AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と賢者モード
夢現空間 自室
太陽が黄色に見える……ことは無かった。
あくまで夢の中の話なので、現実の俺に影響があるわけでは無い。
――ただ、夢の中で行ったことをはっきりと覚えているだけだ。
「……俺、童貞なのにな」
いつものようにベッドの中で目を醒ました俺は、腕をうーんと伸ばしてから呟く。
色んな意味で初めてということもあり、ド素人の俺は何もできなかった……ということも無く、【色欲】の力の影響で一人一人丁寧に喰っていけた。
今回ヤったのは島に従魔組と武具っ娘組+αである。
俺がプレイヤーとして普通に活動していた頃から、このときをずっと待ってくれたフェニやスーたち。
色々と溜まっていた思いを吐き出させ、俺も熱いものを解き放って両者共にスッキリ。
今頃、自分たちの部屋のベッドで目を覚ましている頃だろう。
「……これこそが、真の賢者モードなんだろうか」
賢者の資格を保ったまま、女性たちの中に熱い衝動をぶちまける。
現実ではありえないこの【矛盾】……それは、俺に普段以上の冷静さを与えていた。
全てを見通せるような理性を内に秘めて、昨日起きた出来事を更に回想する。
引き籠っていた息子も、ついに殻を打ち破って立ち上がり、異世界補正の大きさで眷属たちを相手に無双した。
息子がスキルを持っているならば、(長短自在)や(硬軟自在)、(無限再精)や(痛覚緩和)を持っているかもな。
【色欲】の影響なのか、大きさもマキシマイズだったし、常に怒張を誇っていたし、尽きることも無く振り続けられた。
「さて、これからどうするべきか……やることはあるし、一度ヤると歯止めが効かなくなるというのは本当だったようだな。【色欲】の制御はローペに任せれば問題無いが、完全にするのは難しいか。俺は賢者モード中だからここまで冷静でいられるが、このまま何もしないと勢いのままにヤられてしまう」
ローペとは、リープのように俺の人格の一つである。
担当する感情は、話の流れからも分かるように【色欲】だ。
活性条件も……お察しのことであろう。
俺は確かに、仮想現実の中でとはいえ一部の眷属たちと夜を共にした。
その記憶と感情は、共有能力によって他の眷属へと伝わる。
……そう、興奮したことも伝わるのだ。
「あの魔導も直ぐには使えないし、今は――よし、逃げようか」
時間が問題を解決してくれることもある。
感情の制御も時が経てばできるし、暫くは安全な場所に避難しておこうか。
《……お、おはようございます、メルス様》
「おや? アンか、おはよう」
逃亡先を思案していると、何やら緊張した声色でアンが念話を繋いできた。
……気まずい、のか? アンも俺にヤられた一人だし。
だが、俺の変化を見抜いたのだろう。
すぐに冷静になってくれた。
《どうかなされたので? 昨晩の……その、アレが精神にまで影響を?》
「ふむ、恐らくはそうなのだろう。異常なまでに賢者モードになっていてな、今の俺ならばどんな悪魔の誘惑だろうと無視できる気がするぞ」
《……お体に、何か違和感は?》
「いや、体に不備はない。息子が再び不活化したようだが、それも意識すれば恐らく本来の性能を取り戻すだろう。ただ、この話し方からも分かるように、いつもの俺よりも冷静な状態みたいだ」
実際、息子に意識を集中させてみると……どうやら可能のようだ。
今までは必要としていなかったからこそ、息子は仕事をしなかったのか。
冷静沈着など、普段の俺には当て嵌まらないはずなのだがな。
『人生快楽刹那主義』を常日頃から言っているのだから、それは自明の理だ。
《それなのですが……メルス様、幾つか心当たりがあります》
「心当たり? ……ああ、情報系の【固有】スキルのことか」
《さすがです。メルス様が情事を行った眷属の内、意志を持つスキルがメルス様の{感情}とリンクを行いました》
そう言われ、{感情}を深く意識していく。
……確かに、今までと異なる感情が中に内包されているような気がする。
疲れた時は【怠惰】の、性的に興奮した時は【色欲】の胎動を感じていたのだが、外側から繋げられた感情が、今は俺の表面に出ているみたいだな。
ステータスを確認したが、正式に{感情}の中に内包されてわけではないようだ。
あくまで俺とその感情の【固有】スキルの持ち主が交わったことによって、何かしらの条件を満たしたと思うのが正しいのだろう。
「さて、それはまた後日考えるだけの余裕がある、だが、眷属たちが強行に走るまでの時間は然程ない。アン、これから俺は少し間を明けるために出掛けてくる。その間アンには眷属たちの沈静化を頼みたい。……頼めるだろうか?」
《お任せください、メルス様》
そう言ってくれたアンに感謝する。
眷属たちは献身的に俺を支えてくれる。
今までも、そしてこれからも……愚鈍な俺は眷属たちに頼っていくだろう。
どれだけ尽くそうと願っても、最終的に尽くすのはいつも眷属たちだ。
人生はそんなもんだ、そう纏めることもできるだろう。
だがそれでも、せめて足掻いていこう。
この身が果てようと
この身が朽ちようと
いつか必ず
誓ってみせる
どんな形であろうと
俺自身の手で
眷属全員を
――幸せにしてみせると。
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