AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者とイベントアイデア 前篇



夢現空間 会議室


「第一回、イベント開催についてー!」

『やんややんやー!!』

「グラ、ありがとな。さぁ、そんなワケで闘技大会の報酬でイベントを開催する権利を手に入れたんだが……何がしたい?」


 会議室なんてものもある夢現空間、そこで今日は会議が行われていた。
 上座に座り、司令っぽいポーズを組む。
 何だか少し、カッコイイと思えるのは何故だろうな。


「判定役は俺とレンとリオンでやらせてもらうぞ。レンはダンジョンのイベントを偶に考えてくれていたし、リオンは運営神だ。そして俺は……なあ、なんで俺は考える側になったらいけないんだよ」

主様マイマスターはやること為すこと全てが規格外ですので、ご自愛頂けると……』

『そちが考えたものでは、誰もクリアできないイベントになるのだ。運営神として、さすがにそれは看過できないのだ』


 運営の仕事を反逆した奴が何か言っている気がするが、俺も折角アイデアを考えていたのに……と少し悄気しょげてしまう。

 駄目かな?
 プレイヤーたちに無人島ダンジョンで過ごしてもらおうとしていたんだが……。


「まあ、いいや。今回は眷属の中でも抽選で選ばれた方を呼びました。……うん、人数が多過ぎると意見が纏まらないからな」

『まっかせてー!』グラ
『が、頑張ります!』フーラ
『やってみるわ』ティル

「うん、今回決まろうが決まらなろうがもう何人からか訊く予定だから、気楽に考えてくれて構わないぞ」


 ほら、さすがに一回で意見を纏めようとすると意見が凝り固まりそうだしな。
 多過ぎるのも問題だが、サンプルは多い方がイイと思う。


「さぁ、時間だけは充分にある。リラックスできる環境も整えてあるから、是非素晴らしいアイデアを生み出してくれ。……いや、しなくてもいいかもな。そうなるなら俺が直々に考えて――」

『メルスにやらせないためにも、頑張って考えるのだ!』


 おいおい、そんな言い方をしたら誰もやる気なんて『分かった!!』……あ、あの……俺にも心は有るんですよ?


◆   □   ◆   □   ◆


 機械の駆動音が鳴り響き、俺の体を揉み解していく。
 体を振動されながらポップコーンを口に含み、噛みしめる。
 キャラメルの甘さが弾け、つい頬が緩んでしまう。


「……嗚呼、気持ちいい。そして美味い」


 会議室の椅子はマッサージ椅子。
 腕置きにはカップホルダーも付いており、そこから希望のジュースとお菓子が出てくる仕掛けもある。

 眷属に不必要とされた俺は、こうしてただ人形のようにボーっとしてればいいんだよ。


『何落ち込んでんのよ、主なんだからドーンとしてればいいの』

「……え? 俺、この話し合いに必要?」

『…………ひ、必要よ。私たち、にはね』

「違う違う。この話し合いに、俺は、本当に必要なのか?」

『…………必要よ』


 目を逸らしたティル。
 ……うん、必要ないみたいだね。
 アハハッ、【怠惰】なオーラがなんだか体から溢れ出ている気がするや。


「嗚呼、お茶と麩菓子が美味いなぁ……。どうせ必要とされてないんだし、ずぅっとこうしてようかなぁー」

『メ、メルス様! 大丈夫ですよ、メルス様はみんなにとって必要な方です!』

「……うん、みんなそう言ってくれるからそれは頑張って信じようと思っているぞ。だけどなフーラ、こういってはなんだけど――お前は今、俺を必要としているか?」

『…………』

「うん、良いんだよ。自分に正直になってくれ。――嗚呼、お茶が美味い」

『…………入ってませんよ、お茶』

「おっと、こりゃあうっかり。俺の存在感と同じように、お茶が無くなったのにも気付けなかったよ」


 ちなみにだが、自分でもめっちゃ面倒だと言うことが分かる……が、一つもアイデアが出ないで時間とお菓子と飲み物だけが減っていく現状に、少しだけ凹んだだけだよ。
 ……せめて、アイデアを一つでも挙げてから、飲食してほしかった。


◆   □   ◆   □   ◆


「はい、タイムアーップ! 宴もたけなわ、そろそろアイデアをお願いしまーっす!」


 うん、あれから少しだけ時間が過ぎた。
 マッサージの心地良さにグダグダ感も解れたので、こうしてテンションを戻している。


「それじゃあ最初は……グラから」

『はい! ぼくは料理大会が良いと思う!』

「うん、グラらしいアイデアだけど……全員ができるのか?」

『魔道具でどうにかならない?』

「ああ、それなら可能か。レイたちに元々Lvの高い奴のは制限して貰えば良いし……、可能、ではあるな」

『わーい! なら、審査員はぼくたちで!』


 結局のところ、狙いはそこだよな。
 喰べることがモットーのグラだし。


「……はい、次はフーラが頼む」

『は、はい! 私は、スゴロクをやってみるのが良いと思います』

「ほぉ、スゴロクか」

『メルス様とやってみて、アレがみんなで楽しめるものだと思いましたので……どう、でしょうか?』

「うん、ありがとう。参考にする」


 随分前の話だ。
 リーンの子供たちと一緒にスゴロクをやったことがあるんだ。
 ……ビリでゴールだったけど。
 やっぱり、ファンタジー的なマスを用意したのが不味かったのかな?


「それじゃあ最後はティルだな、どうぞ」

『狩り、かしら。倒した敵の数や強さで参加者にポイントを与えてそれを競う……そんな感じね』

「そういうの、国でやっていたのか?」

『そうよ、定期的に魔物を間引くためにやっていたの。だからそれを、今回のイベントでしてみればと思ったのだけれど……』

「狩り、か。それなら俺の無人島生活でも別に同じだったんじゃ――」

『『全然違いますうのだ』』


 一瞬で否定され、再び落ち込んだ。
 ……でも狩りか、一番高得点の魔物はやっぱりドM銀龍ソウになるのか?

 ――それって結局、無理ゲーじゃないか。



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