AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と水着イベント前半戦 その08



 フーカとのゲームも多岐に及んだが、現在は家庭用ゲーム機を使うものになっていた。
 大乱闘であったりカートレースだったり、パーティーをやっていたのだが……暫くやっていると、お客さんがこの場に現れる。


『……何をしているのですか? 二人共』

「『あ、レイ(姉ぇ)。一緒に遊ぼう?』」

『しません。それより04、メルスさんに名前を貰ったのでしょう?』

『うん、フーカだってさー』


 あっさりとレイに報告するフーカ。
 レイはそれを聞くと、俺に向かって頭を下げる。


『そうですか。……メルスさん、妹のためにありがとうございます』

「いやいや、俺だってこうして会える機会が貰えたことに感謝だな。いやー、フーカとのゲームが楽しくて楽しくて……」

『ほんとだよー。世界最強って、ゲームも含まれてるのかと思っちゃったじゃーん!』

「……最強ゲーマーは無理だよ」


 ゲームの腕自体は、アリやカナタやアイリスとの遊びで磨かれている。
 色んなゲームを試しているのだが、どれも最初は勝てないんだよなー。
 <澄心体認>が発動するのか、無意識的に負け続きだったゲームもだんだんと成績が上昇していき……最終的には勝てる。

 クーと一緒に居る時は例外だ、どんなゲームであろうと全戦全勝である。
 彼女は、あの世界最強のゲーマーをイメージして生まれた存在だ。

 ある時は頭脳を活性化させ、理論詰めた戦い方を。
 ある時は相手の裏の裏まで読み切る、騙し合いを制する戦い方を。

 ……説明がアレだけど、要するに『ゲームTueee!』なんだよ。


 さて、話を戻そうか。
 レイはゲームもやらず、俺とフーカのプレイ光景を観ていたのだが……遂に、俺たちへ干渉してきた。


『――二人共、一体何をしたのですか?』

「『え? 何をって、何を?』」

『元は、既に取れているのです。二人共、一体何処を改竄したのですか?』

「『…………ハハハハハハッ!』」


 そう、レイはそれを尋ねてきた
 俺とフーカはただそのことを笑い、ゲームへと再び集中する。

 ……ただ、ガタガタと手が振るえ、今まで通りのプレイなどできていなかったが。


『先程、エリア内の一部が隔離されました。その場所に与えられた名称は――海底神殿。そう、丁度メルスさんが拠点として使おうとしていた場所ですね』

「『…………』」

『プレイヤーがあの場所に着く可能性は低いです……低いですがゼロではありませんよ。貴方たちが行ったことは、その可能性を摘んでしまう、認めてはいけないことなのです』

「『…………』」

『二人共!』

「『は、はいっ!』」

『正座……しましょうか』


 俺たちは黙って、膝を揃えて畳んで座る。


◆   □   ◆   □   ◆


「いやー、怒られたなー」
『うーん、怒られたねー』


 ピコピコとコントローラーを操作しつつ、フーカと会話をしていく。

 レイは既に、この場には居ない。
 俺とフーカのやらかしたことを解決するために、シンクやアオイ、まだ俺が会っていないGMたちと共に、作業に勤しんでいることだろう。


 ……いやぁな、イベントに干渉して色々と遊んでたんだよ。

 ――フーカの権限と俺の[神代魔法]。

 これがあると、結構楽しめるのだ。
 今回の場合、<干渉魔法>でフーカの権限を少し借り、<生成魔法>と<常駐魔法>でそれを結界という形で顕現させる。
 すると、プレイヤーが絶対に入ることのできないエリアが誕生するのだ。

 俺の張った結界の消費MPはデカ過ぎると思い、冗談半分でフーカと話し合ってみた。
 すると、ニヤリと笑って俺の提案に乗ってくれたよ。

 そうしてできた結界は、いわゆる侵入不可領域になった。
 GMは、この世界の管理人でもある。
 彼女たちがそこを入れないように定義付ければ、世界の住民は入れなくなるのだ。

 プレイヤーもまた、こちら側で用意された肉体を使って活動をしている。
 それは即ち、この世界の者であるということだ。
 フーカの権限よりも上の権限を持っていなければ、あの場所に行けなくなる……まあ、そんな感じにしてみたのさ。


「でもさー、できるってことは分かったな」

『うんうん。イベント限定だけど、自由が手に入ったねー』


 あっさりとそれを告げるフーカ。
 このタイミングで<千思万考>で思考していたことを求められたので、思い切ってフーカに尋ねてみる。


「フーカ。お前ってさ……愉快犯だよな?」

『そうだけどー? それがどうしたのー?』

「今までにやってきたゲームで分かったけどさ、フーカって偶にランダム性の高いことをしてるだろ?」

『うん、してたよ』

「そこから発展した考えなんだが……フーカは、自分のための楽しみを持たないんじゃないのか?」

『うんうん、その通りー!』

「……はいはい、俺の嘘発見スキルが発動してるぞー。……もうちょっと、深いトコまで言ってみようか」

『別に、そんな訳ありなんかじゃ――』

「そうだなー、わけはないよな。でも、別のことはあるよな」


 沈黙するフーカ。
 わけっていうのは、そのことに関する意味や理由ってことだ。

 フーカは確かに、訳ありでは無い。
 しかし、それはフーカ以外には・・・・・・・ワケがあるということでもある。


「ま、俺ってば偽善者だし? 頼まれれば大抵のことはやっちゃうぞ。……報酬はちゃっかりもらう予定だけどな」

『ふーん……メルメルってば、わたしのことが欲しいのかなー?』


 いやんっと言ってわざとらしく、艶めかしい……と彼女自身が思っていそうなポーズを取り始めた。
 全然そのポーズに艶めかしさは感じないのだが、敢えて告げよう――。


「ああ、一目見た時から思っていた。お前がその気になってくれるなら、俺はお前を頂きたいと考えている。誰かのために、自分という存在を捨ててでも費やす献身さ……それがめっちゃ可愛いと思ったんだ」

『……ふ、ふーん。そ、そんなにストレートに言っちゃってー。わわ、わたしはそんなに安くも易くも無い女じゃないのさー!』

「で、デスヨネー」


 ……フーカの顔は、恥ずかしくて見ることができなかったよ。
 思い切って伝えてみたが、何処からか、一蹴されるた心がブレイクする幻聴が聞こえてきそうだ。

 あ、この後行ったゲームは、何故かフーカが自爆を連発したから勝てたぞ。



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