自称偽善者は電脳異世界に揺蕩う(旧:AFO ~(自称)偽善者のVRMMO(?)記~)

山田 武

偽善者と水着イベント後半戦 その02



 とあるダンジョンの奥深く、プレイヤーたちは果敢にその地を攻略しようとした。
 それには、それだけの価値がその場所にあるからである。

 ――レイドモンスターの移動範囲制限。

 それが、この地を踏破することで得ることのできる報酬であった。

◆   □   ◆   □   ◆

 一部の勇敢なプレイヤーたちによって、既にレイドモンスターの情報は暴かれた――

 凶暴ウツボ ギャングモーレイ
 海鯨火山 マグマホエール
 魔梶木 ウエポンマーリン
 針万本 ポーキュマイン
 猪突鮪 ロケットツナ
 王珠貝 シージュエル

 あくまで一部ではあるが、プレイヤーが現段階で手を出せたのはこれらが全てだ。

 話を戻そう。
 何故、プレイヤーたちが先のダンジョンを攻略しようとするのか。
 何故、移動範囲を制限しようとするのか。

 ――それはレイドモンスター同士の共闘を防ぐためであった。

 後半戦の開始序盤、勇敢なプレイヤーたちが発見した中でも最も弱い王珠貝を討伐するという作戦が、考えられていた。
 計画は順調に進み、王珠貝を死の間際まで追い詰めることに成功した――その瞬間、別の場所に居たはずの凶暴ウツボがプレイヤーたちに襲い掛かり、実行班は全滅したのだ。

 凶暴ウツボは何度もプレイヤーの攻撃を防ぎ、王珠貝はその間に体力を戻したため、作戦は失敗となった。
 そうした敗北を迎えた後、自由民からの情報によって移動制限の話を聞いたプレイヤーたち……何をするかは決まっているだろう。

◆   □   ◆   □   ◆

「……なんだよ、あの魔物。今までのヤツと全然レベルが違うじゃねぇか」

 本来、このダンジョンはすぐに攻略できると運営側は考えていた。
 できるだけ強い魔物を減らし、仕掛けられた罠も簡単に解除できる物を設置……あくまで、移動制限を早急に掛けれるようにして居たはずだったのだ。

 しかし、運営側も想定していなかった魔物が、ダンジョン内でプレイヤーたちを待っていたのである。

『やはり、■■■だけが特別なのか。器としては使えそうだが、入れる物がここまで汚いと吾も試す気が失せる』

「……何を、言って」

『しかし、死に戻りとやらの原理を確かめるにはちょうど良い。今は自由の身であるし、少々実験をしても構わないだろう』

「お、おい。止めろ、来るな。や、止めくてくれぇえええ!」

 それは、プレイヤーに恐怖を与えた。
 ゆっくりと近付いて来た白骨化した掌。
 虚空を映す空洞の瞳に緑の炎が宿り、プレイヤーのナニカを実験動物のように見つめている。

 この後、死に戻ったプレイヤーがこのダンジョンに来ることは無かった。

◆   □   ◆   □   ◆


 一部の眷属に助力を求めた。
 俺独りでも分身すれば、全ダンジョンをカバーできそうだったが、頼ることも大切なのでそう要請したみたのだ。

 すると、忙殺されている者を除き、全員がダンジョンの防衛に参加してくれたよ。
 過剰戦力とも言えるが、守れないよりはマシだと思って割り切った。

 ……やっぱり、報酬を期待しているのだろうか。
 そこら辺を言うのを忘れていたから、後で何を要求されるのか分からない。
 まあ、俺の我が儘に応えてくれたんだし、俺もある程度は応える予定だけどな。


「――でもな、さすがにGMに苦情が来るレベルで拷問しろとは……言ってないよな?」

『こ、これはあくまで、メルスのことを思ってだな……』

 そう言って、俺を説得しようとするネロ。
 全く、やり過ぎにも程があるだろうに。


「確かに、死に戻りに関しては俺も気になっていたぞ。自分ができなければそのままポックリ死ぬかも知れないからな」

『おお! では――』

「だけど、さすがにやり過ぎなんだよ! どうやったら廃人になるまで嬲るように拷問ができるんだ!」


 ダンジョンの最奥で、マッドサイエンティストが狂気の実験を行っていた。
 既にこの場で・・・拘束されていた被験者は解放しており、安らかな顔を浮かべて死に戻りをしたよ。


『うぐっ。……しょ、少々懐かしい感覚に襲われてな。す、少しだけ張り切ってしまっただけだ』

「……ハァ。それで、何か解ったのか?」

『そ、そうだ! 吾もただ、意味も無く痛めつけたわけではない。肉体の再構成に関して調べていたのだ!』

「ふむふむ、詳しく聞いていいか?」


 肉体の再構成。
 つまり、死んだ後の体が何故新品のような状態になっているか、ということだろう。
 ……これを応用すれば、ずっとマイサンが新品状態を維持できる、なんて考えが思いつく頭脳が虚しいな。


『再構成、と言っても全てが元通りになるわけでは無いようだ。あくまで本人が不必要と考える損傷、それだけを選別して前の状態へと回帰させる……それが死に戻りなのだ』

「えっと、要は受けたダメージを無かったことにしてもらっている、ということか?」

『そうだ。ただ、全ての者に使おうとするから効果が薄いのだろう。故に、高位の呪術が籠められたものを消すことはできない。吾の刻んだ呪印も、残っているようだしな』

「まあ、プレイヤーはいっぱいいるからな。なら、加護を授かった奴は綺麗サッパリ元通りになるのかな?」

『いや、それはどうだろうか。再構成を担当する神の加護ならばともかく、それ以外の加護では意味は無かろう』


 確か、その担当は……誰だ?
 今度レイたちに訊いてみることにしよう。


『今は、呪印を通じてデスペナルティとやらの調査中だ。どうだ、吾の行動には明確な目的があっただろう』

「うーん、確かにありと言えばありなんだけどさ……それやったの、一人だけだろ?」


 そう訊くと、体を強張らせるネロ。
 ……うん、決まりだな。


「被告、ネロは有罪ギルティだ。その罪、強制的に体で贖ってもらうぞ」

『や、止め――』


 この後ダンジョンの中に、嬌声が響き渡ったという。



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