AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と迷いの森 その01
迷いの森
初めて足を踏み入れたその森は、とても霧が深い迷宮のような場所であった。
……結構似たような場所の経験が多いな。
定期的に"天魔迷宮"の森林フィールドにも霧を生成するようにしたし、『彷徨の森林』も時々遊びに行ったりするしな。
「しっかし、なんとも視界が晴れない森だよな。ホ°ケモンだったら絶対に霧払いを試している所じゃね?」
『…………』
「大体、もやもやしている気分に霧払いをして晴れるならさ、もう世界には悩みを抱える奴なんていないよな。なんかこう、霧払い屋的なことをすれば絶対売れるぞ。な、お前もそう思わないか?」
『…………なんで、俺にしたんだよ』
「そりゃあ、条件がエルフだったからだよ」
『今の俺、ダークエルフだよ!』
「変わらん変わらん。それと、ツッコミが微妙だから5点だ」
『何の点数!?』
そう、今回の監視員は我らの誇るダークエルフのカナタ君である。
アバターとして作られた肉体なためか(、それともコイツが凝ったからか)、正に神の造形と言っても過言では無い愛らしさと美しさを持っているぞ。
今回森に行くにあたって、俺が出した条件はただ一つ――「行くのは森だし、森人系の奴にしてくれ。ただし、天然ものだけ」だ。
もちろん、同じく森系……というか森の覇者であるユラルがケチを付けて来たのだが、そこは俺のエルフに対する(特にそこまで)熱い思いを語ることで諦めていた(渋々だけれど)。
そして選ばれたのは、唯一の森人系種族であったカナタなのである。
口ではどうこう愚痴ってはいるものの、既にパートナー(意味深)であるコアからうきうきと支度をしていたという情報を入手済みだしな。ただのツンデレとして受けいれよう。
それに、折角別の世界の来訪者なんだし、結界をかなり本気で張っている今ぐらいは、楽しんでいても罰は当たらないだろうよ。
「大体、お前だって霧は平気だろ? 流石、森の種族は素晴らしいですね。俺は称号が無いと多分迷ってたって言うのに……」
『いや、因子を使えよ』
「どうせ使うなら、ハイなエルフの因子が良いからさ。見つかるまでは普通のは極力控えてるんだよ」
『無駄なことを……』
「あぁ? 無駄だと!? 何処かのおっさんが相対した【傲慢】な奴ならともかく、傲りを持たない高貴で礼節を弁えるエルフなら会ってみたいだろ!」
『そ、そりゃあ……まぁ、そうだな』
「…………」
『おい、そのメモ帳はなんだよ』
「何って、コアへの報告書――っと危ねぇ」
『寄越せ! それを見られたら、暫くアイツの部屋から出て来れねぇじゃねぇか!!』
「……チッ、元童貞のクセに」
割とアレな塔を築いているカナタとコアに関しては置いておくとして、今は森の探検に集中しようか。
偶に魔物が現れるのだが、霧の深さ故に存在を視認する前に倒してしまっている。
視覚が奪われていても、他の感覚があるからな。
俺とカナタは、そうして見つけた魔物を弓で射抜いて倒し続けている。
後でその魔物を確認して視ると、大体がミストとかフォレストと言った単語が名前に含まれていた。
やっぱり、森といえばそういう感じなんだな、と思ったよ。
「カナタ、なんかこうエルフレーダー的なもので森の全てを把握できないか?」
『……できるワケ無いだろう』
「ま、マジかよ……。俺、今回はそれ頼りで来た筈だったのに」
『息をするように嘘吐くんじゃねぇよ。どうせ、自分で全てできるんだろ?』
「その通りだな。今回も、何も言われなかったら一人で行く予定だったんだし……」
あくまで、レンに根負けした結果が今の状況である。
その前段階ではソロでの冒険を想定していたので、一応の準備はできていた。
『それで、ここでどうしてプレイヤーが死に戻りをするか……分かってんのか?』
「んなもん、王道のアレに決まってるだろ」
わざとらしい隙だらけのポーズを取りながら、俺とカナタはゆっくりと歩いていく。
そうして、少しの間会話をしてると――。
ヒュンッ
「よいしょっと……やっぱり来たな。ほら、これで確実になったよな」
『ここの原住民の仕業かよ』
「そうそう。しかもさぁ、プレイヤーを狩ればLvも上がるだろ? そうすると今まで以上に強い奴が狩れる……負の連鎖だな。いつまで経っても終わらないじゃないか」
飛んで来た物を手放すと、地面には二本の矢が落ちる。
プレイヤーって、ある意味メタル系の魔物並に溜め込んだ経験値が多いからな。
狩れば狩る程、その美味しさに気付いてしまうだろ。
だからこそPKを行う者もいるんだし、更にそれを狩るPKKも存在するんだろうさ。
……あれ? PKKの方は関係無いのか?
まぁともかく、メタルなブラザーズよりは優秀な彼らは美味しい経験値だってワケだ。
「全く、今のプレイヤーなんぞ百歩譲ってもはぐれたメタルなだけだろうに……。せめてキングになるまでは手を出すなよ」
『それで、メルスはどうするんだ? そのメタル狩りに特化した奴らを』
「メタルハンターもメタルライダーも残念なことにテイムできないからな。カラーチェンジで誤魔化すのが精いっぱいだ。だけどさ、こっちの世界の自由度なら、できるんじゃないのかな?」
"収納空間"からいつもの鎖を取り出し、矢が飛んで来た方へ向けて発動を宣言する。
「"縛れ、グレイプニル"――はい、終わり」
『――――ッ!』
『……本当にあっさりと終わるな。もっと追跡イベントとか、湖で直接会って裸を見るとかのイベントをこなした方が良かったんじゃねぇか?』
「…………」
『だから、メモを取るんじゃねぇよ!!』
コアへの報告も書き終えたし、早速捕縛した奴の所に行くか。
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