AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と一回戦第六試合 その02
そして始まった第六試合。
それは、『月の乙女』に所属するメンバーたちも観戦していた。
「シガン、大丈夫でしょうか?」
メルスに巻き込まれ、歪な成長を遂げたクラーレもまた試合を覗いている。
出店で買ったいくつかのジャンクフード、それらを握り締めながら。
「眷属、だったか? 本当に恐ろしい力の持ち主だな」
「プレイヤーって、なんのためにこの世界に来たのかしらね? これだけ強い人が居れば魔王も倒せそうよ」
「ほんと、誘われても断っておいてよかったね。リーダーだけはやっちゃったけど」
「……お菓子~、美味しいね~」
純粋な拳士。
先ほどの試合でナックルが見せたはずのタイプであるが、彼とチャルではその戦闘方法もまったく異なっている。
拳を振るい、生みだされる現象がまず明らかに異なっている。
武技も使わない一突きで、衝撃波が生まれてシガンを苦しめていた。
「というより、魔導機人って言ってましたよね? 全然機械っぽくないんですけど」
クラーレはチャルを見て、ふと呟く。
グラスファイバーのような髪が、激しい拳撃に合わせて揺れ動く。
「機人のプレイヤーは、もう少し機械らしい姿だったな。魔導という単語に秘密があるのか、それとも彼女が特殊なのか……」
「たしかにもっとメカっぽかったよね。たまに動作音がウィンウィン鳴るらしいし」
機人にはメンテナンスが必要で、それを怠ると現実の機械同様に不備が起きてしまう。
チャル──またはアン──のような優れた機人になると、それらも全自動で行われるようになり、その気になればいっさいの機械らしさというものを消すことも可能だろう。
それでも瞳のハイライトを消しているのには、彼女たちなりの理由があるだけだ。
「今は~、勝つか~負けるか~だけだよ~」
「それもそうよね、頑張りなさーい!」
「リーダー、ファイトー!」
会場の片隅で、そんな声援が送られた。
◆ □ ◆ □ ◆
「だから、根性論じゃ勝てないわよ!」
「そう言うなって、最初のプレイヤー……たしか、シャインだっけか? アイツは結構イイ勝負をしてただろ? アンタもあれぐらいなら、イケるんじゃないか?」
「眷属なんでしょ、あの人も。なら、あれくらいできるわよ」
ユウからある程度、情報は集めてあった。
プレイヤーの中にも眷属がいて、そして全員がなんらかの優れた力を振るってトッププレイヤーとしての地位を確立している。
その中に、シャインも存在していた。
かつて、レトロな勇者のような悪逆非道ぶりを見せていた……が、あるイベントを境に人が変わったかのような活動を行い始める。
もともと【勇者】として(見かけ上は)眩い光を放っていた彼は、【闇勇者】としてかつての己と同じ過ちを行う者を裁いた。
その行動は自由民にも親身に感じられ、それこそ勇者としての貫録が出てきたと思えるほどである。
「ま、アレのことはどうでもいいさ。大切なのは、アンタの本気に応えることだけ。……いろいろと仕掛けたね」
「……当然よ。嵌め手でも使わないと、僅かな希望すら見えてこないわ」
「おいおい、あの生物最強の化け物なんかと比べないでおくれよ。ナックルとか言う拳士には悪いが、アレはそもそも同じ生物の枠に入れちゃダメな存在。アンタたち人間が、象と蟻を同じ存在として扱わないように」
ソウについて、分かりやすい例えを挙げるチャル。
だがそれは、彼女の表情を訝しげなものへ変えることになる。
「……やけにこっちの世界のことを知っているわね」
「私には、メルスがインストールしたこれまでの人生すべてが記録されているのさ。だから『地球』も『日本』も『VRMMO』も理解しているし、アンタらプレイヤーがどういう立場なのかも知ってる」
「! ……それで、何か思うのかしら?」
シガンは知りたかった。
自分たちがゲームとして立つこの世界の者たちが、ゲームだという事実を知って何を想うのかを……。
「なんにも。どうでもいいさ、そんなこと。アンタらの世界がゲームじゃない、そんな仮定が成立するのかい? アンタたちは上の世界から下の世界に来たと思っている。それが自分たちの生みだした技術の産物で、この世界すべてがボタン一つで消えるような虚構のものだと」
「そ、それは……」
まったくの否定はできない……することができなかった。
それは誰も知ることができていない、そして誰も知ろうとしない事象であるからだ。
人間という矮小な存在が、AFOという小さな箱庭を生みだして遊んでいる。
ならば、その上位に君臨する何かしらの存在もまた、同様に自分たちを使って遊んでいるのではないか。
……たとえば、神とか。
「ああ、返事は要らないよ。その答えは、別の奴にでも聞かせてやりな。……それより今は、私とアンタの闘いの最中だ。準備もしっかりやっていたんだから、面白いものを魅せてくれるんだろうね」
「……ええ、そうね。見せてあげるわよ、成長した私の力ってものを」
見えないナニカが会場中で蠢き始める。
チャルはそれを知覚し、ニヤリと笑う。
そしてそれは、シガンの指示の元いっせいに起動し始める。
それは、『月の乙女』に所属するメンバーたちも観戦していた。
「シガン、大丈夫でしょうか?」
メルスに巻き込まれ、歪な成長を遂げたクラーレもまた試合を覗いている。
出店で買ったいくつかのジャンクフード、それらを握り締めながら。
「眷属、だったか? 本当に恐ろしい力の持ち主だな」
「プレイヤーって、なんのためにこの世界に来たのかしらね? これだけ強い人が居れば魔王も倒せそうよ」
「ほんと、誘われても断っておいてよかったね。リーダーだけはやっちゃったけど」
「……お菓子~、美味しいね~」
純粋な拳士。
先ほどの試合でナックルが見せたはずのタイプであるが、彼とチャルではその戦闘方法もまったく異なっている。
拳を振るい、生みだされる現象がまず明らかに異なっている。
武技も使わない一突きで、衝撃波が生まれてシガンを苦しめていた。
「というより、魔導機人って言ってましたよね? 全然機械っぽくないんですけど」
クラーレはチャルを見て、ふと呟く。
グラスファイバーのような髪が、激しい拳撃に合わせて揺れ動く。
「機人のプレイヤーは、もう少し機械らしい姿だったな。魔導という単語に秘密があるのか、それとも彼女が特殊なのか……」
「たしかにもっとメカっぽかったよね。たまに動作音がウィンウィン鳴るらしいし」
機人にはメンテナンスが必要で、それを怠ると現実の機械同様に不備が起きてしまう。
チャル──またはアン──のような優れた機人になると、それらも全自動で行われるようになり、その気になればいっさいの機械らしさというものを消すことも可能だろう。
それでも瞳のハイライトを消しているのには、彼女たちなりの理由があるだけだ。
「今は~、勝つか~負けるか~だけだよ~」
「それもそうよね、頑張りなさーい!」
「リーダー、ファイトー!」
会場の片隅で、そんな声援が送られた。
◆ □ ◆ □ ◆
「だから、根性論じゃ勝てないわよ!」
「そう言うなって、最初のプレイヤー……たしか、シャインだっけか? アイツは結構イイ勝負をしてただろ? アンタもあれぐらいなら、イケるんじゃないか?」
「眷属なんでしょ、あの人も。なら、あれくらいできるわよ」
ユウからある程度、情報は集めてあった。
プレイヤーの中にも眷属がいて、そして全員がなんらかの優れた力を振るってトッププレイヤーとしての地位を確立している。
その中に、シャインも存在していた。
かつて、レトロな勇者のような悪逆非道ぶりを見せていた……が、あるイベントを境に人が変わったかのような活動を行い始める。
もともと【勇者】として(見かけ上は)眩い光を放っていた彼は、【闇勇者】としてかつての己と同じ過ちを行う者を裁いた。
その行動は自由民にも親身に感じられ、それこそ勇者としての貫録が出てきたと思えるほどである。
「ま、アレのことはどうでもいいさ。大切なのは、アンタの本気に応えることだけ。……いろいろと仕掛けたね」
「……当然よ。嵌め手でも使わないと、僅かな希望すら見えてこないわ」
「おいおい、あの生物最強の化け物なんかと比べないでおくれよ。ナックルとか言う拳士には悪いが、アレはそもそも同じ生物の枠に入れちゃダメな存在。アンタたち人間が、象と蟻を同じ存在として扱わないように」
ソウについて、分かりやすい例えを挙げるチャル。
だがそれは、彼女の表情を訝しげなものへ変えることになる。
「……やけにこっちの世界のことを知っているわね」
「私には、メルスがインストールしたこれまでの人生すべてが記録されているのさ。だから『地球』も『日本』も『VRMMO』も理解しているし、アンタらプレイヤーがどういう立場なのかも知ってる」
「! ……それで、何か思うのかしら?」
シガンは知りたかった。
自分たちがゲームとして立つこの世界の者たちが、ゲームだという事実を知って何を想うのかを……。
「なんにも。どうでもいいさ、そんなこと。アンタらの世界がゲームじゃない、そんな仮定が成立するのかい? アンタたちは上の世界から下の世界に来たと思っている。それが自分たちの生みだした技術の産物で、この世界すべてがボタン一つで消えるような虚構のものだと」
「そ、それは……」
まったくの否定はできない……することができなかった。
それは誰も知ることができていない、そして誰も知ろうとしない事象であるからだ。
人間という矮小な存在が、AFOという小さな箱庭を生みだして遊んでいる。
ならば、その上位に君臨する何かしらの存在もまた、同様に自分たちを使って遊んでいるのではないか。
……たとえば、神とか。
「ああ、返事は要らないよ。その答えは、別の奴にでも聞かせてやりな。……それより今は、私とアンタの闘いの最中だ。準備もしっかりやっていたんだから、面白いものを魅せてくれるんだろうね」
「……ええ、そうね。見せてあげるわよ、成長した私の力ってものを」
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