自称偽善者は電脳異世界に揺蕩う(旧:AFO ~(自称)偽善者のVRMMO(?)記~)

山田 武

偽善者と四回戦最終試合 その03



≪メルス様がいろいろと初公開の技術を見せてくれていますので、実況の私たちがそれを説明しないといけませんね!≫

≪武具のことであれば、お任せください。解説担当となりました──ドゥルと申します≫

≪ドゥルさん、お願いします。さっそくですが、あの不思議な服について説明をしてほしいのですが……≫

 黒い礼装のまま、メルスはソウとの戦闘を行っていた。

 シュリュの魂を借り受けたその力は、あらゆる戦闘行為に恩恵を与える。
 現在も適性を上げた聖剣を用いて、ソウの持つ棒と打ち合いをしていた。

≪『寵愛礼装』。眷属の力をその服に宿すことで、その眷属が持つ適性や種族としての性質を発現させる礼装です≫

≪あれ? ですが、メルス様は種族の性質をスキルとして獲得しているはずでは……≫

≪これを開発なさった頃、我が王マイロードにそのような能力は宿っていなかったそうなので。しかし、その力が肉体……というより因子を介して能力を得るのであれば、礼装は魂魄を介して力を借り受けています≫

 種族の力を使う二つの方法。
 因子を取り込み、自身の肉体を改変することでそれを成す(因子注入)と(未知適応)。
 魂魄を取り込み、擬似的な憑依形のような形でそれを成す寵愛礼装。

 違いは種族の力を借りるのか、眷属の力を借りるのかという点だ。
 一つ目の方法では種族としての平均的な適正しか得ることができない……が、二つ目の方法は眷属が持つ適性を完全な形で受け継ぐことができる。

≪より強い形で、眷属と繋がろうとしたのが礼装です。眷属の能力値なども引き継げるため、誰からでも回収することができる因子よりも効果は高いのです≫

≪これまで、メルス様は使っていなかったのですよね?≫

≪……我が王自身の問題ですので、発言は控えさせてもらいます≫

 自身は与えるだけ、そう考えて偽善を行い続けたメルスにとって、『寵愛礼装』は形だけの品でしかなかった。
 しかし、精神的な成長を経たことでついに使用を選ぶ。

 今も黒と銀の光が空に奔り、激しい闘いを繰り広げている。
 ぶつかるごとに打ち鳴らされる轟音は、連続した爆撃のようでもあった。

≪ドゥルさん。ちなみにですが、ドゥルさんの礼装もあるんですよね?≫

≪はい。ございますよ≫

≪どういったものなのか、教えていただけないでしょうか?≫

≪それは……舞台を見れば、分かってもらえると思いますよ≫



 メルスは礼装に意識を集中すると、詠唱を始める。
 ソウはそれを、刃を破壊や回避行動を行いながら楽しみに待つ。


「武装は攻め、守りし力の結晶。其は武具を収めし室の番人なり。王なる我が求めし力、賜わぬ我に代わり、あらゆる武具を授受したまえ──“武廠魂魄ソウルアーマリー”」


 黒色の礼装は銀色の輝きに塗り潰され、剣の鈍い銀色が礼装に映える。
 劉翼の色は黒から銀に代わり、幾種類もの武器を編んだ物へ変化した。

「武具適性が最大になったな。そして、今の俺はあらゆる武具を呼びだせる」

 瞬時に体の周りに付いていた武具が切り替わり、そのすべてが対ドラゴンの力を帯びた物となる。
 それらはメルスの意志に従い、宙を浮くとソウに向かう。

「そろそろ空の領域が狭まってきたのう……どれ、潰すか」

 棒に龍気を籠めると、力強く振るう。
 このとき魔力強化を一瞬のみ行い、爆発的な推進力を得る。

 轟ッと空気を薙ぐ音がソニックブームを生みだし、聖剣の刃と神なる剣を破壊した。
 そしてその勢いのまま、メルスの元へ到達する──直前に、対ドラゴン用の武器がそこに到達し、身を削ってそれを受け止める。

「……魔力を抜いたか。そして、その吸った魔力は──」

「こうしてまた、再利用されるわけだな。魔導解放──“封じられし神宝器廠”」

 体に戻した魔力を<久遠回路>で増幅し、それを用いて発動させた新たな魔導。
 どこからともなく神器が現れると、いっせいにソウへ飛んでいく。

「無駄じゃ」

 これまでの武具と異なり、今回の魔導で生みだした武具にメルスは関わっていない。
 おまけにこの魔導は模倣しただけで本質が無く、明確なイメージも存在せず──

「本来の神器であれば、もう少し粘ったであろう……じゃが、このような取り繕った品であれば一撃で壊せるぞ」

「属性ぐらいしか、イメージしてなかったから仕方ないか」

 その気になれば、武具一つ一つに細かな能力を添加することもできた。
 だがそれをせず、メルスは最低限の魔力のみで魔導を発動させたのだ。

「魔導解放──“天下る地平の雷轟”」

 そして、本命の魔導が炸裂する。
 地面から空へ駆け昇るように、何本もの稲妻が奔っていく。

「不味いの……うっ!」

 秘められたナニカに嫌な予感を覚え、迎撃ではなく回避を選ぶソウ……だが、雷撃は正確に彼女を追い詰め、身を痺れさせる。

「さっきのアレが、マーキング用の神器だったんだよ。それを辿って全部の雷がお前に到着するって寸法だ」

 微弱な雷属性を帯びさせた神器に干渉したソウは、電撃を受け止める避雷針のような状態となっていた。
 自然界で発生する雷をはるかに超えるその稲妻を、ソウは何本も同時に受ける。

 一瞬思考が焼かれ、空白になってしまう。
 その隙を突くように、もう一つの魔導が解放される。

「魔導解放──“喰らい尽く冥獣の暗牙”」


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