自称偽善者は電脳異世界に揺蕩う(旧:AFO ~(自称)偽善者のVRMMO(?)記~)

山田 武

偽善者と水着イベント前半戦 その04



 さて、今回はイベントエリアについての説明をしようか。

 イベントエリアは巨大な島と海を舞台にした場所である。
 島には森や川、山など自然豊かな場所場所が存在し、海には遺跡や海溝等が水着着用時のみ、散策することができるようになる。

 プレイヤーはそんなエリアを駆け巡り、眠るお宝を探していく。
 時に自由民から情報を訊き、時にスキルや魔法で見つけた反応を求め……まあ、方法は自由であるが、とにかくイベントの前半は散策を行っていくのだ。

 また、魔物も弱いのから強いのまで何十種類も存在している。

 海の中やマリンゴブリン、島の森にはシルクスパイダー等々……海っぽい魔物や水着の素材になりそうな魔物などがいるな。

 実際、俺も今居る海底神殿に行く間にかなりの数の魔物と戦闘を行った。

 海蛇シーサーペント、悪魔蛸デーモンオクトパス、電気鮫エレクトリックシャーク……どれもこれも美味しそうな魔物だったよ。

 そうして魔物を倒し、素材を集める戦闘職のプレイヤー。
 素材を受け取り、水着を作る生産職のプレイヤー。
 互いに協力してベストな水着を生み出す。
 そうすることで、後半戦も盛り上がれるという寸法だ。

 なので、普段から生産職を蔑ろにする輩たちは、既製品を使うしか無くなってしまう。
 特に特別なスキルも付かず、最低限水着としての機能だけを入れたような物をな。


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「~~~~♪」

 チクチクと針を動かし、糸を紡ぐ。
 素材としているのは、この島で集めた素材の数々。
 それらを糸状に変質させているのだ。
 鼻歌交じりにやっているのだが、普通じゃあそうもいかないと思う。

 糸への変質には、強いイメージが必要だ。
 素材を細く丈夫な繊維として解いていき、少しずつそれを束ね糸とする。
 はてさて、物事を一つしか考えられないプレイヤーはどうやって行うのだか。

 作業を順調に進め、糸玉を作っているとクラーレが様子を見に来た。


『メルちゃん、どうやっているのですか?』

「~~♪ 素材を糸にしているんだよ。みんなでも、生産のスキルを使えば簡単にできることだね」

『……メルは、それを使っているの?』

「ちょっとだけね。全部スキルに任せると、自分のイメージ通りに糸ができないんだ」


 彼女たちはイベントエリアを巡り、幾つかの魔物の素材とスキル結晶を手に入れた。
 素材はかなり質の良いレア物、スキルは水着を製作するためのスキル。

 まさに要求通りの品を集め、彼女たちはこの場所に戻って来たのだ。
 さすがの俺も、まさかこんなにも早く集めて来るとはビックリである。


 作業は進みに進み、彼女たちが持ってきた素材は全て、無事糸玉の状態になった。
 質は加護と称号で向上し、既にその素材を落とした魔物よりも上位互換の魔物の素材と同じ性能を誇れる代物になっている。


「あ、みんなにはこれを」

『紙と、ペンか?』

「こっちでデザインを決めても良いけど、どうせなら自分で選ぶ方が良いよね? だからみんな、こんな水着が良いって思う物を描いてみて?」

『で、デザイン?』

「やっぱり、自分で決めた方が嬉しいものだからね。駄目なら駄目だって言うし、とりあえずやってみようよ」


 まあそんな説明をして、彼女たちに水着のデザインを決めてもらう。
 ……と言うかだな、男が女性物の水着を作るのに、デザインを決めるなんてかなり恥ずかしいことをやってられるか。
 俺が作るということは即ち、少しでも俺がこんな水着を着てほしいなー、と心の何処かで思っているということの証明になってしまうのだ。

 それだけは防がなければならないし、やってはならない禁忌だと思う。
 故に彼女たち自身でそれらを決め、俺はそれの通りに作る……それがベストなんだ。


 彼女たちが考案したデザインに従い、色取り取りの糸玉を解き、水着へと編んでいく。
 どんな衣類であれ、大体の物は繊維が結び付いて形を成しているのだ。
 ならば(生産神の加護)で作り方がなんとなく分かる俺に、水着が作れないはずなどないのだ。

 神眼を幾つか使い、本来のレシピでできる水着の構成を確認。
 それを再現するように、二本の手(&とある見えない手)が器用に動いてそれを再現する。

 ついでに水着用の付与魔法を、繊維で魔方陣を描くようにして再現。
 確か効果は……水中呼吸補正、今イベント時のみの能力値補正、それに……振動緩和と摩擦軽減、そしてポロリ無効だったか?

 最後のは男の希望を絶望に塗り替える能力だが、俺は充分に満足したし、かと言って他の奴に見せるワケにもいかない。
 一部それは必要ないんじゃないかって奴にも、ちゃんと入れておく……何度も言うが、山に貴賤は無いのさ。


「後は色を付けて……はい、完成だよ!」

『うわぁ! 本当にわたしの描いたデザイン通りですね!』

『……描くのと着るのとじゃ、やっぱり別かしら?』

「ん? 似合っていると思うよ? ますたーたちはスタイルが良いからね」

『……憎い、この憎しみなら人が殺せる』

『コパン、急にどうしたのよ』

『クッ、みんなには分からないでしょうね。アタシのこの気持ちは!』

『……ああ、そういうことか』

『コパンは~、この中で一番~――』

『キェエエエエエエエエ!!』


 平野が一人叫んでいるが……大丈夫、後で大きくなっていくさ。
 それは(未来眼)の御墨付きだぞ。

 完成した水着と、そこに収まるであろう果実を想った恨んだ少女に、一先ず黙祷を……。



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