自称偽善者は電脳異世界に揺蕩う

山田 武

偽善者と水着イベント前半戦 その03



「うーみーー!!」

『もう、メルちゃんったら、そんなに急がなくても、海は待ってくれますよ』


 はい、そんなこんなでメルモードならば問題無し。
 ――イベントにはバッチリ参加します!

 大体、海ぐらいなら第一世界にも第四世界にも大量にある。
 俺が求めているのは、イベントの開催地として海で遊ぶことなんだよ。
 普段では無いような何か、それのために暗中模索するそのワクワク感。
 実にエキサイトするじゃないか!

 ひらひらのついたワンピースタイプの水着で、海のを走り回る。

 え、羞恥心? もう捨てましたよ。
 それに、一部のクラーレたちにしか見えないように細工はしてあるから、俺の奇行も大半の者は気にせずにイベントを楽しんでいるさ。


「ほらほら、ますたーたちもー」

『……さ、さすがに海の上を歩くのは……』

「そんなこともあろうかと――はい、一緒にますたーも歩けるようにしたよ」

『え? ……うわぁ、本当に歩けますよ!』


 クラーレに魔法を掛け、水面を歩けるようにした(ついでに、闇属性の魔法で周りからの認識を薄めておく)。
 別に(水歩)をいつものように貸し与えても良かったのだが……それだと、この後の展開に対応できなかったしな。


『みんな、見てください! 私、水の上を歩いてますよ!!』


 楽しそうにバシャバシャと動くクラーレ。
 彼女が選んだ水着と果実が動作によって揺れ動く姿を、俺の神眼が全力で視ていた。
 別に、大山が鳴動しているわけではなく、ジャストに手の中に収まりそうな果実の持ち主なのだ。
 嗚呼、やはり貴賤は無いのだな、山には。


「うんうん、ますたーも楽しんでくれて何よりだよ。それで……みんなはどうする?」


 浜辺で彼女が楽しむ姿を観ていた、五人の仲間たち。
 俺は敢えて、そちらを向いてそう尋ねた。

 まあ、この後は水上鬼ごっこをしたとだけ記しておこう。


◆   □   ◆   □   ◆


 そして休憩時間となる。
 三では普通の少女であろうとも、こちらの世界では能力値という概念が普通とはかけ離れている祈念者プレイヤー

 海面を蹴れば水が弾け、海水を飛ばせば小規模な津波が起きる。

 そんなダイナミックな鬼ごっこが繰り広げる姿を眺めながら、予め用意していたビーチパラソル(認識阻害効果付き)を広げていた。
 そりゃあもう、実に揺れていたもんさぁ。

 ビニールシートを敷き終えた時、そんな彼女たちは戻って来た。
 水の滴った髪をこちらに来る際にフルフルと振るって落としていたのだが……なんか、妙にエ□さを感じるもんだな。
 水も滴るイイ女とは、こんなにも素晴らしい者だったのか……。

 え、眷属? 色々と超越しているから例外として扱ってくれ。


『ふぅ、疲れたわ。メル、準備してくれていたのね、ありがとう』

「いいんだよ、ますたーたちに楽しんでくれれば私も嬉しいから。――はい、今日は海だから海の家っぽい食べ物を集めてみたよ」

『わ~い、いただきま~す!』


 プーチを筆頭に、早速用意した食べ物を手に取り始める。
 焼きそばやカレー、かき氷、焼きトウモロコシなどを主として並べ、俺の趣味でシャイ煮や堕天使の泪等のどこかで見たことのある物を混ぜてある。
 後からそれを出したのだが……彼女たちは一旦食事を止め、それを観察するような目で見詰め始めた。


『……何処かで、見たことがあるのだが』

「うん、ちゃんと食べられるよ♪」

『メルちゃん、これってどうやって――』

「ちゃんと、食べられる、よ♪」

『……う、うん』


 ツッコミをさせてはいけない。
 少々の威圧を織り交ぜ、完全な黙殺を計ってみる。
 どうやら無事成功したようで、会話は未だにするものの、並ぶ料理について質問することは無くなった。


「さって、みんな食べ終わったけど……ますたーたちはこれからどうするの?」

『わたしたちは、水着を探しに行こうと思います。生産スキルは持ってませんし、素材があってもどうしようもありません。そうなっては既に完成済みの物を使うしか――』

「え? 作れるよ、ほらっ」


 可愛い子には好い物を。
 そんな考えが俺に行動を促した。
 試作段階で作られた訳有り水着を取り出して、食器を片付けたシートの上に展示するように並べていく。


「ちょっと色々とあって準備できたけど、水着に必要なスキルが足りないんだよ。この場所で取れる素材とかスキルがあったら、多分みんなに似合うような水着が作れると思うんだけどなー」

『……メ、メルちゃん。これ、自分で作った物なんですか?』
『……買った、わけじゃない、わよね』
『なんというか……バリエーションに富んでいるな』
『こ、こんな際どいのも、あ、あるのね』
『メルちゃん、これ、着てみたい!』
『メルちゃんって~、ほんと~に器用なんだね~』

「偶然だよ、偶然。それに、水着用のスキルが無かったから不完全なんだ。デザインだけは多分良いと思うんだけど……みんな、水着はデザインを気にしない人?」


 彼女たちは立ち上がり、イベントエリアの徘徊を始めた。

 そう、全ては魔物を討ち滅ぼし、スキル結晶を手に入れ、最高の水着を手に入れるためであった!



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