AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と帝国散策 その14
『ウェナ・ファナス! 詳しい方は、すでに彼女のプロフィールを把握しているでしょうが……今回は特別にご説明いたしましょう』
舞台に上げられた少女は、身動き一つせずただ茫然としていた。
体を引き摺られても、それこそ何千何百という視線を浴びせられようとも。
『彼女はこの国の元お姫様! 現皇帝であらせられるエルダスト様より、直接下賜された磨き上げられた奴隷でございます!』
状況自体は理解しているのか、司会がどのようなことを言おうが無反応だ。
それで売れるのか、と聞かれるとあんまりそうでもないと思う。
『彼女はハーフでございます。父親であるエルダスト様の普人族。そして、吸血鬼の母から生まれました』
彼女の顔が映像としてアップされた。
吸血鬼特有の紅の瞳が、爛々と輝く。
また、犬歯もちょっとだけ長く、首輪を通じて開けさせられた口の中にそれが映る。
加えて、吸血鬼特有の青白い肌。
不健康そうな肌と母譲りなのか端正な顔立ち……会場の男たちは興奮し、女性たちはそれなりに怒りや妬みを感じていた。
『まだ血は一度も飲ませていないとのことですので、吸血鬼特有の特殊な力が皆様を害することはございません。しかし、再生能力だけはしっかりと機能しておりますので、どのような扱いでも対応することでしょう』
血を吸うことで成長可能な吸血鬼。
血を霧のようにバラ撒いたり、姿を蝙蝠に変えたり影に潜ったりできる……そういうことができないということか。
『もちろん、通常業務を行うことも可能なように育てられております。なにせ、皇帝様の娘さんですので。掃除洗濯などの家事は当然のこと、戦闘にも最適です』
彼女のステータスが表示される。
たしかにレベルが低いながらも、豊富なスキルを有していた。
そういった方針で予め育てておけば、そうなるだろうと思える。
「メルス、またお姫様だって……」
「オークションって、実は処分に困る王族をどうにかする場所なのかもしれないな」
「オークションじゃなくても、お姫様を拾ってるメルスが言うと実感があるね」
「……なあ、俺が言うのもあれだが、そんな感想でいいのか?」
かくいうアイリスもまた、亡国のお姫様という立ち位置に居る。
今の時代に彼女の国を知っている人が居るかどうかは別だが、彼女の経歴そのものに変化はない。
「けどさあ、あんな顔をしている娘を見捨てるわけにはいかないよね? 助けようよ、嫌がってもさ」
「まあ、札を持って上げる前にそれを言ってたら……好かったかな?」
オークションはとっくに始まってるし、競売には俺たちも参加している。
なのにこうして再確認のようなことをしているのは、様式美というものだろう。
「お金で人生が決まるって、地位が高ければ高いほど嫌になるよな。そりゃあ農民とかが人生逆転を狙って奴隷になるなら、むしろ価値を感じるかもしれないけどさ」
「……ワタシの場合は、お金で延命していたようなものだけど。パパもママも、ワタシが生きてくれるならって、疲れながらもお金を稼いでいたかな……」
「そう、だったっけな。悪いな、忘れてた」
「ううん、気にしないで」
転移なんだか転生なんだか、微妙な状態でこっちに来たアイリス。
突然居なくなったアフターケアを、お神がしてくれたかどうか分からない。
まあ、それを知る方法はないからどうしようもないわけで……どうにかなる方法を見つけてから、考えるべきことだ。
「話が逸れたな……今の額、五千万Yあれば平民がずっと働かずに生きてられるよな。だけど、欲望を満たそうとそれ以上のナニカを犠牲にしている。いっぱい対象はあるけど、一番は他の生き物だよな」
「ハーレムって欲を満たすために、あの手この手で女の子を堕としている人とか?」
「ああ」
「否定……しないんだね」
否定は、眷属の今を否定するのと同意だ。
それだけはしないし──してはいけない。
偽善なんて、世間から見たら嫌われるようなことしかしていない俺だからこそ、通さなきゃいけないモノがあるだろう。
「また逸れた……五千万って額、あったらアイリスは何に使う?」
「うーん……外の物の価値なんて、ゲーム内の物しか知らないよ?」
「たまに違う物があるしな。そっか、それを考えてなかったな」
「五千万って言うと、たしかパパの月収が一千万とか言ってたんだよね……」
知らなかったが、お金持ちだったようだ。
まあ、難病をずっと治療するにはかなりの額が要るらしいからな。
十年単位でそれを可能とするための額を、稼いでいたようだ。
「一億、超えたな……これまでのヤツもそれ以上だったし、グングン増額するな」
「これだけのお金があったら、どれだけの人が救われるんだろう?」
「さぁな、けど人間の価値は平等じゃないって言うし……気にしなくていいだろ」
クライマックス、すでに億越えの人気とはずいぶんと期待されているようだ。
サクラが盛り上げているようだが、最終的に買えるなら問題ない。
──まあ、これに立派な目的でもない限りは俺なりのサービスをする予定だがな。
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コメント
ノベルバユーザー313009
俺つえーから始まって、紆余曲折あって弱くなってwおもろい!