AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と捜索交渉 前篇



 始まりの町


「──そろそろ何か見つかったか?」

「いや、待て……もう少し時間をくれ」

「その台詞を何度も聞いてなければ、俺もそれで了承したんだがな。残念なことに、そこまで優しくいられないんだよ」


 やることがなくなったので、今日は催促をしにナックルの下を訪れていた。
 余裕をぶっこいて飲み物を飲んでいたが、俺が入ってくると飛沫を飛ばしてきやがったが……そこはまあ、許してやったよ。

 その代わりとして、ずっと前から挙げていた取引の品を受け取りを要求したが……どうやらまだ見つかってないらしい。


「そもそも、オープンソースとして開示されている方がおかしいんだ! こっちは一から探しているんだぞ、時間が足りない!」

「そりゃあ、俺と違ってナックルたちは忙しいってことぐらい理解しているさ。だが、それはうちで遊んでいないならの話だ」

「うぐっ……」

「フリーパスを渡したら、思う存分遊んで景品交換までしていく奴らに、俺がどうやって慈悲を施せばいいんだ? 俺の造った迷宮ダンジョンで遊ぶ暇があるなら、それこそ未踏破の迷宮でも潜ってこいよ!」


 まあ、そのお蔭でうちの売り上げがいいらしく、民に人気なのは内緒だ。
 ラントスにとって外からのお客さんは貴重な存在なので、ナックルたちの存在は彼らの士気向上にも使えているんだよな。


「けどまあ、俺は掲示板も使えないからそういうのがよく分からないんだ。迷宮で潜っているお前たちさえ見てなければ、どれだけ難易度が高いことを言っているのかも分からない……八つ当たりして、悪かったな」

「おい、止めろ。その大人な対応。俺たちの方が全面的に悪いのに、引き下がらせているみたいで後味が悪いんだが」

「そうだよな、現実じゃいろいろとあってそれを忘れるために来ている奴もいるか。それなのに、俺は命令ばかりして……旅館の方も使えるようにしてやるよ、そこでゆっくりと羽を伸ばして来いよ」

「それは行く、行くんだが……その罪悪感をしこりとして残すような言い方は止めろ」


 旅館もまた、迷宮核を一つ使って生みだしたラントスの癒しスポットである。
 俺の趣味全開で創り上げた、迷宮だからできるスペシャルな一時を送らせる夢のような場所……なのだが、入場条件のかなり厳しくしたため、あまり客は来ない。


「ちょっと待て。今、別の奴を呼ぶ。お前にそもそも一人で対応しようとした、俺の方が迂闊だった」

「それで話し合いが上手くいくなら、別に人が増えても構わないが……呼ぶ奴に関してはしっかりと弁えとけよ」

「知ってる奴だけにするさ」


 立ち上がると、[メニュー]画面を携帯を使うような感覚で操作をしながらこの部屋から去る。
 ウィスパー機能で誰かを呼ぶつもりなんだろうが、それってここでもよくないか?

 一息吐いて、もう一息吐く。
 そしてナックルの出ていった扉──ハウスの入り口とは別の場所の扉に向け、声をかけておく。


「ユウ、居るのは分かってるぞ」

「ふっふっふ……さすが師匠だね」

「ん? いや、別に索敵とかはしてなかったし、気づいてなかったぞ。なんとなく、お前が居る気がしたから言ってみただけだ」

「気にすることはないよ。僕と師匠の間に結ばれた絆が、それを成しただけなんだから」


 会うごとに馬鹿さ加減が上がっている気がするユウは、部屋に入ってくると先ほどまでナックルが居たソファにスッと座る。


「師匠はまた、アレの催促?」

「できるだけ早く見つけたいからな。そのためには、一番優秀なギルドの力を行使した方が早いだろ」

「うーん……一度体験している側からしてみると、師匠の気がしれないけどね」

「クリアしたんだから別にいいだろう。それより、ティンスとかと最近いっしょに活動しているんだろ? あっちの方で見つかったりとかはしないのか?」


 眷属にしたプレイヤーたちの能力値は、すでに普通の者よりも少しだけ上ぐらいの補正しか掛からないようになっている。
 それでも[スキル共有]というチートスキルがあるため、彼女たちはかなり強い。

 ナックルはそのうち、ギルドメンバーでもある二人──ユウとアルカに団体行動を強要しなかった。
 そもそも何か崇高な目的があって造られたギルドではなく、当時固有な能力に目覚めていた者たちが集まってできただけだ。

 そのため、ナックルは彼女たちを同じような存在と活動するように指示する。
 まあ、要するに好きにしろってことだ……そういう気概のリーダーだからこそ、祭り上げられ慕われるんだけどな。


「師匠の眷属って、みんなバラバラなことが多いよ。時々集まるけど……イアちゃんは召喚職だからソロだし、シャインは自分のギルドもあるから。ペルちゃんも独りで居ることが多いね」

「オブリとティンス、ユウとアルカの組み合わせだけなのか。固定されているのは」

「そうそう、たまに師匠の迷宮を攻略する時は集まるし、イベントの時なんかも集まりはするけど……基本的には、掲示板でやりとりだけでどうにかなっているよ」


 前回の育成イベントのときも、たしかそうだったらしいな……使いとして送ったアイツがシャインとコンタクトを取り、結構情報を回してもらっていたらしいし。


「それで、手がかりは見つけられたか?」

「少なくとも、僕とアルカは見つけられてないよ。もう、誰かが独占してクリアしてるんじゃないかな?」


 それをやったのが主人公みたいな奴なら、別に構わないんだが……さて、ナックルが連れてくる奴との交渉で、少しは上手くいけばいいんだが。



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