自称偽善者は電脳異世界に揺蕩う(旧:AFO ~(自称)偽善者のVRMMO(?)記~)

山田 武

偽善者と水着浴 中篇



「水着と下着の違いって、何なんだろうな」

「えっと、どうしたのですか急に?」

「ごしゅじんさま! いっしょに遊ぼう!」

「ん? 別にいいぞ。ただ、本当に永遠の謎になりそうだ」


 やっぱり、デザインの問題か?
 どちらの煽情的な姿であるのに、なんだか水着の方が許容できている気がする。

 下着は通気性のために、下着の中に隙間が空いているのもある。
 だが水着にはそういったものがなく、バッチリ隠すべきところは隠している。
 ……まあ、ヤバい水着はそもそも隠していないんだけど。

 グラとセイが着ている水着は、互いに白と黒の配置が逆になっている水玉模様の物だ。
 子供らしさ、というものが出ているので、俺の鼻の下が伸びるということはない。


「と言ってもグラ、いったい何をして遊ぶんだ? 流れる湯で泳ぐか? それとも渦の湯で泳ぐか?」

「うーん……セイ、何がイイと思う?」

「そうだね……ご主人様、渦の湯に行ってみませんか?」

「そうだな。セイがそう言うなら、行ってみようか」


 わーいと喜ぶグラの声を聞きながら、二人と手を繋いで渦の湯まで移動する。
 一定時間ごとにお湯が回転し、本物の渦を生みだすレジャースポットだ。


「あっ、お前も来てたのかよ」

「メルス! お前もやっぱり渦を楽しみに来たのか?」

「セイがここにしようって言ったからな。俺は時々独りで楽しんでるし」


 浴室をレジャー施設のように改造したのは俺なので、仕掛けを好きな場所に持ち込んで湯に浸かることができる。
 魔法を常時発動するように施すだけだし、簡単なのだ。


「で、カナタもここで楽しんでるのか?」

「ああ、波打つプールとか流れる系のはあったんだが、こんな凄いのは無かったな。どこでこんなプール知ったんだよ?」

「学校で掃除のためか知らないが、グルグルと歩いて回転させられるのがあるだろう? それを自動化させて、レジャーにしたら面白いかな? って思っただけだぞ」


 そんな裏事情はどうでもいいだろう。
 丸い浴槽の中で、グルリグルリと俺たちは回っていく。
 ちなみに俺は即席で生成した浮雲を浮き輪として使っているので、疲れることなく渦を楽しめているぞ。


「なあ、メルス。それ、俺にもくれよ」

「別にいいけど……本当にいいのか?」

「渦に呑まれて遊ぶのもそろそろ飽きてきたし、そっちで遊びてぇんだよ」

「…………まっ、後で気づけばいいか」


 再び浮雲を用意する準備を始めた。
 ダウンロードした(雷雲生成)を発動し、小さめの黒い雲が発生する。
 それを<領域干渉>で弄りまわし、雷属性を除外することで──現在使っている白い雲型の浮き輪の完成だ。


「サンキュー、メルス」

「ああ。セイ、グラ! お前たちも使ってみるか?」

「まだ大丈夫!」
「今は渦を楽しんでいたいです!」


 二人にも訊いてみたが、カナタ同様に最初は渦のギミックを満喫したいようだな。
 セイは翼を畳んだ状態で渦に身を任せ、グラは犬かきで渦に逆らって泳いでいる。

 無邪気に遊ぶ二人を見て、口角が緩む。
 浮雲に乗って、俺と同じように流れるカナタも同様に笑っていた。 


「……なんか、ああして純粋に楽しんでた頃が懐かしいな」

「ああ。いつから別の感情を抱いて、プールに入るようになったんだろう」

「…………アトラクションでキャーキャー言うリア充に舌打ちしてたよ」

「俺もだ」


 他者を妬む場所、精神が成長した者たちにとってプールとはそんなスポットだ。
 一部とはいえども、肌を多く晒しているからこそそうなるのかもしれない。

 女性であれば、自身と周りとの山の標高にそうした感情を抱くかもしれない。
 ボッチは独りでいることを楽しいと感じつつも、ほんの一瞬リア充たちの行動に羨ましさを覚えるかもしれない。


「ところで話は変わるけどさ、カナタ──」

「ん、どうした?」

「浮き輪の上に出るってことは、俺に水着を見せるってことだけど……本当に上がって良かったのか?」

「っ~~~~! なんで言わねぇんだよ!!」


 当然じゃないか。
 おそらく、コアさんが用意したであろう水着を身に纏うカナタ。
 褐色の肌からでも分かる程に、彼ないし彼女の顔は真っ赤に染まっている。


「なんでって言われても……だから俺は確認したんじゃないか、本当にいいのかって?」

「あ、あれか! クソ、なんで気付けなかったんだよ!」

「……まあ、似合ってるぞ。さすがコアさんと言ったところか」


 露骨に女性的な水着を選ぶと、カナタが反発することなどコアさんに見抜かれている。
 そのため、カナタは男用のトップ水着を着用していた。

 上も下も隠せて、安心なんだろう……が、ラインが出ているため少しだけ工□い。


「………………んだよ」

「えっ、今なんて言った?」

「──だから、これは俺が選んだ水着だ!」

「お、おう……その、似合ってるって言ったのは本当だからな」

「ありがとよ! 凄ぇ嬉しいよ!」


 羞恥心が振り切ってしまったのか、カナタの目がグルグルとプールのように渦巻いている気がする。
 しかし、自分で選んだのか……ん?


「誰かといっしょに選んだのか?」

「コアと選んだんだよ! アイツ、際どいヤツばっかり選ぶから、自分で選んだ方がマシだったんだ!」

「あー、なるほど」


 コアさん、貴女も策士ですね。
 二重の策を用いて、カナタに目的の水着を着せることに成功するとは。

 ……神眼で探してみれば、俺たちを観測する一人の森人を見つけることができた。
 うん、俺に気づいたようでサムズアップしているや。



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