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山田 武

偽善者と自己紹介 その16



 夢現空間 居間

 強化キャンペーンは未だに続いている。
 フーラとフーリの【英雄】姉妹もそうなのだが、自分に実力が足りないと思う眷属たちはこの機会に率先して他の眷属たちに何かを習っていた。


「ですが、今回は自己紹介タイムのお時間となります。第十六回目のゲストは――」

「……フーリでーす」

「棒読み棒読み、カンペはあるけど素の状態でやってくれた方がありがたい」

「……どーも、フーリです」


 前回が姉であるフーラ、今回は妹のフーリがゲスト……まあ、王道だよな。
 修業もしっかりとこなして三人の戦闘狂師たちの試練も乗り越えたそうだ。
 ダンジョンでいくつか経験を重ねた結果、一回りも二回りも成長した姉妹。
 ──プロジェクトも順調ってことだな。


「それじゃあ、そろそろ始めるとしようか」

「……お願いします」

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「問01:あなたの名前は?」

「……フーリ」


「問02:性別、出身地、生年月日は?」

「……女、元サウンド王国オーヴァ領ラルゴ村、神歴1988年01月31日」


「問03:自分の身体特徴を描写してください」

「……身長127cm、髪と目の色はお姉ちゃんと同じ色」


「問04:あなたの職業は?」

「……村人と英雄。お姉ちゃんがいっしょなら頑張れる」


「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」

「……暗い。お姉ちゃんが一緒にいるから、ちょっとだけ明るくなれる」


「問06:あなたの趣味、特技は?」

「……読書」


「問07:座右の銘は?」

「……滅姉奉公、です」

「フーラは望まないと思うがな、フーリが自分のために犠牲になるのは」

「……分かってる。だけど、そうじゃないと駄目だから」


「問08:自分の長所・短所は?」

「……お姉ちゃんのことを意識しすぎることだって言われた」


「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」

「……読書が好き。お姉ちゃんを苦しませた運命が嫌い」


「問10:ストレスの解消法は?」

「……お姉ちゃんと話すこと」


「問11:尊敬している人は?」

「……メルス様とお姉ちゃん」


「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」

「……隙を突かれないようにしている」


「問13:この世で一番大切なものは?」

「……家族」


「問14:あなたの信念は?」

「……メルス様とお姉ちゃんを守ること。お姉ちゃんは私を絶対に見捨てなかった。メルス様も村ごとお姉ちゃんを救ってくれた。だから、恩返しする」


「問15:癖があったら教えてください」

「……話す前に間を空ける」


「問16:ボケですか? ツッコミですか?」

「……ボケ」


「問17:一番嬉しかったことは?」

「……今がずっと嬉しい日々。お姉ちゃんがいつも笑っていられるから」


「問18:一番困ったことは?」

「……そうなる前、捕まったとき」


「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」

「……飲めない」


「問20:自分を動物に例えると?」

「……猫、特定の人にしか懐かない」


「問21:あだ名、もしくは「陰で自分はこう呼ばれてるらしい」というのがあればどうぞ」

「……【英雄】姉妹。お姉ちゃんと同じ位置に立てているのは嬉しいけど、まだまだ届いていないのに……と思った」


「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」

「……お姉ちゃんのインタビューを観た。私のせいで、お姉ちゃんがあんな風に考えていたって思うと反省したくなる」

「今は違うだろ? それに最後に言っていたじゃないか――頑張るってさ」

「……はい」


「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」

「……お姉ちゃんと一緒に、メルス様の役に立つこと」


「問24:自分の人生、どう思いますか?」

「……お姉ちゃんとメルス様に捧げるもの。本当だったら死んでいた、そんな人生なら二人のために使う」

「いのちはだいじに、俺とフーラもフーリの人生を『そんな』なんて言ってほしくない。大切にしてくれ」


「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」

「……あのときに、お姉ちゃんを守れなかったあのときに戻りたい」


「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」

「……お姉ちゃんとメルス様と一緒に過ごしてみたい」


「問27:何か悩み事はありますか?」

「……もう、大丈夫」


「問28:死にたいと思ったことはありますか?


「……病気になったとき、お姉ちゃんに迷惑なら……って思った」


「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」

「……お姉ちゃんとメルス様を守れるような人になりたい」


「問30:理想の死に方があればどうぞ」

「……大切な人を庇って」


「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」

「……お姉ちゃんの方が凄い」


「問32:最後に何か一言」

「……私はお姉ちゃんが大好き」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「はいカット~!」

「……お疲れ様でした」


 結局のところ、あのときフーラが言っていたコンプレックスは彼女に自信が無いから出たことだ。
 確かにフーラとフーリは元は村人、隠された力を解放したとはいえ当初は終焉の島の住民たちに敵うことはなかった。
 それでもはっきりと【英雄】の力は二人の中で目覚め、今では引き分けに持ち込めるようになったそうだ。

 フーラはフーリの方が凄いと言うが、フーリはフーラの方が凄いと言う。――つまり、姉妹は互いに互いが優れていると考える。


「前にも言ったが、フーラはスキルを自身のモノにするのが上手く、フーリはスキルを自身に刻むのが上手いんだよな。だからフーリが早くスキルを習得して、フーラがその後でゆっくりとLvを上げる」

「……うん、お姉ちゃんの話を聞くまではお姉ちゃんの方が凄いと思った。今もその考えは変わらないけど、それでも今までみたいに辛くはなくなった」

「フーラには姉に勝る妹はいないと言っておいたけど、フーリ自身もそう思っているんだろう?」

「……当然」

「フーラもフーリも、相手を思いやる心があるから悩んだんだ。俺みたいに適当に生きてれば兄弟関係で悩まなかっただろうな。フーリもさ、フーラが信じるフーリになってみることにしたんだ。互いに互いが思う最高の自分になってみてくれ」

「……はい!」


 さて、二人の精神的問題も解決された。
 これからより成長することは確実だ。
 ……開花も、そう遠くはないな。



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