AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と宿る魔武具
連続更新中です(04/12)
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『く、くそぅ……どうしてこんな目に』
「お前が俺と契約したからだろう? ほら、さっさと力を発揮しろよ」
『きみぃ……覚えてろよ』
その声は俺が握る錫杖から聞こえてくる。
それはかつて大悪魔が振るった魔武具である『アルカナ』であり、今では大悪魔が宿る知性武具である『アーケイナム』だ。
名前はただ『アルカナ』という複数形の言葉を単数形に変えただけなんだが、大悪魔という一個人が中に入るということで、否定もなくそのような命名がされた。
「居心地はどうだ? 担い手ではないが、いちおうの適性だけはあるからな」
『だから腹が立つんだ……くそっ、抜けだそうにも抜け出せない!』
「そりゃあわざわざ“欲望の聖杯”も使って封印を強化したからな。意外と使えるな、魔力があれば何でもできるんだから」
『この化け物め!』
支払った魔力に応じ、願いを叶える願望の器──それが“欲望の聖杯”だ。
足りない分はデバフとして消化されるのだが、完全状態の俺にとって、魔力はどれだけ使っても使いきれないほど存在する。
そのため、魔武具として叶えられる範囲であれば何でも願いを叶えることが可能だ。
今回はその機能を使い、大悪魔をこの魔武具の中に封じ込めたのである。
俺が創造した魔武具には、俺が望んだ結果自我が宿っていた。
しかし『アルカナ』はそうではなかったので、制御しづらかった……なので大悪魔を中に押し込み、そういった部分をやらせることにしたのだ。
「まあ、いいじゃないか。俺とお前は契約を交わした身、互いに求めるモノは伝え合ったじゃないか。お前の願いは俺の願い、俺の願いは俺の願いだ」
『……ふんっ』
「それに、俺がわざわざコレに頼ることはそう多くない。本当に必要なとき、そのときだけ手伝ってくれればいいさ」
『……分かっている。悪魔であるこのボクが契約を破るはずがないだろう』
無詠唱に加え、思考詠唱を使えば無動作で形状を変更することが可能である。
魔武具『アーケイナム』は『アルカナ』が変形できた四種類に加え、大悪魔の力が干渉することで新たに生まれた特殊効果を、組み合わせて発揮できるのだ。
閑話休題
唐突に思いついたことを、魔武具の中でぶつぶつと呟く大悪魔に訊ねてみることに。
「そういえば大悪魔、冥界には行けるか?」
『可能だけど、君は連れていかないよ』
「そうか……いや、それだけ分かれば充分だから、別に連れてかなくてもいいぞ。ただ、まだ帰れることに意味があるんだ」
『どうせなら、君があの世界の王にでもなってみるかい? あそこは弱肉強食、ボクを強引に従えている君なら間違いなくあの世界を支配することができるよ』
AFOの世界は複雑怪奇だ。
さまざまな神話が入り組んでいるし、オリジナルの名前を持つ神々が存在する。
だからこそ、冥界も複数存在する──おそらくだが、大陸ごとに。
ならば、大悪魔の冥界から出ることで、そこには異なる大陸が広がる可能性が高い。
ゲームなのでよくある、中継地点として使うことが可能なわけだ。
「支配なんてしないさ。俺は偽善者、求められるがままに誰かに手を差し出すだけだよ」
『たとえ相手が誰であろうとかい?』
「おいおい、それは善人だろ。俺は偽善者だぞ? 助けたいと思った相手を、否が応でも助けるだけだ」
『……最悪だね、君は』
悪魔に最悪と言われてしまった。
邪神に災厄と言われたことはあったが、こういう経験が積めるのはやっぱり異世界特有のイベントだよな……。
「俺が最悪なら、悪魔も形無しだな」
『君は悪魔だよ。『導士』を複数持っていた者はいちおう居たけど、堕落の『導士』を複数持つのは悪魔ぐらいのものさ』
「へえ、居たんだ……」
俺が知っている『導士』は、アマルとシュリュとカナだけなんだが……全員が、一つずつの保有だ。
普通はそれが当たり前、自身の進んできた道に合わせた導きへ他者を誘い込む──それこそが『導士』なのだから。
いやまあ、そんな『導士』が一つの大陸に複数いるのは異常なんだけどな。
あと、アマルとシュリュは正確には過去の『導士』か……うん、だからこその異常事態になっているのか。
「少し興味が湧いてきたな……滅ぼすとか支配するとかは別として、一度会って話をしてみたくなった」
『サラッと滅ぼすと言っているけど、本当にそれができそうだから君は怖いよ』
「できるだろ。ただ、やってもまったく意味が無いからやらないだけだ」
『…………』
厄災候補である俺が、それぐらいできないで候補に挙げられるはずがないだろうに。
滅ぼすか……支配に関係するワードだからつい口走ったが、可能なんだよな。
──ソウを送り込めば、それで完了だ。
「まあ、偽善者が偽善を行うための環境を破壊するわけないだろ? それに、悪魔にも悪魔たちのルールがある、それをよそ者が壊すわけにもいかない……もし会うなら、ちゃんとアポを取ってから会うことにするよ」
『アポ? そんなもの、配下を全滅させる以外の方法は無いよ』
「……そっちこそ、ずいぶんと殺伐としているじゃないか」
『さっきもいっただろう? 弱肉強食、強い者があらゆるものを手に入れられるんだよ』
アポの権利も、その一つってことか。
俺がそこに行くとなったら、偽善を行うためにどれだけの悪魔が地に伏せることになるのやら……うん、考えないようにしよう。
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『く、くそぅ……どうしてこんな目に』
「お前が俺と契約したからだろう? ほら、さっさと力を発揮しろよ」
『きみぃ……覚えてろよ』
その声は俺が握る錫杖から聞こえてくる。
それはかつて大悪魔が振るった魔武具である『アルカナ』であり、今では大悪魔が宿る知性武具である『アーケイナム』だ。
名前はただ『アルカナ』という複数形の言葉を単数形に変えただけなんだが、大悪魔という一個人が中に入るということで、否定もなくそのような命名がされた。
「居心地はどうだ? 担い手ではないが、いちおうの適性だけはあるからな」
『だから腹が立つんだ……くそっ、抜けだそうにも抜け出せない!』
「そりゃあわざわざ“欲望の聖杯”も使って封印を強化したからな。意外と使えるな、魔力があれば何でもできるんだから」
『この化け物め!』
支払った魔力に応じ、願いを叶える願望の器──それが“欲望の聖杯”だ。
足りない分はデバフとして消化されるのだが、完全状態の俺にとって、魔力はどれだけ使っても使いきれないほど存在する。
そのため、魔武具として叶えられる範囲であれば何でも願いを叶えることが可能だ。
今回はその機能を使い、大悪魔をこの魔武具の中に封じ込めたのである。
俺が創造した魔武具には、俺が望んだ結果自我が宿っていた。
しかし『アルカナ』はそうではなかったので、制御しづらかった……なので大悪魔を中に押し込み、そういった部分をやらせることにしたのだ。
「まあ、いいじゃないか。俺とお前は契約を交わした身、互いに求めるモノは伝え合ったじゃないか。お前の願いは俺の願い、俺の願いは俺の願いだ」
『……ふんっ』
「それに、俺がわざわざコレに頼ることはそう多くない。本当に必要なとき、そのときだけ手伝ってくれればいいさ」
『……分かっている。悪魔であるこのボクが契約を破るはずがないだろう』
無詠唱に加え、思考詠唱を使えば無動作で形状を変更することが可能である。
魔武具『アーケイナム』は『アルカナ』が変形できた四種類に加え、大悪魔の力が干渉することで新たに生まれた特殊効果を、組み合わせて発揮できるのだ。
閑話休題
唐突に思いついたことを、魔武具の中でぶつぶつと呟く大悪魔に訊ねてみることに。
「そういえば大悪魔、冥界には行けるか?」
『可能だけど、君は連れていかないよ』
「そうか……いや、それだけ分かれば充分だから、別に連れてかなくてもいいぞ。ただ、まだ帰れることに意味があるんだ」
『どうせなら、君があの世界の王にでもなってみるかい? あそこは弱肉強食、ボクを強引に従えている君なら間違いなくあの世界を支配することができるよ』
AFOの世界は複雑怪奇だ。
さまざまな神話が入り組んでいるし、オリジナルの名前を持つ神々が存在する。
だからこそ、冥界も複数存在する──おそらくだが、大陸ごとに。
ならば、大悪魔の冥界から出ることで、そこには異なる大陸が広がる可能性が高い。
ゲームなのでよくある、中継地点として使うことが可能なわけだ。
「支配なんてしないさ。俺は偽善者、求められるがままに誰かに手を差し出すだけだよ」
『たとえ相手が誰であろうとかい?』
「おいおい、それは善人だろ。俺は偽善者だぞ? 助けたいと思った相手を、否が応でも助けるだけだ」
『……最悪だね、君は』
悪魔に最悪と言われてしまった。
邪神に災厄と言われたことはあったが、こういう経験が積めるのはやっぱり異世界特有のイベントだよな……。
「俺が最悪なら、悪魔も形無しだな」
『君は悪魔だよ。『導士』を複数持っていた者はいちおう居たけど、堕落の『導士』を複数持つのは悪魔ぐらいのものさ』
「へえ、居たんだ……」
俺が知っている『導士』は、アマルとシュリュとカナだけなんだが……全員が、一つずつの保有だ。
普通はそれが当たり前、自身の進んできた道に合わせた導きへ他者を誘い込む──それこそが『導士』なのだから。
いやまあ、そんな『導士』が一つの大陸に複数いるのは異常なんだけどな。
あと、アマルとシュリュは正確には過去の『導士』か……うん、だからこその異常事態になっているのか。
「少し興味が湧いてきたな……滅ぼすとか支配するとかは別として、一度会って話をしてみたくなった」
『サラッと滅ぼすと言っているけど、本当にそれができそうだから君は怖いよ』
「できるだろ。ただ、やってもまったく意味が無いからやらないだけだ」
『…………』
厄災候補である俺が、それぐらいできないで候補に挙げられるはずがないだろうに。
滅ぼすか……支配に関係するワードだからつい口走ったが、可能なんだよな。
──ソウを送り込めば、それで完了だ。
「まあ、偽善者が偽善を行うための環境を破壊するわけないだろ? それに、悪魔にも悪魔たちのルールがある、それをよそ者が壊すわけにもいかない……もし会うなら、ちゃんとアポを取ってから会うことにするよ」
『アポ? そんなもの、配下を全滅させる以外の方法は無いよ』
「……そっちこそ、ずいぶんと殺伐としているじゃないか」
『さっきもいっただろう? 弱肉強食、強い者があらゆるものを手に入れられるんだよ』
アポの権利も、その一つってことか。
俺がそこに行くとなったら、偽善を行うためにどれだけの悪魔が地に伏せることになるのやら……うん、考えないようにしよう。
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