずちゃんと並んでいた『月の乙女』一同にあら汁が入った器を提供する。
殺気立つ男嫌いのプーチですら、こういうときは大人しいんだよな。
「ますたーたちもお代わりは銭貨三枚──つまり3Y払ってね」
「全員分で18Yですね……ですが、日本円で三円分って安くありませんか?」
「私の作る料理は、あんまり材料費が掛かってないからね。これの代金って、結局私の自己満足でしかないんだよ。あとでこれのレシピは提供するつもりだし、私が欲しいのはお金というよりみんなの満足感だからね」
「メル……正直引きますよ」
まあ、タダだとありがたみが無いので適当に頭に浮かんだ3Yを要求している辺り、俺は偽善者なんだなーと思える部分だ。
決してタダじゃない、タダより高い物はないと疑われることもあるらしいし。
「まあまあ、ますたーたちもその恩恵にあやかっているんだから気にしないでよ。まだまだお代わりはあるよ──どうする?」
「……ください」
「はい、毎度ありがとうございます♪」
作り微笑を浮かべて返してもらった器に再びあら汁を注いでいく。
それを飲んだクラーレは、とてもホッとした表情を浮かべていた。
◆ □ ◆ □ ◆
交渉(胃袋)という方法を取れる者は、今回井島を訪れた中に俺しかいない。
なので俺はそのまま料理を通じてここの人たちと交流を深め、戦闘などの依頼を彼女たちが行うことになった。
……普通逆では? とか思っちゃダメだ。
人にはそれぞれ適性があるし、何より一定水準とかそういう問題を気にしないなら彼女たちもしっかりと料理が作れる。
ただ、その水準とやらを俺が過剰なまでに引き上げてしまったのが問題だった。
もともとは料理スキルをいちおう持っていた者も、俺という万能料理人が作る至高の一品たちを前に屈服してしまったのだ。
「まあ、生産班といっしょにゆっくりと生産スキルも磨いているみたいだけどね……できるだけ簡単にスキルレベルを上げられるレシピを用意しておいたけど、それでどうにかなれば…………大丈夫かな?」
ちなみに数日が経過している。
最初は警戒していた者たちも、毎日毎日香ばしい匂いを嗅がされるという拷問に耐えかね、クレームついでに料理を食べた結果次々と陥落していった。
今ではある程度値上げした俺の料理店に文句を着ける者などなく、少しでも値引こうと料理の素材を恵んでくる……なんだか俺が悪役っぽくなっている気がするが、俺が料理を決めるより、こっちの方が楽なんだよ。
「よう、メル──これでなんか作ってくれ」
「ふむふむ、どういう風に食べたいの?」
「そうだな……やっぱり焼いてくれ!」
「分かった。シンプルだけど美味い、そんな感じで調理してみるよ」
青年が釣ってきた魚をチラつかせ、ついでに銭貨を五枚並べてさっそく依頼してきた。
それを受け取ると、パパッと加護が赴くままに体を動かして内臓などを取り除く。
そして鮮度を失う前に口からS字になるように通し、塩を振りかけてから炭火で焼いていく……こういう部分でも加護が機能するため、最高のタイミングでそれぞれの作業を止めることができる。
「はい、出来上がったよ」
「うぉおお! やっぱりこれだな、もうメル無しじゃ俺はやってけねぇよ!」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、私はますたーたちに付いていく従魔みたいなものだからね。ますたーたちがここから去るなら、私も同じように去るだけだよ」
「従魔? ……ああ、式神みたいなもんだっけ? だいぶあのネーちゃんたちも信用されてきたし、米をこっちが売るまでは粘っていてくれるだろうよ」
このように、俺は『月の乙女』たちの好感度が上がるようにせっせと働いている。
そのうちお米も手に入るし、味噌とかも分けてくれるかもな。
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