AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と生産要員
「うわー、すごいですねー!」
そういった感想を言ってくれたのは、彼女たちの内誰であっただろうか。
全員がログインを行い、仮ではあるがギルドメンバーとして登録された後、ギルドハウスの中に入って来たときのことだ。
連れてきたシガンがノゾム状態の俺の方を見ていたのは、きっとその感想を聞いてニマニマとしていたからだろう。
「自慢のギルドハウスだからね。さぁ、生産用の部屋はこっちにあるわ」
『はい!』
彼女たちは案内されるがままに、ギルドハウスの中を巡っていく。
時々感嘆の声が漏れる度に、俺の中の満足感が満ちていくのがなんとなく分かった。
和洋折衷の城、というなんだかまともな建築士じゃ手を出さないようなジャンルに挑戦して良かったよ。
「──着いたわ、ここがその部屋よ」
「……ここ、なんですか?」
面接のときに俺に質問してきた、黒髪の少女がそう尋ねる。
まあ、これまでの部屋は全部扉が同じ大きさだったのに、突然一回りも二回りもデカいものになれば驚くか。
「生産は大変だからね、少し大きめの部屋にしてあるの。細かいことは、自分の目で確かめてみなさい」
詳細をはぐらかし、早く入るように促すシガン……うん、理由を教えてなかったな。
無駄な妄想心を掻き立て、もし収納機能が無くなった──という仮定条件でも、作ったアイテムを部屋から出せるようにしたかったからだ。
「す、すごい……」
先に部屋に入った新人さんたちは、中を見て驚いている。
俺お手製の生産関連のアイテムが、所狭しと巨大な空間内に敷き詰められているだから驚かないわけがないのだ。
さらに言えば、部屋の奥に神殿に置かれているはずの水晶があるんだもんな。
カタログに載っているとはいえ、それをここに置いてあることにビックリしているのだろう。
──正直、この部屋ともう二つほどしか、ここまでの加工はしなかったな。
「それじゃあノゾム、あとのことは任せておくわね」
「はい、承りました」
その間にシガンは退場し、別の部屋で待機しているクラーレたちを合流するだろう。
初日なのが心配なのか、今日は冒険をせずにギルドハウスにいるつもりらしい。
「──では、そろそろ始めましょうか」
『は、はい!』
「そう固くならずとも、私はただの雇われ教師ですので。これだけの器具があれば、おそらく皆さんはグングン伸びますよ」
昔、放置した(指導)を進化させて(教導)にしておいた。
これに重ねて、『天魔の創糸』を媒介とした擬似的な[スキル共有]による成長補正をかけるので、間違いなくすぐにレベルが上がるだろう。
まどろっこしいことはやらず、本人たちが苦しまない範囲で成長をサポートをする。
今さらだが、新人さん六人が主に何を作りたくてこのギルドに入ったのか……それを彼女たちの紹介も含めて説明していこう。
「あ、ノゾムさん。ちょっといいですか?」
「はい、どうしましたか?」
「言われた通り、インゴットにする作業からやっているんですけど……なんで、もうレベルがカンストしているんですか?」
「ここの仕様らしいですよ」
「え? でも──」
「仕様、らしいですよ」
「わ、分かりました」
なんだか押しの弱い、赤髪の少女。
彼女は鍛冶志望の新人──フォルだ。
面接時の質問によると、本で見たことのあるような武具をたくさん作ってみたいとのことだ。
「こちらの方、どうですか?」
「ノゾム……さん。糸を布に纏めるだけで、こんなにレベルって上がるんだな……です」
「敬語は必要ありませんよ。あくまで、ここだからできるレベルの上げ方です。このギルドの皆さんに感謝しましょうね」
「おう! ……じゃなくて、はい」
敬語が苦手な、山吹色の髪色の少女。
彼女は裁縫志望の新人──クーチュ。
現実では縫うのが下手らしく、こちらで文字通りスキルアップをしたいらしい。
「次は調合スキルかな?」
「──ノゾム先生」
「先生、というほど詳細なやり方は分からないんですけどね」
「ここ、塗り薬の固体化が少し難しいです」
質問を重ねる、銀髪の少女。
彼女は調薬志望の新人──プリパレ。
将来薬剤関係の職業に就きたいだとかで、こちらもまたスキルアップというわけだ。
「ノゾーム! ヘルプミー!」
「どうしたんですか?」
「魔力をプットしすぎてウォーターが!」
「ああ、はいはい。ゆっくりと混ぜながら籠めるようにしてくださいね」
「おーけー……」
どこかの有名人を思い出させる、独特の話し方をする金髪少女。
彼女は錬金志望の新人──アルミー。
兄弟の錬金術師の漫画を見て錬金術を使うと決めたため、いつかあれがやりたいを言っていた。
「できた」
「はい、ご苦労様です。次は……これなんてどうですか?」
「やってみる」
会話が短い、鈍色の髪の少女。
彼女は機械製作志望の新人──マーヌ。
頑張って訊きだしたのだが、なんとなく決めたとしか教えてもらえなかった。
「おや? 美味しそうですね」
「の、ノゾムさん。……あの、どうしてこんなにここのギルドの人たちは素材を集められたんでしょうか? しかも、まだ始めてもいない生産に関するアイテムも含めて」
「うーん、たぶんですけど……あ、先に頂いてもいいですか?」
「え? あ、はい……どうぞ」
そして彼女、しっかりとした質問を行ってくる黒髪の少女。
彼女は料理志望の新人──シーエ。
ファンタジー系の素材を使った美味しい料理を、たくさん作りたいそうだ。
さて、彼女の質問への返答だが……まず、先に料理を食べてからだな。
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