AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と闇泥狼王



 まあ、そんなこんなで妖女としての活動行うようになったわけだが、俺は常時彼女たちと共に活動をしていくわけでもない。


「はい。ますたーにはこれを渡しておくね」

「……これは?」


 クラーレの右手の甲に手を当てると、仄かへその部分が光り……俺が手を放すとそこには、不思議な模様が刻まれる。


「ここに魔力を集中させて私をイメージすると、その場所に私が召喚されるよ」

「あれ? メルちゃんは、わたしたちと一緒に冒険しないんですか?」

「ますたーたちは、この世界にずっといるわけじゃないからね。私はこの場所とは違う世界で、ますたーに呼ばれるのを待っていることになるんだよ」

「そう……ですか……」


 眷属印の形を少し崩した模様をクラーレに刻み、渡しておいた。
 結晶と同等の効果を持たせてあるので、使えばメルが召喚されるだろう。


「あ、ますたーたちは確か魔物を討伐するためにここに来たんだよね? 魔物の死体……どうするの?」

「メルちゃんが全部倒してくれましたし、今回は違約金を払って諦めようかと思っ――」

「ゴメンね。素材の方は私が持っているから今渡すよ」


 クラーレの言葉をあえて遮り、<複製魔法>で用意した闇泥狼王の素材をその場に置く。
 戦闘中にデータは取ってあるので、全身を複製コピーしてから解体して取り出してみた。


「これで大丈夫だよね?」

「も、貰ってしまっていいんですか?」

「うん、私には必要のない物だからね。それが、これからますたーにお世話になる分のお代だと思ってよ」

「こんなに貰えませんよ!」


 そう言って粘るクラーレを、他のメンバーたちとともに説得して強引に渡しておいた。
 ……まあ、こっちからしたらただのコピーだしな。全然困らないんだよ。



 その後は、彼女たちと別れて行動を行う。
 彼女たちは、ダンジョンボスであった闇泥狼王を倒したことで出現した魔方陣に乗って地上へ向かい、俺はダンジョンの奥に隠されたコアを回収するために奥地へ降りる。 

 そして現在、コアを“空間収納ボックス”に仕舞った俺は、本物の闇泥狼王の死体を取り出し魔法をかける(念のため、元の姿に戻ったぞ)。


『……むう。本当にできたのか』

「だから言っただろう。あとで仲間も蘇生させるから安心しろ」

『感謝する。私たちも本来は争いなどしたくはなかった。しかし、住処を追い出されたあの状況では、人々を傷つけてでも家族を守る必要があったのだ』


 状況はリョクと似たようなものである。
 それを先ほどの戦いで訊いたので、いろいろと芝居を打ってもらったのだ。
 そして現在、代表である闇泥狼王を蘇生させたというわけだな。


「話が通じる狼で助かったよ。しかし、お前は王の子供だったのだろう? どうしてわざわざ外に出て狩りをしようとしてたんだ?」

『役割なりの責任というものだ。今まで良い身分を使っていたのだ、私が家族のために率先して動かなければ駄目であろう』

「そうか。――それで、この後のお前たちの立ち回りについての相談なんだが……」


 まあ、細かい話はカットにするが――第一世界に湿地帯が造られ、そこに狼が生息したとかしないとか。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 それから、俺の忙しい日々が始まった……てことは無いんだが、たまにクラーレに呼ばれたり、世界開発へ向かったりしている。

 同時にさまざまなことをやっているとだんだん疲労感を感じそうなものだけれど……<物質再成>で肉体的な疲労は回復しているし、魔法で精神疲労を癒すこともできる。
 ──うん、魔法最高!


「……擬似的な召喚魔法は可能だが、結局俺の(召喚の○○)スキルは還ってきていない。アレが無いと、<召喚魔法>を手に入れるには難しいんだけどな」


 そう言ってスタータスを確認しても、職業欄には何も記されていない。

 今でも俺は無職なため、職業系の能力や補正にはあやかれていない。
 神器『再現の指輪』で職業固有の動きは再現できても、座標指定を行う必要の有ったいくつかのスキルは未だに使用不可能なのだ。

 昔手に入れた【ダンジョンマスター】の職業結晶から解析をして、俺でも職業の力を使えるように頑張ってくれてはいるが……残念ながら、それはまだ終わっていない。


「召喚だけなら可能なんだけどな~」


 スキルの再現はできなくても、頭で座標を指定して何かを取り出すことはできる。
 なので、いちおう召喚自体は可能のだ。
 できないのは、それを職業スキルや神代魔法として認定させること。
 すでにスキルとして存在しているので、(未知適応)も(アレンジ)も発動しない。
 ハァ……、チートでも思い通りにいかないこともあるんだな。


 さて、どうして俺がそこまで<召喚魔法>に拘っているのか……まあ、別にそこまでって程でもないけど。
 ――それは、<召喚魔法>に二段階目が存在するからだ。

 前に一度言った気もするけどな?
 [神代魔法]には、<召喚魔法:異界>というものが存在するという。
 別世界のものに干渉し、そこからそれ、またはそれの複製を自分のいる世界へと召喚する魔法。
 ――召喚したい、小説の続きを!

 シャインにでもその小説を読ませれば、いちおうは解決するんだが……いや、自分で読むわ。

 <召喚魔法>を覚醒させることで<召喚魔法:異界>へと進化するのだが、使える魔法の一つに異界召喚が可能となる魔法があるのだ。
 <次元魔法>で一々地球の座標を探すよりも見つけやすく、<干渉魔法>で他の奴の記憶から本を創り上げるよりも簡単だろ?

 ま、そんな理由から、その元となる<召喚魔法:異界>を探しているわけだ。
 空から流星の雨を降らせれば、一発で習得できる気もするんだけどな。


「──あ、また呼ばれた。今度は何をするんだろうな」


 足元に召喚陣が光り、クラーレの元へと俺は転送される。
【固有】持ち……他にも会えるだろうか?



「AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く