AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と孤児院 中篇
とりあえずクラーレには大人しい気質の子供たちを世話してもらうことにした。
ませたガキどもが人類の至宝に手を出す可能性もゼロではないし、彼女の女神のような慈愛がそれを許可してしまうかも知れない。
そんな事態が起きたならば即座に世界に戦争を吹っ掛けてしまうかも……。
なんてことはほとんどないのだが、温厚な彼女に遊びたい盛りのガキの世話は向いていないだろうという(未来眼)による暫定未来を確認したので――。
「ほら、みんな集ま、れ!!」
「げぶっ!」
俺がクソガキ率いるワンパク組を担当することにした。この孤児院のガキの数は三十人程で、俺たちの世話が必要なのは二十人。
クラーレと俺で半々に分けたので、俺とともに庭にやって来たのは十人である。
「何すんだよ、このチビ!」
「ふぅ……。えっと、誰だったかは覚えていないけど、私がチビなら何か問題がある? 種族の中には背があまり伸びない種族だっているのに、そういうことを言うの?」
クソガキの首根っこを掴んで子供たちを集合させる。何やらいろいろと言ってくるが、そう言って反論してみる。
……うん、ミントなんて未だに大きくなれないことを悩んでいるからな。魔法で大きくしてやるでも良いが、種族として成長すれば大きくなれるので本人が求めるまではそのまま見守ろうと考えているぞ。
「そ、そんなの、お前がチビだからだ!」
「はーい、みんなー! この子が言ってることがおかしいことだって分かるよねー?」
「まあ、確かに……」「山人とか小人は小さいって言うよね」「なのにこの子だけってのも……」「というか、ファイ。いっつも他所の奴にはちょっかい出すよな」「……眠い」
「お前ら……!」
クソガキは周りからの声を聞き、少々苛立ちを感じているみたいだな。まったく、周りの正当な評価に難癖を付けようとは……駄目な奴だ。
「ま、とりあえず遊んでみよっか!」
「これ……何?」
俺が“空間収納”から取り出したのは、箱の中に詰め込まれた懐中電灯のような物。
その中から一つ取り出して説明を始める。
「これはね、『偽戦訓練セット』って言うんだよ。中に埋め込まれた魔石から魔力を生成して、擬似的な武器を作るんだよ」カチッ
『オォォォォ!』
そう言ってから懐中電灯に取り付けられた赤いボタンを押すと、先端から可視化された半透明な物質が放出されて懐中電灯は片手剣へと早変わりする。
子供たちはそんな変化を見て盛り上がる。
そうしたことに興奮するのは遊びたい盛りのガキども共通の事実だしな。
「こうやって自分の作りたい武器をイメージして、みんなで遊ぶんだよ。まあ、とりあえずみんな作ってみようか……君だけは駄目だけどね」
「おい、なんでだよ!!」
箱の中から懐中電灯を取り出して武器を作るガキども――だが一人だけ、それに混ざれていないガキがいる。
ソイツを冷やかな目で見ながら分かりやすく説明してやる。
「うーん。だって私、君からゴメンなさいって聞いてないもん。ほら、早くやらないなら片付けちゃうよー」
「うぐっ。……ご、ごめ……うがーっ!!」
往生際が悪いなー。
クソガキは俺を直接脅す気なのだろうか、地面を強く蹴ってこちらへ駆け寄って来る。
いや、冒険者がそんなに甘いわけないぞ。
それをスッと回避してガキともへ告げる。
「はーい、みんなー。これから彼と一緒にそれの正しい使い方を説明するよー」
「おいっ! 俺はやるなんて一言も――」
「私に勝ったら、私は君のやることに何も文句を言わない。それで良いでしょ?」
「…………分かったよ」
さて、クソガキも説き伏せたし勝負を始めようか。
再び“空間収納”から物資を取り出し、孤児院の庭に設置する。横1m程の板が一定間隔で三つに分けられた、赤と青と黄色の球が鎮座する台座が設置されたステージが孤児院の一角に出現してガキ共の興味をそそる。
「いい? その武器はあそこから行ける場所で使うための物なんだよ。この中はあそこに見える闘技場と同じように、結界で死なないようになってるの。これを使うと、そんな結界を人のために造ってくれる。今回は私と彼だけだけど、それぞれに手を乗せられば、何人でも同時に戦えるからね。──はい、君の分の武器。それを持ったら赤い方の球を触ってね」
「絶対叩きのめしてやる!」
「あ、みんなは黄色の球を触ってね」
全員が所定の位置に着いたら、俺自身が青色の球に触れる。
すると、それぞれの球が連動するように光りだす。
俺たちの視界を真っ白に包み、ガキどもと俺は異空間へと移動する。
◆ □ ◆ □ ◆
仮想空間
「スゲェ」「どこなの、ここ」「この椅子凄いフワフワだぞ!」「……寝やすい感触」
ガキどもの感想はこんな感じだ。
……さっきから最後の奴は寝る関連の言葉しか言ってないな。
なんだか話が合いそうな気がする。
この空間はダンジョン内の闘技場を縮小して造った小さな空間。入って来た人数によって大きさが変わるように観客席の方は設定してあるのでガキが増えようと問題なしだ。
どうでもいいが座席は俺の手作りなので、試合観戦に適した座椅子を丁寧に作り上げてみました。
子供の一人の好評かも頂いたので俺としては少し気分が軽くなったぞ。
「……おい、ここはどこだよ。結界を造るだけなんだろ?」
「うん、仮想空間っていう結界をね。孤児院で武器を振り回してミーラお姉さんが怒らないと思う?」
「……そういや、そうだな。ミーラだったら即没収ぐらいしてくるぞ」
「あ、説明を忘れてた。みんな! 武器を隠したい時は“収納”って叫んでね。一度仕舞うと自分の専用武器として登録されるから、誰に奪われないよ」
ガキどもは次々に『収納』と叫んで体に武器が吸い込まれる様子を見て驚いていた。
……ふふん、そこら辺も俺的にだいぶ凝ったからな。
お蔭で完成に一日費やした名機能だ。
「それじゃあ、そろそろルールの説明をするよ。しっかり聞いててね」
そう言ってからルールを述べ始める。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
17
-
-
2
-
-
37
-
-
23252
-
-
124
-
-
141
-
-
58
-
-
221
-
-
107
コメント